5年越しの花嫁

紅蓮。:*

文字の大きさ
10 / 18
青春の日々

おぼろげな記憶

しおりを挟む
18歳の誕生日のことを俺はよく覚えていない。
俺は夕方頃、高校の教室で倒れているのを巡回の先生に発見されたらしい。
目立った外傷はなく、俺の胸元にはプレゼントらしきモノがのせてあったそうだ。
その中には、すごく綺麗な翡翠色のネックレスがはいっていた。だが、誰からのプレゼントなのか全く覚えていない。
それどころか、倒れる前のことを何一つ覚えていなかった。

いつものように帰り支度をして、玄関まで行き、雨が降っていたから傘を取りに行った。そこまでは覚えている。だが起きた時、俺は傘を持っておらず泣き腫らした目で倒れていた。
なにがなんだかまったくわからない。
 
だけどなぜだろう。忘れていることがとても悲しいことのように思えて仕方ない。涙がとまらない。この気持ちは、この喪失感は一体なんなのだろう。

────

念の為病院に行ったが結果はなんともなく、1日休養をとった後俺は学校に戻った。
いつも通り学校に行き、自分の席に座る。
いつも通りのそこそこ静かな教室。
だが、なにかがたりない。でも、なにがたりないのかがわからない。
いつも通りなはずなのにいつも通りじゃない。
それがたまらなく悲しかった。

「香坂君。大丈夫かい?」

突然降ってきた声に顔を上げると、遼がいた。

「一応医者にいったけどなんともないって。」

すると遼は気遣うような顔をして俺を見つめた。

「体よりも精神的なほうさ。」

「精神的?」

「彼女、転校しちゃっただろ?」

彼女…。かのじょ…?
なんだかそんな人がいたような気がする。
でも…

「あぁ、別れたよ。」

カチャッ。
妙な音が聞こえた気がした。

「…意外だね。香坂君のことだからもっと執着を見せるのかと思ったよ。」

「別に、大切だったわけでもないしな。」


カチャリ。カチャリ。


「香坂君。なら1つきいてもいいかい?」

「ん?」

遼は困ったような優しい顔で俺をみる。

「どうして君は泣いてるんだい?」

…?泣いてる?誰が?俺が?
ゆっくりと頬に手を当てる。
濡れている。なんで?これは、いったいなに?
…涙?
しっとりと濡れた指先が悲しみをうつしていた。わからない。わからないが、なぜかとても胸が苦しかった。
来る時まで晴れていた空は、いつのまにかひどい雨に変わっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

処理中です...