私の嫁？はインキュバス

Umkehrtraum

知らないといけないコト 10/31 前編

いきなり翼ちゃんがうちに来た。
池袋のタワマンでオートロックのコンシェル付きの我が家に。
(ちなみに、高層階です)

「泊めて欲しい、家には帰りたく無い」と夢の様な台詞が彼女の口から出て祐香里君からもらったグラスを落としてしまった。

「えっ・・・帰りたく無いって・・・彼氏と喧嘩でも・・・蓮君だっけ？？」

「っ！！名前出さないで、入るよ！！」

唇を強く噛み泣くのを堪えている様な感じの翼ちゃんを中に入れてソファーに座ってもらい私、桐谷敦啓はオレンジジュースを冷蔵庫から取り出しグラスに入れた。

「喧嘩でもしたのかしら。翼ちゃんからしたら珍しいことよね、いつもこっちの気持ちを知らないからだけどめちゃくちゃ惚気まくってるからな。それよりも、今日満月だけどハロウィンで良かった。じゃなかったら翼食べちゃってたし」

普段は満月に近づくと遺伝子内の魔獣因子が活性化して・・・色々とあるんだよ。
しかし、今年はハロウィンの神聖な魔力で中和されて普段の自分で居られる。
いつもは天日鷲命の奴が指令入れるが何故か今日は無かったけど、何があるか分からないからバスローブ姿。
翼ちゃんもたまに悠理ちゃんと来た時にこの姿何回か見せてるから慣れてるのが良かった。

「はい、オレンジジュース大丈夫だよね。何があったかは今は話さなくてもいいからゆっくりしていって。泊まるならベッドは使っていいよ、私はソファーで眠るから。あと、パジャマなら前にパジャマパーティした時の残ってるからそれ着てね。夜ご飯は食べれる？消化のいいもの作る？」

「敦啓ちゃんありがとう、お腹空いてるから普通の食事で大丈夫だよ。ベッド借りるね」

翼ちゃんはジュースを一気飲みして、私の部屋に向かった。

「着替えるならパジャマはクローゼの中の棚の2段目の手前にあるから」

「わかったよー！！」

明るい声で返事するけど無理してる感が半端じゃ無い。飲ませてストレス発散させないと最悪翼ちゃん壊れちゃうわよ！
テーブルに置いたスマホを取り、急いで簡単で甘めのカクテルレシピを検索する前に、悠理ちゃんに翼ちゃんがうちに泊まる件をメールする。
事後報告だけど、やるとやらないとで悠理ちゃんの対応が変わっちゃうから。
メールを送って2分後悠理ちゃんから返信が来た。

彼氏と喧嘩別れしたらしく、昨日は悠理ちゃんの所に泊まったと。

『あのクソガキにはうちに連泊するって連絡入れとくわ。一応翼ちゃんの気配とか偽造しておくわね。後、翼をdisった夏水直生(なつみ すなお)にはそれなりの報いを受けてもらわないとねぇ。倍返しに3倍返し？そんな甘っちょろい報復するわけないじゃない。この私よ、真綿で首を絞める様にジワジワと祟ってやるわよ。さて、どれくらいまで精神持ち堪えるか楽しみね。オーッホホホホ！！！』

いつもの強火翼ちゃん担の返信が来たのでホッとして女性を堕とすカクテルのレシピを見ながら夜ご飯のしらすのペペロンチーノ風うどんを作り翼ちゃんを呼びに行くとベッドの上に大量の服と着替え中の翼ちゃんっっっっ！！

「「キャァァァァァァァッ！！！！」」

急いで部屋から出てドアを閉めた。
数分後、ドアをノックすると

「・・・着替えたから入ってきて大丈夫だよ」

恥ずかしそうな声が聞こえてきてキュンとしつつドアを開けるとベッドの上で恥ずかしそうにモジモジしながらも何故かアリスのコスプレをしている翼ちゃんの姿があったので、すぐさまスマホで連写しまくった。
(まあ、悠理ちゃんに送りましたよ)

「翼ちゃん？なんでコスプレしてるんですか？落ち込んでいるんですよね貴女？？」

「だって今日ハロウィンだし、敦啓ちゃんのクローゼット可愛い服結構あったから着てみたくなって」

これは叱れない。
確かにクローゼットの右半分は趣味で着る
デ◯ズ◯ー系やゴスロリブランドがアニメやゲーム等とコラボした奴とかがほとんどだから。
実は、前に別世界の翼ちゃんに間違えて渡してしまった琉惺秘蔵の写真集って、私のコスプレ写真集だったのよね。
(ちなみに、現在7冊作って明日8冊目の撮影予定です)

「ほらほら、ご飯だからパジャマに着替えなさい。服汚れたら大変だから」

ド◯キで買った奴だから少しは汚れても平気だけど、自我を保つのがキツいんだよね。

「むーっ！！汚さない自信あるからこのままでいたいの！」

ほっぺた膨らませてって・・・
何ですかこの娘！こう言う無意識なあざとさが出会った当初から可愛い過ぎるんだよ！
アリーナコンサートで後ろで騒がしい2人組がいて振り返ったら、さっきみたいな膨れっ面の顔から笑顔になった翼ちゃんに”キュン”って一目惚れしちゃったんだから。
(悠理ちゃんには初対面時にバレてましたよ)

「ふーん、このままだと『俺』が翼ちゃん食べちゃうゾ」

よく男性アイドルがファンサでやる『ガオー』のポーズをしてちょっと脅かしたら何故か翼ちゃんは秒で赤面して、ポーズをとって固まってる私を部屋から追い出した。

「すぐパジャマに着替えるから！！」

・・・ん？？まさか翼ちゃん意味分かってるのか？もしかして栄蓮から言われたことあるのか！？何かジェラシー感じるな。

10分後、卵のキャラクターのイラストが描かれたグレーのルームウェアに着替えた翼ちゃんがダイニングに来た。
まあ、これもこれで可愛いけどさっきのが強力だったからなんだかな・・・

テーブルには温め直した時に塩昆布をちょい足ししたシラスのペペロンチーノ風うどん2人分準備。カクテルには頼らずに聞こうと思い飲み物は麦茶。

「知り合いから沢山シラスもらったからお土産で持ってってね」

「うわっ！美味しそう！レシピ教えて！」

「ほらほら、いただきますしてから食べなさいね。はい、いただきます」

「はーい、いただきまーす」

ホント、子供の様にはしゃいでる姿が可愛い
・・・ん？母親目線？

「んまーいっ！塩昆布がいいのか？うどんも丁度良いもっちりで。これ、エイレン好きそうだよな・・・あっ・・・」

自分の無意識な発言に戸惑う翼ちゃん、聞くなら今だよね。
麦茶を一気飲みして、自分の気持ちを落ち着かせる。

「こっちが砂吐くくらいいつも惚気倒してるのになにがあったの？悠理ちゃんの所じゃなくてウチに来たんだから話したい事があるんじゃないの？まあ、私は翼ちゃんの愚痴係担当ですからね」

自然に翼ちゃんの横に座りテーブルに肘をつき顎に拳を乗せ、少々小首を傾げる。
我ながらあざとく見せてるかな？
たまに店で『酔っちゃった』的な風にしてるからまあまあ得意っちゃあ得意だし。

「ふーっ、流石敦啓ちゃんだね・・・
私、彼の事知ってると思ってたのにどんどん知らない事が出てきて。私は殆ど全部曝け出したのに何でっ、私は彼女だよねってグチャグチャになっちゃってさ・・・」

話しながら瞳を潤ませる翼ちゃん。
やばいな、思い切りギュッて抱きしめてそのまま口付けしなから押し倒したい衝動が胸の奥底からフツフツと湧いてきたけど、流石に理性が勝ったので一呼吸して翼の形をしたピアスをそっと触ってから翼ちゃんの目を見て話し始める。

「そっか、恋人同士なら全てお互い理解しあってが翼ちゃんの恋愛の理想だったのかな？でもさ、恋人同士でも夫婦でも秘密にしてることって少なからずあると思うわよ。例あげるけど、悠理ちゃんと祐香里君の夫婦とかうちの親とかね」

「いや、悠理ちゃんの所はないでしょ」

「前に言ってたわよ。祐香里君のバックパック時代で幾つか空白期間があって頑なに教えてくれないんだって。まあ、言えない様な事してたらしいからね。それを使ったお仕置きちょっと前に聞いたことあったわ」

祐香里君のアイドル時代の先輩を3時間お仕置きして大号泣させた話を思い出して少し遠い目をしてしまう。

「それにね、私だって親友の翼ちゃんに秘密にしている事沢山あるし、翼ちゃんも未だに私が高校生の時に誕生日プレゼントであげたシュタイフの縫いぐるみと一緒に寝ているの彼氏知らないでしょ？それに悩み事はいつも私に相談してるのも秘密でしょ。彼氏からしたら他の『男』に相談してるって知ったらすご～く嫉妬するだろうねぇ？」

「ぐっ・・・」

自分も秘密があることに気づいてぐうの音も出ない翼ちゃんが頭を抱える。

「まあ、ゆっくり寝て明日は朝食食べたら帰りなさい。私、明日は朝から所用で忙しいんだからね」

気持ちが落ち着いたのか満腹なのか少しウトウトし始めた翼ちゃんに声かけて寝室に連れて行ってベッドに寝かす。
かなり眠たかったのか数分したらスヤスヤと寝息立てながら安眠。頭を撫でてほっぺに軽くキス。なんだか気分は母親ですよ。

寝室を出て軽くて伸びをして、腕を回してからキッチンに行って冷やしたビールとビールジョッキを冷蔵庫から取り出す。
今日はソファーで眠るからソファーに横座りして足を伸ばす。
さっきの翼ちゃんのコスプレ写真見ながらチビチビビールを飲んでいたらスマホが鳴ったので悠理ちゃんかなと見たら『天日鷲命』の文字が。今日は休みのはずなんだけど
・・・