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記憶の残滓編
episode237
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「アタシ、本当に色んなことが知りたいの。難しい字も読めるようになりたいし、本も沢山読んでみたい。知らないこといっぱい知りたい」
キュッリッキは目をキラキラさせた。
「お願いしますグンヒルド先生、アタシに勉強を教えてください」
ハッとグンヒルドは目を見開いた。無垢なまでの目が、期待を込めて自分を見ている。こんな風に、自分に向かって教えを願う生徒がいただろうか。教師冥利につきる、と思った。心の中に、喜びがスーッと広がる。
グンヒルドは頭を下げ、ゆっくりと頷いた。
「こちらこそ、わたくしを家庭教師として雇ってくださいませ」
これまで教えてきた、貴族の甘ったれた令嬢たちとは違う。自分の持てる知識をしっかり伝えたいと、そう思わせる子だ。
弟のカッレからこの話をされて、教える子が傭兵だと聞いて、少し躊躇いがあった。貴族や上流階級の令嬢専門の家庭教師だからだ。いくら副宰相と魔法長官の身内だからといっても、という気持ちがあったのだ。
傭兵と聞くと、ガサツで粗野なイメージしかない。そんな子に、どう教えればいいのか迷い、面談を急いだ。しかしこうして話をしてみれば、どこか幼子のような、純粋な少女である。
きっと、楽しく授業が出来るだろう。そして自分がキュッリッキの、学の師になりたいと、心から思えた。
「ありがとう! 先生」
花開いたような明るい笑みに、グンヒルドも自然と笑みがこぼれた。
キュッリッキは左手を伸ばして、天蓋に括りつけてあった紐を引っ張った。そして少しすると、メイドのアリサが顔を出した。
「どうなさいましたか?」
「あのね、ルーさん呼んできて欲しいの」
「ルーファス様ですか? 判りました」
アリサは一旦ドアを閉めて、そして1分経たずにルーファスとともに戻ってきた。
「どったの? キューリちゃん」
ルーファスがベッドの傍らまで来ると、今にも飛び起きそうなテンションのキュッリッキが、ルーファスの上着の裾を掴んだ。
「あのね、ベルトルドさん呼んで欲しいの!」
「え? 今すぐ?」
「うん!」
ルーファスは目を丸くしたあと、グンヒルドを見る。すると、グンヒルドにも笑顔を向けられ、ルーファスはポリポリと頬を掻いた。
左右に書類の山を8個も作り、左手でペンを走らせ、右手でハンコを押しているベルトルドは、突然ルーファスから念話を受けて、特大の不機嫌さを顔に広げた。
(今は書類と格闘中だ。後にしろ後に!)
(スンマセーン。でも、キューリちゃんに「ベルトルドさん呼んで欲しいの」ってお願いされちゃったもんだから)
「それを先に言わんか馬鹿もん!!」
思わず声に出して怒鳴ると、ベルトルドの決済をもらうために並んでいた事務官たちが、ビクッと慄いた。
「どうしたの? ベル」
自分のデスクでペンを走らせていたリュリュが、怪訝そうに顔を上げる。
「い、いや、何でもない」
ベルトルドは口をへの字に曲げて、首を横に振った。
キュッリッキは目をキラキラさせた。
「お願いしますグンヒルド先生、アタシに勉強を教えてください」
ハッとグンヒルドは目を見開いた。無垢なまでの目が、期待を込めて自分を見ている。こんな風に、自分に向かって教えを願う生徒がいただろうか。教師冥利につきる、と思った。心の中に、喜びがスーッと広がる。
グンヒルドは頭を下げ、ゆっくりと頷いた。
「こちらこそ、わたくしを家庭教師として雇ってくださいませ」
これまで教えてきた、貴族の甘ったれた令嬢たちとは違う。自分の持てる知識をしっかり伝えたいと、そう思わせる子だ。
弟のカッレからこの話をされて、教える子が傭兵だと聞いて、少し躊躇いがあった。貴族や上流階級の令嬢専門の家庭教師だからだ。いくら副宰相と魔法長官の身内だからといっても、という気持ちがあったのだ。
傭兵と聞くと、ガサツで粗野なイメージしかない。そんな子に、どう教えればいいのか迷い、面談を急いだ。しかしこうして話をしてみれば、どこか幼子のような、純粋な少女である。
きっと、楽しく授業が出来るだろう。そして自分がキュッリッキの、学の師になりたいと、心から思えた。
「ありがとう! 先生」
花開いたような明るい笑みに、グンヒルドも自然と笑みがこぼれた。
キュッリッキは左手を伸ばして、天蓋に括りつけてあった紐を引っ張った。そして少しすると、メイドのアリサが顔を出した。
「どうなさいましたか?」
「あのね、ルーさん呼んできて欲しいの」
「ルーファス様ですか? 判りました」
アリサは一旦ドアを閉めて、そして1分経たずにルーファスとともに戻ってきた。
「どったの? キューリちゃん」
ルーファスがベッドの傍らまで来ると、今にも飛び起きそうなテンションのキュッリッキが、ルーファスの上着の裾を掴んだ。
「あのね、ベルトルドさん呼んで欲しいの!」
「え? 今すぐ?」
「うん!」
ルーファスは目を丸くしたあと、グンヒルドを見る。すると、グンヒルドにも笑顔を向けられ、ルーファスはポリポリと頬を掻いた。
左右に書類の山を8個も作り、左手でペンを走らせ、右手でハンコを押しているベルトルドは、突然ルーファスから念話を受けて、特大の不機嫌さを顔に広げた。
(今は書類と格闘中だ。後にしろ後に!)
(スンマセーン。でも、キューリちゃんに「ベルトルドさん呼んで欲しいの」ってお願いされちゃったもんだから)
「それを先に言わんか馬鹿もん!!」
思わず声に出して怒鳴ると、ベルトルドの決済をもらうために並んでいた事務官たちが、ビクッと慄いた。
「どうしたの? ベル」
自分のデスクでペンを走らせていたリュリュが、怪訝そうに顔を上げる。
「い、いや、何でもない」
ベルトルドは口をへの字に曲げて、首を横に振った。
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