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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode371
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「………」
特別室の中では、なんとも言い難い沈黙が漂っていた。
「こんなところで大技(とっておき)を出すとは……」
「久しぶりに拝みましたね、サンダースパーク……」
「オレあんな技、大規模で発動できねえよ……」
三者三様ゲッソリとしたため息が、深々と吐き出された。
魔力によってあらゆる元素の力を作り出せる魔法使いと違い、サイ《超能力》使いの能力では元素の力を生み出すことはできない。しかし、自然界に漂っている力を収束して、形状を変化させて扱うことはできる。
微量単位の電気を集めて、そのエネルギー体を武器として使いこなす。それを瞬時に行える能力者は限られ、大規模に扱うことが出来るのはベルトルド級くらいなものだ。
ベルトルドは目を開き、フンッと鼻息を吹き出した。
「あれじゃ物足りん!!」
「お疲れ様です。いいじゃないですか、大人げない大技を繰り出したんですから」
「お前が言うなお前が! イラアルータ・トニトルスで派手に街をぶっ壊しておきながら」
「効率のいい魔法を選んで使っただけですよ」
アルカネットはしれっと言ってそっぽを向く。
「じゃあ俺だって効率化をはかったまでだ!」
忌々しげにアルカネットを睨みながら、ベルトルドは不機嫌そうに頬をひきつらせた。
「うん……」
そこへキュッリッキが小さく声を上げて目を覚ました。
メルヴィンの膝に頭を預けたままのキュッリッキの目に、アルカネット、ルーファス、ベルトルドが心配そうにこちらを見ている姿が入ってきた。
そこにメルヴィンがいないことに気づいて、そして自分が誰かの膝枕で寝ていることにも気づく。
(…えと、それってもしかして…)
途端にキュッリッキは全身を硬直させて、瞬時に顔を真っ赤にした。
(もしかしてもしかしてもしかしてっ!)
キュッリッキは跳ね起きるようにして膝から離れると、座席の上に四つん這いになって顔を上げた。
「大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込むメルヴィンと目が合い、キュッリッキはさらに顔を真っ赤にさせて全身に大汗をかいた。
キュッリッキの頭の中では、高速で記憶が巻き返されている。
アルカネットの腕から逃れたあと、メルヴィンに助け起こされて、そのあと自分がとった行動は――!
メルヴィンの胸に飛び込んで、大泣きした。
頬や手にはっきりと残るメルヴィンの逞しい胸の感触、優しく頭を撫でられた大きな手の感触。それらを思い起こして、頭の中が真っ白になって失神寸前になる。
嬉しいはずなのに、それを上回るほどの恥ずかしさ。
「本当に大丈夫ですか? 顔が真っ赤だけど、熱でもあるのかなあ」
硬直したまま動こうともしないキュッリッキを怪訝そうに見ながら、メルヴィンはキュッリッキの額に掌をあてる。
「うーん…熱いけど、病気の熱とは違うのかな? オレ医者じゃないから判らないですが」
2人の様子を遠巻きに見つめながら、アルカネット、ルーファス、ベルトルドは、
(いい加減気づけ……)
と、酷く疲れたように内心でツッコミまくっていた。
メルヴィンの恋愛方面の鈍さは前々から知っていたが、ここまで鈍いとどうしようもない。というか、キュッリッキが憐れでならないルーファスだった。
可哀想なキュッリッキに助け舟を出したいと思っていても、このタイミングでどう出せばいいのかきっかけを掴めず、ヤキモキしていたベルトルドとアルカネットは、フェルト到着を知らせる車内アナウンスに、どこかホッとしたように肩の力を抜いた。
特別室の中では、なんとも言い難い沈黙が漂っていた。
「こんなところで大技(とっておき)を出すとは……」
「久しぶりに拝みましたね、サンダースパーク……」
「オレあんな技、大規模で発動できねえよ……」
三者三様ゲッソリとしたため息が、深々と吐き出された。
魔力によってあらゆる元素の力を作り出せる魔法使いと違い、サイ《超能力》使いの能力では元素の力を生み出すことはできない。しかし、自然界に漂っている力を収束して、形状を変化させて扱うことはできる。
微量単位の電気を集めて、そのエネルギー体を武器として使いこなす。それを瞬時に行える能力者は限られ、大規模に扱うことが出来るのはベルトルド級くらいなものだ。
ベルトルドは目を開き、フンッと鼻息を吹き出した。
「あれじゃ物足りん!!」
「お疲れ様です。いいじゃないですか、大人げない大技を繰り出したんですから」
「お前が言うなお前が! イラアルータ・トニトルスで派手に街をぶっ壊しておきながら」
「効率のいい魔法を選んで使っただけですよ」
アルカネットはしれっと言ってそっぽを向く。
「じゃあ俺だって効率化をはかったまでだ!」
忌々しげにアルカネットを睨みながら、ベルトルドは不機嫌そうに頬をひきつらせた。
「うん……」
そこへキュッリッキが小さく声を上げて目を覚ました。
メルヴィンの膝に頭を預けたままのキュッリッキの目に、アルカネット、ルーファス、ベルトルドが心配そうにこちらを見ている姿が入ってきた。
そこにメルヴィンがいないことに気づいて、そして自分が誰かの膝枕で寝ていることにも気づく。
(…えと、それってもしかして…)
途端にキュッリッキは全身を硬直させて、瞬時に顔を真っ赤にした。
(もしかしてもしかしてもしかしてっ!)
キュッリッキは跳ね起きるようにして膝から離れると、座席の上に四つん這いになって顔を上げた。
「大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込むメルヴィンと目が合い、キュッリッキはさらに顔を真っ赤にさせて全身に大汗をかいた。
キュッリッキの頭の中では、高速で記憶が巻き返されている。
アルカネットの腕から逃れたあと、メルヴィンに助け起こされて、そのあと自分がとった行動は――!
メルヴィンの胸に飛び込んで、大泣きした。
頬や手にはっきりと残るメルヴィンの逞しい胸の感触、優しく頭を撫でられた大きな手の感触。それらを思い起こして、頭の中が真っ白になって失神寸前になる。
嬉しいはずなのに、それを上回るほどの恥ずかしさ。
「本当に大丈夫ですか? 顔が真っ赤だけど、熱でもあるのかなあ」
硬直したまま動こうともしないキュッリッキを怪訝そうに見ながら、メルヴィンはキュッリッキの額に掌をあてる。
「うーん…熱いけど、病気の熱とは違うのかな? オレ医者じゃないから判らないですが」
2人の様子を遠巻きに見つめながら、アルカネット、ルーファス、ベルトルドは、
(いい加減気づけ……)
と、酷く疲れたように内心でツッコミまくっていた。
メルヴィンの恋愛方面の鈍さは前々から知っていたが、ここまで鈍いとどうしようもない。というか、キュッリッキが憐れでならないルーファスだった。
可哀想なキュッリッキに助け舟を出したいと思っていても、このタイミングでどう出せばいいのかきっかけを掴めず、ヤキモキしていたベルトルドとアルカネットは、フェルト到着を知らせる車内アナウンスに、どこかホッとしたように肩の力を抜いた。
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