唯一の男が女人国家を男女共存国家へと変えて行く物語

マナピナ

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彼の地へ Ⅱ

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 2人だけの食事を有意義に済ませたアートが席を立ち上がると、待機していた侍女たち3人が駆け寄って来る。

「殿下、ご入浴ですね」

「私達がお背中をお流しします」

「ます」

「大丈夫ですよ、殿下はお疲れですから私が1人で付き添います」

「リリス?」

「だって大人数で囲まれてたらゆっくり出来ないでしょう?」

 俺はリリスが一緒でもゆっくり出来ないのだけどな・・・。

3人の侍女とリリスの顔を順番に伺った所、小さな溜息を付いてリリスと共にする事を伝えたのだった。

 エブリンの奴は余計な事吹き込みやがったな。

「行こうか」

「はい・・・あなた」

 何だ?
何か聞き慣れない単語が出て来た様だが・・・うーん、まぁ良いか

 先に進むアートの後を真っ赤な顔で着いて行くリリスであった。


 脱衣所へ踏み入れると後から入って来たリリスがご丁寧に鍵を掛ける。

「リリスは本当に俺と入る気なの?」

「そうだけど、何か問題あるかしら?」

「あるだろう、この国には男女で入浴と言う仕来りは無いんだし、今まで俺の入浴に侍女が付いた事も無いんだそ」

「この国は変わるのよ、上に立つ者が慣れないでどうするの?」

「それにしても君は他国の要人だしさ」

「セリア陛下の前でも話したけど、私は生まれが公爵家だっただけで政治的な価値は一切無いし興味も無いのよ・・・所で寒いわ早くして!」

 既にタオル1枚かよ。

「はいはい、今入りますよ」

 幸いこの屋敷が貴族用の建物で良かった、10人は同時に入る事が出来る広さを持っている。

「俺は向こうを使うから、リリスはここを使うと良いよ」

「はい」

アートはリリスと離れた所で背を向けながら髪を洗い始めた。

 ここまで積極的に成ったのも全部エブリンが余計な事を言ったからだろう。
大体が男女で入浴や就寝と言うのは結婚してからでは無いのか?
嫌嫌、結婚をしてもしないか・・・。

「ひぃー」

「アートが悲鳴なんて・・・クスクス」

「リリス、冗談は辞めないか?」

「冗談じゃないわよ、私が洗って上げるから大人しくしてて! 分かった!?」

「・・・はい」

観念したアートに対して納得の笑顔で髪を洗い始めるリリスであった。

 あれ?
もっと抵抗があると思ったが中々気持ち良いではないか、昔母上に良く洗って貰ってた時の事を思い出すな。

「リリスは良く人の髪を洗ってるの?」

「初めてだから緊張しながら、でも丁寧に優しく洗ってるつもりよ」

「ありがとう」

「洗い流すから口を閉じてね」

リリスのお陰で新しい経験が出来た、意外と癖に成りそうな気持ちよさだったな。

「ごめんな」

「何が?」

「俺のせいでアカデミーに通えなく成った事さ」

リリスはスポンジに石鹸を馴染ませると、アートの背中を優しく擦り始めた。

「私が決めた事だから気にしないで欲しい」

「それでも・・・」

「背中終わったから流すわね」

「うん」

「そんなに責任を感じるなら言葉で無く態度で示して欲しいかなー」

「態度って?」

「キスして」

衝撃的な単語に驚き振り向くアート、それを見たリリスはそっと瞳を閉じた。

「キスって・・・結婚して子供を作る時にするんだよね?」

「え?」

「違った?」

「アートは子供の作り方知ってるの?」

「ええと・・・ジェナからキスした後の事は結婚したら教えると言われてるんだよね」

「はぁ・・・仕方が無いのかもしれないわね、競争相手のいない所で素敵な異性達に囲まれてるのですから、間違った癖が付くと帝国の馬鹿王子と一緒に成り兼ねないものね」

「帝国も一夫多妻だから問題無いんじゃない?」

「そうだけど、そうじゃないのよ」

「分からない」

「私は冷えたから温まって来るわね」

アートは泡沢山のスポンジを受け取ると、首を傾げながらも腕から荒い始めたのである。

 リリスが何故呆れたのか、一度エブリンに聞いてみるかな。
ジェナからは家族以外でキスをしては行けないと聞いていたんだが、国に寄って仕来りも違うのか?
まさか!
子供の作り方も各国に寄って違うのか?
・・・・・・色々考えていたら憂鬱に成ってきた。

「リリス、先に出るね」

「温まらないの?」

「今日はこれで良いかな、おやすみー」

アートが浴室から消えるとリリスは響き渡る声で叫んだのである。

「馬鹿ーーー」

ブクブクブク

「全く箱入りなんだから」

それでもリリスの表情は緩み、幸せそうであったのは言うまでも無いだろう。


 大屋敷には最近アートの滞在が多くみられる為、常に専用の部屋が使える様に用意されているのである。
そんな無駄に広い部屋に置いてある、無駄に大きいベッドに寝転がると思いに耽り込んでいた。

 今まで考えた事は無かったが嫌、常に将来の事は考えて来た。
しかしこれまでと違う視点で考えると、俺は将来どんな父親に成るのだろうか?
やはり旅に出るものなのか?
子供の側に父親がいても良いのか?
他国は一緒にいるが上手く行くものなのか?
 今の年が13だから、遅くても3年後には結婚して子供を作るのか・・・色々分からない事だらけだな。
うーん・・・面倒に成って来たし、また明日考えよう。
知識の無い者がいくら考えても無駄なのは魔晶石と一緒だ。

 
 陽もまだ昇らぬ朝方、懐かしい香りと共に目覚めた。

「以前もこんな事があったな」

アートは背中に柔らかい感触を感じるのと同時に、自分の腕に巻かれた腕を振り解いた。

「やっぱりリリスか・・・」

アートは向きを変えリリスを起こそうとしたが無邪気な寝顔に見入ってしまうのであった。

 キス、キスとは・・・気持ち良いのか? どんな味がするんだ? 美味しいのか?

無意識にリリスの唇へと近づいて行く。

 リリスは起きないよな、少しだけなら良いのか?
嫌嫌だめだろう、それでは卑怯者じゃないか!

「ふぅ・・・危うく惑わされる所だった」

アートは大きく深呼吸するとリリスの肩を揺らし起こしたのである。

「何?」

「何じゃないんだけど?」

「入浴終えたら次女さん達は既に寝た後で、私部屋を借りて無かったのよね」

勿論嘘である。

「それにしたって起こしてくれれば良かったのに」

「気持ち良さそうに寝てたからね」

「直ぐ朝だから今日は良いけど、ベッドの端まで離れて寝てね」

「私は構わないわよ、どうせアートは意気地無しなんだからね」

「うっ」

 起きてたのか!

「全く・・・」

ブツブツと言いながら瞳を閉じるリリスだった。

「仕方が無いな」

アートも諦め再び背中を向け眠りに付くのであった。

 エブリンの言葉に触発され、本気に成ったリリスに押され戸惑いながらも考えた事も無い様な事を考えるアートは、帝国にも本気で待ち構えてる2人がいる事までは考え及ばないのであった。

 翌朝、腕の痛みで目覚めると腕枕と言う形で寝てるリリスを見て溜息を付いた。

「リリス」

「・・・」

「リリス起きて!」

「何で?」

「朝だし、腕が痛いんだよね」

「そう、ごめんなさい」

渋々と起き上がるリリス。

「ダメダメ、やっぱり寝て!」

リリスの腕を取り引き寄せる。

「きゃっ、朝から大胆ね」

「じゃなくて、何で裸なのよ・・・」

「着替えるの面倒だったからね」

 裸のリリスが俺の上に乗ってる。

「アート、心臓の音が凄いよ」

「もう・・・そんなの良いから早く服を着てよ」

「自分から引っ張ったくせにワガママね」

「・・・」

 何を言ってもリリスのペースで進んでしまう。

「知識の差なのか?」

「度胸の差よ」

思わず口に出てたか・・・。

リリスはベッドから出ると服を着始めたのだった。

「まだまだ何だからね」

「何か言った?」

「何も、アートも早く着替えた方が良いわよ?」

「うん」

 新しい1日が始まるのだが、エブリンに感化されたリリスは正常に戻ってくれるのだろうか・・・。
昨夜はエブリンに色々言いたい事、聞きたい事があったけど今では逆に恥ずかしく感じるのは何故だろう。
 取り敢えず、今日から再び国外だし気を抜かない様にしなければな。
俺1人の判断ミスで皆が傷付く事も有るのだから。



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