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Things you have to tell 翼のターン

閑話 スーパームーンから始まる 後編

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振り向くと太ももにナイフを刺して威圧を解いた副ボスが下卑た笑顔を浮かべていた。

これはヤバい、心臓撃ち抜かれた。死ぬか理性失って人を喰らう本物の魔獣へ堕ちるかの2択だ。
血が止まる気配が皆無だし、意識もだんだんと薄れていく、多分死ぬ方だな。琉惺を助けられたからここで死んでも本望だろう。

悔やまれるのは琉惺の笑顔見たかったな。これからも側に居たかったな。
そう思っていたら冷たくなってきた体に熱が駆け抜け赤い毛が月の様に黄金色に変わり体系が一回り小さく縮み細胞の1つ1つ復活していた。

「バ・・・バケモノ!!」

副ボスは混乱し横にいた組織の人間が持っていたマシンガンを俺に向けて打ったが俺の周りにはバリアが張りめぐられているので無傷だ。
俺は助走をつけて走ると副ボスに向けて飛びかかり押し倒すと電撃を体に何度も浴びせた。千円ガチャガチャで出るビリビリグッズレベルの電撃だから死ぬことはないだろう多分。
身体中の穴から色々な物を垂れ流し失禁と脱糞までなったのを確認すると闇夜に紛れてその場を立ち去った。
そこから100km先の湖の辺りで人間に戻れた。
「これこそ水も滴るいい男って奴よね」
誰も居ないのをいい事に少し恥ずかしいセリフを言っている自分がいた。
服は悠理がバンの横にリュックを用意してくれたのでそれを着替えてバスの始発を待ってその場で眠った。

その後、組織の残党と副ボスは逮捕され琉惺もメンバーもバンの中で悠理に自首して少年院送りになったと聞いた。

一応心臓撃ち抜かれたので病院に行って確認したら軽い肥満だと言われました。
天日鷲命に黄金色に変わった話をしたらニヤニヤとされながら

「愛の力って魔獣の進化を促進させるのねー」

数年後、琉惺の出所日を悠理から聞いて少年院の門の前に中腰で待っていると職員と琉惺の声が聞こえた。
あの時よりも少し大人びた声になったなと時が経た事をしみじみと感じる。
俺も専門学校卒業して店を持つために色々とやっているからな。ボクシングはアマチュアだけど何戦か試合してるし。
“ガチャ”と門を出ると同時に「よっ」と手を挙げて挨拶をする。
琉惺も俺の事を覚えていたらしく
「あの店の店員さんですよね・・・」
「被害にあった店員みんな軽傷だったから気に止む事ないよ。これからラーメン食べに行かないか?近所に美味しいラーメンやあるんだよ。勿論俺の奢りで」
心配させないように笑顔で誘うとラーメンに惹かれた琉惺は見たかった笑顔で頷いた。

思い出に耽っているとテーブルに置いたスマホがブルブルと震える。短いからメールだろう。
開くと天日鷲命からのメールだった。
『いけふくろうへ集合』御信託メールだ。
リュックの中にレザージャケットを入れて琉惺におはようメールを送ってから家を出る。
今日は何を破壊するのかなと少しのワクワクを楽しみながらペロペロキャンディを舐めながら待つゴスロリ幼女の所に足を運ぶのである。
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