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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode373
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玄関ホールの一角に設えられたソファから、2人の人物が立ち上がって一行を出迎えた。
「皆さんご無事でしたか」
簾のような長めの前髪を鬱陶しそうに手で払いながら、カーティスが安堵した表情を浮かべて歩いてきた。
「カーティス、シビル」
ルーファスが嬉しそうに足早に近寄って、カーティスと握手した。シビルには片方の手を上げて挨拶する。
「ダエヴァの皆さまから、ベルトルド卿とアルカネットさんが、あなた方と一緒だと聞いていたので、それはもう心配していました」
「コラ、なんで俺と一緒で心配するんだ」
すがさずムスッとした表情で、ベルトルドが反応する。
「いえ、派手に街を破壊したり汽車で大暴れしているんじゃないか、と想像していたもので」
笑顔をひきつらせながらカーティスが言うと、ベルトルドは僅かに眉をヒクつかせて黙り込んだ。
「図星ですか……」
シビルが呆れたように小さな声でツッコむ。
「メルヴィンも大変でしたね。アサシンが相当送り込まれていたそうですから」
「そうでもないですよ」
差し出されたカーティスの手を笑顔で握り返す。もう片方の手は、まだキュッリッキの手をしっかりと握り締めていた。
「キューリさんも色々大変でしたね。式典の見世物になったり、攫われる危険に見舞われたり」
メルヴィンの横に立って、無言で俯いたままのキュッリッキに笑いかける。顔を真っ赤にして小さく頷くだけの反応が返されて、カーティスは不思議そうに首をかしげた。
メルヴィンに手を握られただけで、こんな状態になるなど知らないカーティスとシビルは、念話でルーファスから簡単に説明されて、笑いをこらえて納得した。
「俺は腹が減った!!」
部下たちの再会劇を眺めつつ、両手を腰にあてたベルトルドが子供のように喚いた。
「厨房担当者はどうなっているのですか?」
アルカネットがアルヴァー大佐に問うと、
「それが……申し訳ございません、調理担当者をこちらに派遣するのを忘れておりまして……」
「おやおや…」
やや拍子抜けしたように、アルカネットは目を瞬かせる。
ダエヴァには腕のいい料理スキル〈才能〉を持つ者が幾人もいるのだが、こちらに回されていないのは残念だった。
ベルトルドとキュッリッキに出す食事を、素性の知れない町民に調理をさせるのは問題である。何よりも2人の安全が、最優先されるからだ。
「ベルトルド様とリッキーさんに、適当な食事をさせるわけにはいきません。私が何か作りましょう。皆さんは食堂で待っていてください」
「おう、早めに頼む」
「アルカネットさんって料理も出来るのか、凄いなあ」
ルーファスが感心したように言うと、ベルトルドが妙に得意げに笑みを浮かべた。
「料理スキル〈才能〉持ちには劣るが、家庭料理は得意だぞ、あいつ」
アルヴァー大佐に案内されて、厨房のほうへ歩いていくアルカネットの後ろ姿を見送りながら、ルーファスたちは思わず尊敬の眼差しをその背に投げかけていた。
「皆さんご無事でしたか」
簾のような長めの前髪を鬱陶しそうに手で払いながら、カーティスが安堵した表情を浮かべて歩いてきた。
「カーティス、シビル」
ルーファスが嬉しそうに足早に近寄って、カーティスと握手した。シビルには片方の手を上げて挨拶する。
「ダエヴァの皆さまから、ベルトルド卿とアルカネットさんが、あなた方と一緒だと聞いていたので、それはもう心配していました」
「コラ、なんで俺と一緒で心配するんだ」
すがさずムスッとした表情で、ベルトルドが反応する。
「いえ、派手に街を破壊したり汽車で大暴れしているんじゃないか、と想像していたもので」
笑顔をひきつらせながらカーティスが言うと、ベルトルドは僅かに眉をヒクつかせて黙り込んだ。
「図星ですか……」
シビルが呆れたように小さな声でツッコむ。
「メルヴィンも大変でしたね。アサシンが相当送り込まれていたそうですから」
「そうでもないですよ」
差し出されたカーティスの手を笑顔で握り返す。もう片方の手は、まだキュッリッキの手をしっかりと握り締めていた。
「キューリさんも色々大変でしたね。式典の見世物になったり、攫われる危険に見舞われたり」
メルヴィンの横に立って、無言で俯いたままのキュッリッキに笑いかける。顔を真っ赤にして小さく頷くだけの反応が返されて、カーティスは不思議そうに首をかしげた。
メルヴィンに手を握られただけで、こんな状態になるなど知らないカーティスとシビルは、念話でルーファスから簡単に説明されて、笑いをこらえて納得した。
「俺は腹が減った!!」
部下たちの再会劇を眺めつつ、両手を腰にあてたベルトルドが子供のように喚いた。
「厨房担当者はどうなっているのですか?」
アルカネットがアルヴァー大佐に問うと、
「それが……申し訳ございません、調理担当者をこちらに派遣するのを忘れておりまして……」
「おやおや…」
やや拍子抜けしたように、アルカネットは目を瞬かせる。
ダエヴァには腕のいい料理スキル〈才能〉を持つ者が幾人もいるのだが、こちらに回されていないのは残念だった。
ベルトルドとキュッリッキに出す食事を、素性の知れない町民に調理をさせるのは問題である。何よりも2人の安全が、最優先されるからだ。
「ベルトルド様とリッキーさんに、適当な食事をさせるわけにはいきません。私が何か作りましょう。皆さんは食堂で待っていてください」
「おう、早めに頼む」
「アルカネットさんって料理も出来るのか、凄いなあ」
ルーファスが感心したように言うと、ベルトルドが妙に得意げに笑みを浮かべた。
「料理スキル〈才能〉持ちには劣るが、家庭料理は得意だぞ、あいつ」
アルヴァー大佐に案内されて、厨房のほうへ歩いていくアルカネットの後ろ姿を見送りながら、ルーファスたちは思わず尊敬の眼差しをその背に投げかけていた。
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