フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する

てぃー☆ちゃー

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第八章 開催!ゴーレムフェスティバル!

第七十四話 フルアーマーゴーレム

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 機械音と金属音の鳴り響くゴーレム用のドッグ。
 戦乙女と大角のドッグからの音だ。もう真夜中になるのにも関わらず人の気配がいつまでも消えず、この2チームは大人数でゴーレム達のメンテナンスに忙しそうだ。
 あ、オレですか?
 オレのチームはメンテナンスなんて出来ませんから!放置されてますよ放置!
 清蓮はオレのボディを洗った後に、残ってくれようとしていた。
 アルとゴートも一緒だ。だが特にやる事もなく、早々に飽きたセルジアとテイツォが暇だメシだ酒だと騒ぎだしたためこの場はお開き。
 清蓮だけ残すわけにもいかないので、一緒に行ってもらった。
 つまり一人だ。
 そして周りがうるさい。若干うっとうしい夜になってるんだぜ。
 こんな夜に、暇を潰せそうな相手がやって来たのでご紹介いたします。

「へへへ、このゴーレムだぜ兄貴。こいつのチームは誰も残っちゃいねえ、間抜け集団だな」

 小柄のドワーフの一人が特に周りを警戒せずに声を発した。

「まったくだな弟よ!こいつにはオレ様達のビッグオームを破壊された恨みをぶつけてやらないとオレ様達の気が収まらねえ!」

 わあ、超小物が湧いて出てきた。こいつらオレに何する気なんだろうか。

「兄貴!どうするか!こいつのボディに消せないペンキで人様の前に出れない様な卑猥な落書きでもかまして出場出来なくしちまうか!」

 やめてあげて!お前らの前のゴーレムはメンタル弱いのよ!
 てかセルジアが大爆笑するだけだろそれ!

「お、弟・・・よくもそんな恐ろしいことを思いつけるな!よし!早速その消せないペンキを持ってくるか!」
「了解だ兄貴!ちょっと工房まで取ってくるぜ!」
「良し、工房だな・・・へっへっへっ・・・待ってろよクソゴーレムがって・・・ちょっと待て弟野郎!なんで持ってきてねえんだ!工房まで戻ってたら夜が明けちまうだろうが!」

 ほっ、間抜けでよかった。

「ご、ごめんよ兄貴!まさか初戦でビッグオームが負けるだなんて思ってなかったから!」
「ぬう、確かにそうだ。それは仕方ない・・・じゃあどうするか・・・、いっそのことこいつはこの場で吹き飛ばしてやろうか」
「だ、ダメだよ兄貴!ゴーレムは高級なんだ!壊したりしたらあとでいくら請求されるか分かったもんじゃないよ!」
「むう、それは確かにそうだ。中々に知恵が回るな弟よ」

 ・・・こいつらは間抜けの集まりなのか?それともたまたまこの場でコントの練習でもしているだけなのか?
 ここでオレが動いて脅かして逃がしてもいいけど、もうちょっと見ていよう。面白いから。

「しかし壊すのはダメか、落書きも出来ないとなると・・・手詰まりか」

 手詰まりなの!?早いよ!

「やはり、兄貴!ここは事故に見せかけるべきじゃないかな!」
「事故・・・だと?」

 事故とな!?

「そうだよ!事故だよ!オレ達がやったかわからないように仕掛けを付けまくるんだ!そして試合中にその武装の暴発でこいつがダメージを受ける!そうすればこいつが破壊されたとしてもオレ達のせいにはならない!完璧だ!」
「なるほど!流石は我が弟だ!天才だな!」
「そうだろう兄貴!」
「じゃあどうするか!まずはビッグオームのドッグから殺傷能力の高いアイテムをいくつか引っ張り出すか!」
「そうだね!持ってくるよ!」

 弟が自分たちのドッグへと駆け込んでいった。ビッグオームの残骸が置いてある場所でもある。爆発する槍は見たけど、他にどんな武装があるのかな?

「持って来たよ兄貴!爆砕槍に連動パイルバンカー!それに決勝用のバスターソード!対ゴーレム用ハンマーにトリモチボム!異世界の勇者達の魔法の筒をヒントに作った、戦乙女と大角の魔力波長を追い続ける誘導ミサイル!それに大型ニードルガンと脚部ロケット砲!」

 おお、なんかすごい色々持って来た!小型のゴーレムが荷物を運んでいる!なんだかんだ言ってビッグオームをメンテするために色々用意してたんだな。

「ふむ、だが事故に見せかけるとなるとだ。やはりこいつが武器を暴発させる必要があるな。決勝の舞台は出場ゴーレムとそのマスターしか入れぬ、オレ達の魔力で発動させることは出来ないぞ!」
「このゴーレムが攻撃を受けた時に作動するようにすればいいんじゃないのかな!?」
「それだ!元々この手の武器は敵から攻撃されると壊れたり誤作動を起こしたりするからな!まさしく事故!」
「おお!本当だ!僕もそれなら事故に思うよ!早速取り付けよう!ビッグオーム用の接続アタッチメントのサイズを変えればすぐつけれるよ!」

 こうしてこの双子のドワーフがオレの体に色々と武装を取り付け始めた。
 鏡がないのが残念だが、なんかオレの体に色々といじられている。

「ぜえ、ぜえ・・・いい仕事をしたね兄貴!」
「はあ、はあ・・・これでこいつは決勝の会場でボロボロに吹き飛ぶこと間違いなしだ!む、腰の剣が曲がってるな」
「兄貴!剣は爆発しないよ!」
「だが弟よ、この武装で剣がないと右側に武器が集中しすぎてバランスが悪いぞ?仕事をするには完璧に!これが我らゾルド兄弟のモットーなのだ!」
「そうだね兄貴!じゃあ肩のミサイルの発射角ももう少し上に向けよう!」
「脚部ロケット砲の中身をトリモチボムに変更しておこう、足にダメージを受けたらそのままこいつの足が動けなくなるんだ」
「背中のニードルガンはどうしよう?このままだとこのゴーレムじゃ手が届かなくて取れないよ?」
「なんだと!?それは美しくない!背中用のホルスターを腰用にサイズ変更だ!脚部ロケットにぶつからない様に調整するんだぞ?」
「それならバスターソードと対になるようにしてあげないとね!ビッグオームと指の太さはあまり変わらなくて助かったよ」

 朝方近くまで作業をしていたこのドワーフの兄弟は深く深く頷くと、やりきった男の顔をしてその場に倒れ込んだ。
 オレは念動の魔法で毛布を掛けてあげると、早朝に顔を出した仲間達に発見される。
 ゆっくりと寝かせてやってくれと仲間達に伝えると、みんな不思議そうな顔をしていた。
 だが完全武装と化したオレの姿を見て何かを悟ったのか、皆が皆彼らに感謝の言葉を送ると会場に目を向ける。
 決勝の時間だ。



「さあさあさあ!ついに!ついに!つーいーに!始まります!決勝です!本日のメインイベントッ!ゴーレムファイトのお時間だあああああああああ!!!!!!」

 昨日に引き続き、人族の女性の実況が絶叫をあげて会場を煽りに煽る!
 うん、すごい雰囲気だ。

「決勝を始める前に昨日のハイライトです!モニターに注目してください!」

 そこには坂道を踊るように駆け上がる戦乙女と大角の姿、それとオレがことごとく攻撃を食らう様が映し出される。
 続いて、業炎をその武器で華麗に切り裂く戦乙女。同じく武器の一突きで炎を霧散させる大角。へっぴり腰で炎をツンツンするオレ。
 最後にガイガンの首を一閃して刈り取る戦乙女、胸部を貫く大角。追いかけっこで追いつけないオレ。待て!さっきからオレはオチ担当じゃねえか!
 もうちょっと活躍した場があるだろ!?開始直後にゴーレム倒した時とか!転がってきた岩を拳で壊したところとか!檻を持ち上げたところとか!

「会場もかなりあったまって来たところで!本日も足を運んで頂いております!レベッカ様からのお言葉です!」

『ワアアアアアアアアア!!!!』

「紹介されたレベッカなのだ!今日勝ったチームにはそいつらの望む物を1つだけつくってやるのだ!みんながんばるのだー!」

『ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 割れんばかりの歓声に会場が包まれた!その歓声で建物が震えているようにも思える。

「それでは早速!選手入場です!」

 その一言に、会場が静まり返る。
 うん。皆さんしっかり訓練されていらっしゃる。

「入場は障害物ステージの到着順の紹介になります!まずは障害物ステージを圧巻の速度でクリアした『戦乙女』!!!!」

「来たぞ!今日も美人だ!」
「頼むぞ!お前に賭けてるんだ!」
「今年こそ優勝だ!」

 聞こえてくる声援があったかい。やはり女性型のゴーレムは人気だ。

「昨日に引き続き、少し長い剣を剥き身で手に持っての登場だ!今回は左手にシールドも装備している!大角と鋭い突きを警戒しての武装か!これは期待が持てます!」

 盾なんか持ってるんだ?オレはまだ登場してないから姿が見れないぜ。

「続きまして!障害物ステージを危なげなくクリアした前回・前々回優勝ゴーレム!『大角』の登場だ!!!」

「きたきたきた!」
「三連覇間違い無しだ!」
「他のゴーレムなんかお前の一突きで終わりだ!」

 流石に三連覇がかかっているゴーレム。こいつも中々の人気者だ。

「前回、前々回とその右腕に持った鋭い槍の一本で優勝を果たした『大角』!今年もぶれずに槍の一本で参戦だ!これは自信の表れか!それとも周りを舐めているのか!どちらにしても纏うは王者の風格!大会当初は2番人気だったが決勝オッズは断トツの一番人気!今年も鋭い槍で優勝へ一直線だ!」

 実況によって煽られに煽られた会場が更にヴォルテージを上げる!
 やはり実績がある分期待が高いようだ。

「そして最後に登場は!前ステージを三位で切り抜けたシオ~~~~!!!」

 オレの番だ。早速登場して歓声を浴びよう。

「ひっこめー!」
「ビッグオーム壊しやがって!金返せー!」
「海の底に沈んでろー!」
「帰れバケツ頭!」

『かーえーれ!かーえーれ!かーえーれ!かーえーれ!』

 泣きそうだよちくしょう!なんだよ!なんだよ!オレ頑張ったじゃんか!この仕打ちはどうなのよ!?

「おーっと!シオ罵倒を浴びている!マスターのセルジアは横で大爆笑だ!しかしそれも仕方の無いこと!今大会優勝候補だったビッグオームを粉砕したシオ!街中!いや!国中の人間のお財布に大打撃を与えた張本人に暖かい言葉など誰も送ってはくれませんっ!皆さん!会場に物を投げないでください!あとで掃除が大変ですっ」

 それオレのせいじゃないよね!?いきなり仕掛けてきたビッグオームが悪いんだからね!?

「しかしシオ!完全武装だ!障害物ステージでは何も装備していなかったのに体中に武器を括りつけられている!肩には大筒が2門!背中には長い長い・・・これは爆砕槍か!合計で8本!左右の腰には剣と何やら短い砲身の砲塔!そして両足には射撃砲!素早い動きをする二体のゴーレムを見越しての装備!そして右腕には巨大な鉄槌が括りつけられている!」
「あれだけの装備を付けるだけで相当な重量なのだ!しかしシオの歩みは昨日と変わらないのだ!出力だけでいえば今大会最大のゴーレムはあ奴かもしれないのだ!」

 そう!オレの体には昨日双子のドワーフが付けた武装が所狭しとくっついている!少しだけ魔力を込めてみたが、どれもオレの魔力に連動して動いてくれるのは確認済み!
 そんなオレの姿をみて残りのチームのマスターが周りのスタッフと何やら話を始めている。ふ、今更オレに警戒心を出しても遅いんだぜ?

「戦乙女チームのサポーター達が慌ただしくそれぞれのベンチに装備を並べていきます!シオの姿を見て武装変更の必要性を感じたか!?油断がないっ!それに対して・・・大角は・・・これはすごい!小型ゴーレムが5体がかりで巨大な槍を1本持って会場に姿を現した!しかし・・・あの槍の先端の輝きは!?」
「うむ!オリハルコンなのだ!」
「オオオオオオオオ!オリハルコンだ!!神の鉱物!この世に加工出来る者は数人しかいないとされている伝説のオリハルコン!先端だけとはいえ!これだけの量を準備して槍に仕込んでくるとは!本気です!『大角』のマスターであるシミュートはオリハルコンの加工技術すら習得していたのか!?」
「前回の優勝商品で専用の溶鉱炉を、前々回の優勝商品で金床を作ってやったのだ!あとは技術力さえ追いつけば加工する土台は出来ていたのだ!」

 オリハルコン!?なんかすごそうだ!オレのボディで耐えきれるのか!?
 避けろ?無理無理!あはははは!だってあいつオレより全然早いもん!

「あの槍の大きさは大角のそれを遥かに超えています!果たして持ち上げる事が出来るんでしょうか?」
「自分で用意した武器を装備できない間抜けはいないのだ!きっと大丈夫なのだ!」

 まあそうよね。

「さあさあ、選手達がステージに並んだところでルールの説明です!今回は3体しか決勝ステージまで残らなかった為、バトルロイヤルにて雌雄を決します!つまりこの場にいる3体のゴーレムがこの会場で同時に戦いを始めるんです!」

 なるほど。つまり戦乙女と大角が潰しあうのを眺めていればいいって事だな!

「やはり戦乙女とシオ、2体は大角狙いでしょうか?!優勝実績のある大角には若干不利な戦いにも思えますがいかがでしょうか!?」
「前々回も同じようにバトルロイヤル方式だったのだ!それでも大角は勝ち残っているのだ!不利というのであればこの広い会場では足の遅いシオが不利だとも言えるのだ!」
「なるほど!距離を取れれば取れるほど大角は自分の土俵で戦える訳ですね!戦乙女も同様でしょう!ガイガン戦と違ってシオは敵を止める手を何かしら用意していないとダメなんですね!」
「そうなのだ!追加された武装に期待するのだ!」

 足止めが可能な武装は脚部ロケット砲の中に仕込まれたトリモチ弾だけか、使いどころが難しいな。

「あの強固なボディのシオでもオリハルコンの一撃にはおそらく勝てないのだ!戦乙女側はシオのボディと戦うには剣では不利なのだ!でもベンチサイドは何か用意しているようなのだ!」
「注目の一戦までもう間もなくです!・・・今、最終オッズの集計が出ました!やはり一番人気は大角!次いで戦乙女!大きく差が開いてシオ!完全武装の姿で少しだけ票を伸ばしたが、やはり大角が大本命か!!審判団からの合図です!審判なんていたんですね!カウントダウンを開始いたします!」

 やべえ、緊張してきた!手なんか震えないけどね!
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