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ナルバ山の遺跡編
episode65
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「気絶させてどうするんじゃ」
「コイツが勝手に気絶しただけだ、俺のせいじゃない」
玉座から溜め息混じりに文句を言われ、ベルトルドは拗ねたように皇王を振り向く。
「まあ、国政を担っている者だからこその発言だったのう」
「そうだな、世界征服などという恥ずかしい夢を語る愚か者には、毎日あの山積みの書類を決裁させればいいんだ。そうすれば、いち部署の主任にすら、なりたがらないだろう。俺が保証する」
ベルトルドが大量の仕事を毎日こなしているか、皇王もよく知っている。ミスもなく、しかも早い。アレよコレよと仕事を押し付けてきたが、まったく根をあげないのだ。それで調子に乗って仕事を増やしてきたが、今回も新たに押し付けようと企んでいた。
「さて、お前にも本題じゃ」
「浮気の説教は聞かん!」
「……そうじゃないわい」
「ならいいが。それに俺は、もう宮中のメス豚どもを相手にする気はないからな」
「ほほう?」
「俺だけの、愛らしい花を見つけたんだ」
急にベルトルドの表情(かお)が優しく和み、皇王は目を丸くした。あんな表情など初めて見るからだ。
愛らしい花とやらを思い浮かべているのか、愛おしげに柔らかで、女が見たらうっとりと気を失いかねない、最高に優しい笑顔だった。もとより端整で美しい顔立ちなだけに、より一層輝く。
普段やんちゃなベルトルドに、あんな表情をさせる女性とは、どんな美女だろうと、皇王は興味を覚えた。
「脱線してしもうたわい。――おい、大至急ここにブルーベルを呼ぶのじゃ」
侍従に命じると、侍従は急いで謁見の間をあとにした。
20分後、謁見の間にブルーベル元将軍が到着した。
「至急にとのお召に、参上いたしました、陛下」
そう言って、ブルーベル元将軍は大きな体躯を優雅に折って跪いた。
「……おや」
気絶したまま転がっているキャラウェイ将軍に気づき、ブルーベル元将軍はつぶらな瞳を瞬かせた。
「それは暫く放置で構わん。実はの、そなたを不当な理由で罷免してしまったが、疑いを晴らし、再び将軍職に戻したいと思う。引き受けてくれるかな?」
ブルーベル将軍は、恭しく頭を下げた。
「ありがたき御言葉。このブルーベル、終生この国に仕え、陛下と民をお守り申し上げます」
「感謝するぞ」
「理由は聞かなくてもいいのか? ブルーベル将軍」
小さく首を傾げたベルトルドに、目を細めてブルーベル将軍は頷いた。
「大体は、このキャラウェイを見て察しがつきました。陛下が疑いを晴らしてくださるとのことなら、それ以上の理由は要りませぬ」
「なるほどな」
「お前の復職は、このベルトルドの手柄でもある。感謝はベルトルドにするがよい」
「左様でございますか。副宰相閣下にも、御礼申し上げます」
「俺は特に、何もしていないんだがな。まあ、ブルーベル将軍が戻ってありがたい」
「これで軍の綱紀も改まる。そこでベルトルドや、お前に最大級のご褒美をあげようと思うんじゃがの」
「ご褒美?」
何だか嫌な予感がして、ベルトルドは眉を寄せた。そしてその予感は、物の見事的中するのである。
「コイツが勝手に気絶しただけだ、俺のせいじゃない」
玉座から溜め息混じりに文句を言われ、ベルトルドは拗ねたように皇王を振り向く。
「まあ、国政を担っている者だからこその発言だったのう」
「そうだな、世界征服などという恥ずかしい夢を語る愚か者には、毎日あの山積みの書類を決裁させればいいんだ。そうすれば、いち部署の主任にすら、なりたがらないだろう。俺が保証する」
ベルトルドが大量の仕事を毎日こなしているか、皇王もよく知っている。ミスもなく、しかも早い。アレよコレよと仕事を押し付けてきたが、まったく根をあげないのだ。それで調子に乗って仕事を増やしてきたが、今回も新たに押し付けようと企んでいた。
「さて、お前にも本題じゃ」
「浮気の説教は聞かん!」
「……そうじゃないわい」
「ならいいが。それに俺は、もう宮中のメス豚どもを相手にする気はないからな」
「ほほう?」
「俺だけの、愛らしい花を見つけたんだ」
急にベルトルドの表情(かお)が優しく和み、皇王は目を丸くした。あんな表情など初めて見るからだ。
愛らしい花とやらを思い浮かべているのか、愛おしげに柔らかで、女が見たらうっとりと気を失いかねない、最高に優しい笑顔だった。もとより端整で美しい顔立ちなだけに、より一層輝く。
普段やんちゃなベルトルドに、あんな表情をさせる女性とは、どんな美女だろうと、皇王は興味を覚えた。
「脱線してしもうたわい。――おい、大至急ここにブルーベルを呼ぶのじゃ」
侍従に命じると、侍従は急いで謁見の間をあとにした。
20分後、謁見の間にブルーベル元将軍が到着した。
「至急にとのお召に、参上いたしました、陛下」
そう言って、ブルーベル元将軍は大きな体躯を優雅に折って跪いた。
「……おや」
気絶したまま転がっているキャラウェイ将軍に気づき、ブルーベル元将軍はつぶらな瞳を瞬かせた。
「それは暫く放置で構わん。実はの、そなたを不当な理由で罷免してしまったが、疑いを晴らし、再び将軍職に戻したいと思う。引き受けてくれるかな?」
ブルーベル将軍は、恭しく頭を下げた。
「ありがたき御言葉。このブルーベル、終生この国に仕え、陛下と民をお守り申し上げます」
「感謝するぞ」
「理由は聞かなくてもいいのか? ブルーベル将軍」
小さく首を傾げたベルトルドに、目を細めてブルーベル将軍は頷いた。
「大体は、このキャラウェイを見て察しがつきました。陛下が疑いを晴らしてくださるとのことなら、それ以上の理由は要りませぬ」
「なるほどな」
「お前の復職は、このベルトルドの手柄でもある。感謝はベルトルドにするがよい」
「左様でございますか。副宰相閣下にも、御礼申し上げます」
「俺は特に、何もしていないんだがな。まあ、ブルーベル将軍が戻ってありがたい」
「これで軍の綱紀も改まる。そこでベルトルドや、お前に最大級のご褒美をあげようと思うんじゃがの」
「ご褒美?」
何だか嫌な予感がして、ベルトルドは眉を寄せた。そしてその予感は、物の見事的中するのである。
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