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魔法競技会 Ⅰ
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風呂場の騒動から数日経つが会長からの要求は何も無かった。
代わりと言っては可怪しいが陛下からの呼び出しが来たのである。
「母上参上いたしました」
「アート良く来たな、今日はそなたに褒美を授けようと思って呼んだのよ」
「褒美ですか?」
母上の話では俺の作ったシャワーの為の魔晶石が国民に大人気であり、普通の炊事などにも使われる様に成っていると言うではないか。
「更に他国への輸出も行う事と成った、サンプルを各国に送ったら是非にと言う国が多いぞ」
「それは何よりです」
「それでだ、これだけの功績を上げたのだから多少の我儘は聞くぞ?」
「それでは僭越ながらアカデミーに男湯を作って頂けますか?」
「そんなもの堂々と女湯に入れば良いでは無いのか?」
「・・・ご冗談を・・・」
「話は以上だ次の発明も期待してるからな」
「承知しました」
アートが謁見の間を出ると3人の母達が寄り合った。
「男湯が欲しいですか」
「殿下には余り恋愛に対して教えて来ませんでしたからね」
「ナタリア、ミーア今更言っても仕方が無いだろう、そろそろあれの候補地を決めとかねばな」
「はい」
「はい」
魔法競技会前夜アカデミーの寮では前夜祭が行われていた。
優勝候補は生徒会長だったのだが突然の辞退で副会長が有力候補と成っていた。
エマに関してはどこまで検討出来るかと言うレベルである。
「こんばんはアート」
「生徒会長?」
「少しよろしいかしら?」
5人の少女達が席を外すとヘレンはアートの向かいへ座った。
「話とは何ですか?」
「その前に貴方の友達優勝出来ると良いわね」
「そう言えば会長は優勝候補だったのですよね?」
「そい言われてたけど私は優勝なんて興味無いの、それよりもっと素敵な事がありますからね」
「?」
「明日の魔法競技会は私と貴賓席で同伴して頂きますわ」
「え?」
「貸しを帰して貰おうと思いましてね」
風呂場での借りか、もっと凄い事を要求されると思ったが1日試合を見るだけで良いなんてラッキーかもな。
競技会が終わり通常に戻ったら次のアイデアを出さなと行けないな。
この世界には冷蔵庫や冷蔵と言うシステムは有るが、ペンダントによると更に高位の冷凍と言う物が有るらしい。
それが作れれば食品の運送や貯蓄に貢献出来るはずである。
「何を考えてるのかしら?」
「・・・明日が楽しみだなってさ」
「本当にね・・・それじゃおやすみなさい」
翌朝俺が起きた時には既にエマがコロシアムへと出発した後だった。
万が一の危険を考えクリスが一緒に行った様である。
残りの3人はと言うと・・・
「生徒会長だからって横暴は許されませんわよ」
「あらティナさんは可怪しい事を言われますね」
「何が可怪しいのでしょうか?」
「みんなお早う」
「丁度良い所に来たわね、ティナさん直接本人に聞いて見たらどうですか?」
なんだ・・・何が起こってるんだ?
「今日の競技会、エマの応援は私達と一緒にするわよね?」
あああ・・・それか・・・・
ヘレン生徒会長は俺の方へ黙って片手を差し出した。
「伝えて無かったけど会長と貴賓席で見学する事に成っていたんだ」
「そういう事なのよ、分かって頂けましたか?」
「フン」
ティナ達は俺に怪訝な顔を見せると振り返る事無く食堂の外へと出て行った。
「これで邪魔者は居なくなりましたね」
「邪魔者って俺の友人達なんだけどな」
「殿下にはそうでしょうけど、大体の生徒達は皆がお互いをライバルとしても見てるのですよ」
そう言うものなのか面倒な地位だな・・・。
「ちなみに皆が殿下の地位に興味が有るからではありませんよ、中には殿下自身を気に入ってる者もいるので忘れないで下さいね」
「君は?」
「どちらでしょうね・・・そろそろ行きましょうか」
掴み所の無い人だな。
貴賓室への入り口で待つ事数十分陛下を乗せた馬車がやって来た。
静かに止まると扉が開き両団長に続いてセリア陛下が降りてくる。
皆が両側に列を作り入り口までの道が出来上がる。
セリアはアートを見つけると歩みを止めるのだった。
「アート出迎えご苦労さまです」
「勿体ないお言葉です」
「所で隣のお嬢さんが貴方のパートナーですか、とても綺麗な方ですね」
「お初にお目にかかります陛下、私はアカデミー生徒会長ヘレン・エリーナでございます」
「エリーナ家の者であったか、本当に姉にも劣らず美しいぞ」
「ありがとうございます」
「ではアートを宜しく頼むな」
陛下がコロシアムの中に消えるまで見送り、俺達も自分達の席へと向かったのだった。
ヘレンは平気で俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
俺が彼女を見つめると笑顔で答えた。
「今日は陛下公認だからね」
非常に機嫌が良さそうである。
席に着くと飲み物を頼み少し落ち着く事tとした。
「貴方のお友達勝ち進んでると良いわね?」
「?」
俺の意外な表情を見て何かを察した様だ。
「コロシアムで行われるのは本戦だけ、人数が多いから数カ所で予選が行われてるのよ」
失敗した・・・エマが勝ち残って来なければ有志を見る事が出来ないではないか。
「それよりセリア陛下ってとてもお綺麗よね」
褒められて舞い上がってるのか?
「初めて間近で拝見したけどオーラが違うわ」
「悪かったね遺伝を継いでなくてさ」
「そんな事無いわよ、私の中で貴方は満点だわ・・・まぁ他の男性を見た事が無いのだけどね」
そう言うと彼女は笑顔でウインクしながら舌を少しペロッと出したのだった。
2つ年が違うだけで女性はこんなにも変わるのか?
いやいやキャロルは18だったはず、それならば彼女の持つ天性の物なのだろう。
美人で頭脳明晰・貴族らしく振る舞え時には愛嬌も見せるとは素晴らしい人なんだな。
「忘れてた、少し席を外すね」
俺は立ち上がると貴賓席の4隅に魔晶石を1つずつ置いて戻った。
「あれは?」
「会長に頼まれてた物の試作品です」
「アートが作ったの?」
「理屈を覚えるのは大変だったけどね、国家機密だから詳しくは言えないけど俺でも魔晶石の加工は出来る様に成ったよ」
「凄いわね、あの湯が出る魔晶石にも驚いたわ」
「ふふん・・・あれの報奨で男湯を作って貰える様に成ったんだ」
「良かったわね、でも何人の娘が女湯と間違えるのかしらね」
「ええー」
本気で言ってるのか?
俺専用に成るはずなのにな気には留めておこう。
丁度話の途切れた所で観客達が総立ちで拍手を送った。
しかしそれは直ぐに戸惑いと変わったのである。
「何で魔法拘束の手枷を付けられてるんだ」
ザワメク城内、出場者達が中央の闘技台に上がるとエマが突然倒れたでは無いか。
「エマはどうしたんだ?」
よく観察すると背中に鮮血が流れ出している、刺されたのか卑劣な事をするもんだな。
「セリア陛下久しぶりですね」
「前回の処分が甘すぎたかの?」
かなり昔の様で俺には理解が出来ない、取り敢えず今はエマの救出が先だな。
「陛下には決断をして頂きたく思います、この生徒達かアート殿下の命をね
これは不味いな学生を見捨てれば民衆の気持ちは離れてく、俺を切り捨てれば母上の夢が頓挫する事に成る。
「私達に用が有るのはアート殿下1人です姿をお見せ願えますでしょうか?」
俺が立ち上がろうとすると心配そうな表情で腕の袖を引っ張るヘレン
「大丈夫だよ、ヘレンは試作品だけど守られてるこの部屋で待機をしててくれるかな?
「おおせのままに」
「さて行ってきますね」
そう言うとアートの姿が消え敵の大将の前に現れた。
「ホーリー・アップ」
アートは光魔法を纏った拳で敵将の腹部に強い一撃を入れて吹き飛ばす。
「次はだれだ、纏めてでも構わないぞ」
カッコよく決めたつもりだったのだが、ミーヤの暗殺術とティナの狙撃で勝負の大半は決定していた。
「リリスいるかな?」
「いますよ、エマの回復をしながら学生をシールドの中に保護してます」
姿の見えないリリスの言葉が聞こえて来る。
「力は尽くすけど危ないかも知れないわ」
リリスの言葉に俺は今まで感じた事の無い怒りが湧き上げてきたのだった。
代わりと言っては可怪しいが陛下からの呼び出しが来たのである。
「母上参上いたしました」
「アート良く来たな、今日はそなたに褒美を授けようと思って呼んだのよ」
「褒美ですか?」
母上の話では俺の作ったシャワーの為の魔晶石が国民に大人気であり、普通の炊事などにも使われる様に成っていると言うではないか。
「更に他国への輸出も行う事と成った、サンプルを各国に送ったら是非にと言う国が多いぞ」
「それは何よりです」
「それでだ、これだけの功績を上げたのだから多少の我儘は聞くぞ?」
「それでは僭越ながらアカデミーに男湯を作って頂けますか?」
「そんなもの堂々と女湯に入れば良いでは無いのか?」
「・・・ご冗談を・・・」
「話は以上だ次の発明も期待してるからな」
「承知しました」
アートが謁見の間を出ると3人の母達が寄り合った。
「男湯が欲しいですか」
「殿下には余り恋愛に対して教えて来ませんでしたからね」
「ナタリア、ミーア今更言っても仕方が無いだろう、そろそろあれの候補地を決めとかねばな」
「はい」
「はい」
魔法競技会前夜アカデミーの寮では前夜祭が行われていた。
優勝候補は生徒会長だったのだが突然の辞退で副会長が有力候補と成っていた。
エマに関してはどこまで検討出来るかと言うレベルである。
「こんばんはアート」
「生徒会長?」
「少しよろしいかしら?」
5人の少女達が席を外すとヘレンはアートの向かいへ座った。
「話とは何ですか?」
「その前に貴方の友達優勝出来ると良いわね」
「そう言えば会長は優勝候補だったのですよね?」
「そい言われてたけど私は優勝なんて興味無いの、それよりもっと素敵な事がありますからね」
「?」
「明日の魔法競技会は私と貴賓席で同伴して頂きますわ」
「え?」
「貸しを帰して貰おうと思いましてね」
風呂場での借りか、もっと凄い事を要求されると思ったが1日試合を見るだけで良いなんてラッキーかもな。
競技会が終わり通常に戻ったら次のアイデアを出さなと行けないな。
この世界には冷蔵庫や冷蔵と言うシステムは有るが、ペンダントによると更に高位の冷凍と言う物が有るらしい。
それが作れれば食品の運送や貯蓄に貢献出来るはずである。
「何を考えてるのかしら?」
「・・・明日が楽しみだなってさ」
「本当にね・・・それじゃおやすみなさい」
翌朝俺が起きた時には既にエマがコロシアムへと出発した後だった。
万が一の危険を考えクリスが一緒に行った様である。
残りの3人はと言うと・・・
「生徒会長だからって横暴は許されませんわよ」
「あらティナさんは可怪しい事を言われますね」
「何が可怪しいのでしょうか?」
「みんなお早う」
「丁度良い所に来たわね、ティナさん直接本人に聞いて見たらどうですか?」
なんだ・・・何が起こってるんだ?
「今日の競技会、エマの応援は私達と一緒にするわよね?」
あああ・・・それか・・・・
ヘレン生徒会長は俺の方へ黙って片手を差し出した。
「伝えて無かったけど会長と貴賓席で見学する事に成っていたんだ」
「そういう事なのよ、分かって頂けましたか?」
「フン」
ティナ達は俺に怪訝な顔を見せると振り返る事無く食堂の外へと出て行った。
「これで邪魔者は居なくなりましたね」
「邪魔者って俺の友人達なんだけどな」
「殿下にはそうでしょうけど、大体の生徒達は皆がお互いをライバルとしても見てるのですよ」
そう言うものなのか面倒な地位だな・・・。
「ちなみに皆が殿下の地位に興味が有るからではありませんよ、中には殿下自身を気に入ってる者もいるので忘れないで下さいね」
「君は?」
「どちらでしょうね・・・そろそろ行きましょうか」
掴み所の無い人だな。
貴賓室への入り口で待つ事数十分陛下を乗せた馬車がやって来た。
静かに止まると扉が開き両団長に続いてセリア陛下が降りてくる。
皆が両側に列を作り入り口までの道が出来上がる。
セリアはアートを見つけると歩みを止めるのだった。
「アート出迎えご苦労さまです」
「勿体ないお言葉です」
「所で隣のお嬢さんが貴方のパートナーですか、とても綺麗な方ですね」
「お初にお目にかかります陛下、私はアカデミー生徒会長ヘレン・エリーナでございます」
「エリーナ家の者であったか、本当に姉にも劣らず美しいぞ」
「ありがとうございます」
「ではアートを宜しく頼むな」
陛下がコロシアムの中に消えるまで見送り、俺達も自分達の席へと向かったのだった。
ヘレンは平気で俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。
俺が彼女を見つめると笑顔で答えた。
「今日は陛下公認だからね」
非常に機嫌が良さそうである。
席に着くと飲み物を頼み少し落ち着く事tとした。
「貴方のお友達勝ち進んでると良いわね?」
「?」
俺の意外な表情を見て何かを察した様だ。
「コロシアムで行われるのは本戦だけ、人数が多いから数カ所で予選が行われてるのよ」
失敗した・・・エマが勝ち残って来なければ有志を見る事が出来ないではないか。
「それよりセリア陛下ってとてもお綺麗よね」
褒められて舞い上がってるのか?
「初めて間近で拝見したけどオーラが違うわ」
「悪かったね遺伝を継いでなくてさ」
「そんな事無いわよ、私の中で貴方は満点だわ・・・まぁ他の男性を見た事が無いのだけどね」
そう言うと彼女は笑顔でウインクしながら舌を少しペロッと出したのだった。
2つ年が違うだけで女性はこんなにも変わるのか?
いやいやキャロルは18だったはず、それならば彼女の持つ天性の物なのだろう。
美人で頭脳明晰・貴族らしく振る舞え時には愛嬌も見せるとは素晴らしい人なんだな。
「忘れてた、少し席を外すね」
俺は立ち上がると貴賓席の4隅に魔晶石を1つずつ置いて戻った。
「あれは?」
「会長に頼まれてた物の試作品です」
「アートが作ったの?」
「理屈を覚えるのは大変だったけどね、国家機密だから詳しくは言えないけど俺でも魔晶石の加工は出来る様に成ったよ」
「凄いわね、あの湯が出る魔晶石にも驚いたわ」
「ふふん・・・あれの報奨で男湯を作って貰える様に成ったんだ」
「良かったわね、でも何人の娘が女湯と間違えるのかしらね」
「ええー」
本気で言ってるのか?
俺専用に成るはずなのにな気には留めておこう。
丁度話の途切れた所で観客達が総立ちで拍手を送った。
しかしそれは直ぐに戸惑いと変わったのである。
「何で魔法拘束の手枷を付けられてるんだ」
ザワメク城内、出場者達が中央の闘技台に上がるとエマが突然倒れたでは無いか。
「エマはどうしたんだ?」
よく観察すると背中に鮮血が流れ出している、刺されたのか卑劣な事をするもんだな。
「セリア陛下久しぶりですね」
「前回の処分が甘すぎたかの?」
かなり昔の様で俺には理解が出来ない、取り敢えず今はエマの救出が先だな。
「陛下には決断をして頂きたく思います、この生徒達かアート殿下の命をね
これは不味いな学生を見捨てれば民衆の気持ちは離れてく、俺を切り捨てれば母上の夢が頓挫する事に成る。
「私達に用が有るのはアート殿下1人です姿をお見せ願えますでしょうか?」
俺が立ち上がろうとすると心配そうな表情で腕の袖を引っ張るヘレン
「大丈夫だよ、ヘレンは試作品だけど守られてるこの部屋で待機をしててくれるかな?
「おおせのままに」
「さて行ってきますね」
そう言うとアートの姿が消え敵の大将の前に現れた。
「ホーリー・アップ」
アートは光魔法を纏った拳で敵将の腹部に強い一撃を入れて吹き飛ばす。
「次はだれだ、纏めてでも構わないぞ」
カッコよく決めたつもりだったのだが、ミーヤの暗殺術とティナの狙撃で勝負の大半は決定していた。
「リリスいるかな?」
「いますよ、エマの回復をしながら学生をシールドの中に保護してます」
姿の見えないリリスの言葉が聞こえて来る。
「力は尽くすけど危ないかも知れないわ」
リリスの言葉に俺は今まで感じた事の無い怒りが湧き上げてきたのだった。
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