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記憶の残滓編
episode238
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真顔になったベルトルドは作業の手を休め、意識を凝らした。
(リッキー、どうしたのかな?)
自分の屋敷にいるキュッリッキに念話を飛ばす。
(あ、ベルトルドさん! お仕事で忙しいのにごめんねっ)
ちゃんと気遣いながらも、待ちきれない様子の弾んだ声が、頭の中に軽やかに滑り込んでくる。その愛らしい様子に、自然と笑みが目元を覆う。
(リッキーのためなら構わないぞ。御用は何かな?)
(あのね、あのね、グンヒルド先生が、アタシの家庭教師をしてくれるって言ってくれたの)
(おお、それは良かった。とても良い先生のようだし、後で詳細を決めて、いつから来てもらうか話をしないとだ)
キュッリッキが貴族の子女ではないと知って、多少難色を示したところがあったので、断ってくるかと思っていた。しかしそれは杞憂だったようだ。
(うん。それはベルトルドさんが決めてくれるの?)
(いや、アルカネットのやつに任せよう。そのことは、俺の方から先生にお伝えする)
(はーい)
(面談が終わったのなら、もう休みなさい。あまり眠れていなかったようだし)
(うん、そうするの)
(仕事を早めに片付けて帰るから、また後でな)
(ありがとう、ベルトルドさん)
(ご褒美に、帰ったらほっぺにチューしてくれる?)
(いいよ~)
オシャッ! とベルトルドは握り拳をグッと握った。自分からキスすることはあっても、キュッリッキからしてくることはない。何気なく言ってみただけだったが、あっさりOKが返ってきて、ベルトルドの心の暴れん棒にエンジンがかかった。が、
「小娘との念話は終わったようね?」
ひっそりと横に立つリュリュが、無表情に見おろしてくる。ベルトルドはギクッと身体を強ばらせた。
「鼻の下なんか伸ばして…。そんなにお仕置きして欲しいのン?」
舌を舐めずる音がして鳥肌が立ち、素早く股間を両手で庇うと、チェアーごとリュリュから離れる。
「嫌だ! 俺は清らかな身体で帰宅せねばならん!」
「まあ、今はこの長蛇の列を処理しないことには、だけど。お仕事終わったら、ね~っとりしゃぶり尽くしてあげるから、楽しみにしてらっしゃい」
「仕事終わったら真っ直ぐおうちにかえる!!」
心の暴れん棒はエンストを起こし、急速に萎え、ベルトルドは泣き叫ぶように怒鳴った。
「えへへ、ベルトルドさんも良かったって言ってくれたの」
ベルトルドがリュリュのお仕置き宣言に怯えているなど知らないキュッリッキは、嬉しさに無邪気な笑みをこぼしていた。
「よかったね、キューリちゃん」
「うんっ! ルーさんも連絡ありがとう」
「どういたしまして」
「それでは、わたくしお暇させていただきますね」
グンヒルドは立ち上がると、キュッリッキとルーファスに、そつのない会釈をした。
「授業が開始できるのを、楽しみにお待ちしておりますわね。その間に、カリキュラムを組んでおきます」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「じゃあオレ、グンヒルドさんを見送ってくるよ」
「ありがとうございます」
部屋を出て行く2人の後ろ姿を見送り、キュッリッキはホッとしたように息をついた。
元気になったら、あの優しい人から色んなことを教わることができる。それはとてもとても楽しみで、嬉しさに胸をふくらませ、ゆっくりと目を閉じた。
(リッキー、どうしたのかな?)
自分の屋敷にいるキュッリッキに念話を飛ばす。
(あ、ベルトルドさん! お仕事で忙しいのにごめんねっ)
ちゃんと気遣いながらも、待ちきれない様子の弾んだ声が、頭の中に軽やかに滑り込んでくる。その愛らしい様子に、自然と笑みが目元を覆う。
(リッキーのためなら構わないぞ。御用は何かな?)
(あのね、あのね、グンヒルド先生が、アタシの家庭教師をしてくれるって言ってくれたの)
(おお、それは良かった。とても良い先生のようだし、後で詳細を決めて、いつから来てもらうか話をしないとだ)
キュッリッキが貴族の子女ではないと知って、多少難色を示したところがあったので、断ってくるかと思っていた。しかしそれは杞憂だったようだ。
(うん。それはベルトルドさんが決めてくれるの?)
(いや、アルカネットのやつに任せよう。そのことは、俺の方から先生にお伝えする)
(はーい)
(面談が終わったのなら、もう休みなさい。あまり眠れていなかったようだし)
(うん、そうするの)
(仕事を早めに片付けて帰るから、また後でな)
(ありがとう、ベルトルドさん)
(ご褒美に、帰ったらほっぺにチューしてくれる?)
(いいよ~)
オシャッ! とベルトルドは握り拳をグッと握った。自分からキスすることはあっても、キュッリッキからしてくることはない。何気なく言ってみただけだったが、あっさりOKが返ってきて、ベルトルドの心の暴れん棒にエンジンがかかった。が、
「小娘との念話は終わったようね?」
ひっそりと横に立つリュリュが、無表情に見おろしてくる。ベルトルドはギクッと身体を強ばらせた。
「鼻の下なんか伸ばして…。そんなにお仕置きして欲しいのン?」
舌を舐めずる音がして鳥肌が立ち、素早く股間を両手で庇うと、チェアーごとリュリュから離れる。
「嫌だ! 俺は清らかな身体で帰宅せねばならん!」
「まあ、今はこの長蛇の列を処理しないことには、だけど。お仕事終わったら、ね~っとりしゃぶり尽くしてあげるから、楽しみにしてらっしゃい」
「仕事終わったら真っ直ぐおうちにかえる!!」
心の暴れん棒はエンストを起こし、急速に萎え、ベルトルドは泣き叫ぶように怒鳴った。
「えへへ、ベルトルドさんも良かったって言ってくれたの」
ベルトルドがリュリュのお仕置き宣言に怯えているなど知らないキュッリッキは、嬉しさに無邪気な笑みをこぼしていた。
「よかったね、キューリちゃん」
「うんっ! ルーさんも連絡ありがとう」
「どういたしまして」
「それでは、わたくしお暇させていただきますね」
グンヒルドは立ち上がると、キュッリッキとルーファスに、そつのない会釈をした。
「授業が開始できるのを、楽しみにお待ちしておりますわね。その間に、カリキュラムを組んでおきます」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「じゃあオレ、グンヒルドさんを見送ってくるよ」
「ありがとうございます」
部屋を出て行く2人の後ろ姿を見送り、キュッリッキはホッとしたように息をついた。
元気になったら、あの優しい人から色んなことを教わることができる。それはとてもとても楽しみで、嬉しさに胸をふくらませ、ゆっくりと目を閉じた。
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