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第14話 一紗6
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「もう、げんかい……」
その一言を残して倒れ込んだ和に、一紗は咥えていた陰茎をようやく離した。
だらしない。まだ六発目だと言うのに。普段から鍛えていないからこんなことになるんだ。
とはいえ一紗も随分と満足していた。数えるのも億劫なほどイッたし、しっかりと深イキも出来た。頭が真っ白になって、緩んだ股から失禁さえしそうになったが、ホテルじゃないことを思い出して気合いで堪えることもあった。
久々に心と身体の満たされたセックスが出来て、下半身の疼きも無くなっていた。それはそれとしてやりたい気持ちが無くなった訳では無いが。
服従のポーズを取る和の、開かれた腕が枕に丁度よさそうで、甘えたがりな心が目を出していた。一紗は身体を起こして、彼のそばに来ると、
『ピーンポーン』
見計らったように鳴る、来客を告げるベルの音を聞いて、一紗は分かりやすく舌打ちをしていた。
「ん、だれ?」
「元カノだろ、多分」
起き上がろうとする和の胸に手を当てて制止する。まかせてというと彼はそのまま横になっていた。
「はーい」
別に全裸のままでもよかった。そのほうが状況を理解しやすいと思っていた。ただ郵便とか別の人だった場合を考えて、床に転がっていた白いTシャツを拾い上げて頭からかぶる。
自分の物ではなく、和のものは少しだけ丈が長くて、ギリギリ陰毛が隠れる程度だった。二秒ほど逡巡してから面倒だと玄関に向かう。
「開けるよ」
扉を開けた。躊躇なく。
声を聴いて不審に思っていたのだろう、男女二人が訝し気に一紗の顔を見つめていた。ただ男性のほうは視線が下のほうへゆっくりと流れていっていた。
……あっ
薄手のTシャツ一枚しか着ていないのだ。先ほどまで可愛がられていた乳首はその存在を主張しているし、たぶん透けている。ただで見せるほど安い女じゃないが、隠すのも違う気がして、
「誰?」
「いや、あんたが誰よ?」
女性――海――が一歩前に出ていた。
一紗は彼女を見て、軽く笑みを浮かべる。
「私は和の彼女だけど」
「はああっ!? そんなわけないじゃない!」
「まあいいや。とりあえずあがんなよ。外に聞こえても面倒だろ?」
そう言って一紗は返答も待たずに部屋に入る。
がちゃっと鍵の締まる音が聞こえる。それを背中で確認しながら尻を丸出しにしながら和の元へと向かっていた。
……あっ
そこにいたのは力なく横たわる彼氏の姿だった。全裸だ。何も着ていない。
一瞬そのままでも面白そうと思ったが、ちょっとかわいそうになって、一紗は端に寄せてある布団を掛けていた。それとほぼ同時に後ろから二人が部屋に入ってくる。
「あ……二人とも。こんな状況でごめんね」
顔しか出ていない和が、ひきつった笑みを浮かべていた。
「風邪か?」
男性――晴人――が尋ねると、海がそんなわけないでしょと、その足を踏んでいた。
ほぼ裸の女性が部屋にいて、確かにそれはない。何かの冗談だろうと思ったが海の反応からまじめに言ったのかと一紗は呆れていた。
さてこれからどうしようかと頭を悩ませる。誰かが話のきっかけを作らない限り黙ったままなのは目に見えていた。
……ちょっと、良さげじゃん。
一紗は考えながらも、一歩後ろに下がっている晴人を品定めしていた。骨太な、逞しい筋肉が、夏場の薄着のせいではっきりとうかんでいた。
あの腕で抱えられながら、地に足つかないで犯されたらと考えると、股がじっとりと準備を始めていた。
……だめだなぁ。
浅ましい発想に思わず笑みが零れる。とても自分らしくて嫌になる。
しかし今はそんなことを考えている場合じゃない。この馬鹿みたいにつまらない状況を終息させなければ気持ちよくセックスに向き合えないのだから。
一紗はベッドに腰掛けて二人、いや海に視線を向けていた。
「で、あんたはどうしたいんだ?」
「どうって……」
「選択肢は四つ。和を取るかそこの男を取るか、または両方切るか――」
一紗はそこで言葉を一旦切って海を見る。目には愉悦を浮かべて、試すように。
「――両方取るか」
「そんなこと、出来るわけないでしょ」
「出来るかどうかじゃないし。努力をするかしないかの問題だろ」
「ちょっと、おかしいわよこの女!」
海は首を激しく振っていた。聞きたくない途いうように耳を押さえる様はヒステリックに見えなくもない。
それを見て、一紗は別に何も感じていないかった。ただ、子供じゃないんだからわめく前に答えは出してほしかった。
めんどくさ……
一生関わらないでくれないかな。それが一番早いだろと一紗は思っていた。しかし口に出すことはできない。和がそれを望んでいなかったからだ。
ひとまず道は示した。どれを取るかは彼女次第で関与すべき問題ではない。
一紗は寝ている和の腹辺りを軽く叩いていた。ぽんぽんと埃がたつことも厭わず、
「で、和はどうしたい?」
「どうって……」
「おんなじなんだよ。そこの女をとるかとらないか……そこの男と知り合いなん?」
ふと気になって一紗は聞いていた。
部屋に入ってきた二人に和がかけた言葉にも親しみがあったし、浮気したのに相手の体調を心配するほどの余裕があるのもおかしい。
和はただはにかみながら頷いて、
「晴人とは大学一年からの親友だよ……うん」
「和……」
「せめて一言言ってほしかったけどね」
一言でいいのか……
男達は苦笑しつつも熱い視線を交わしていた。余程大切な友達ということなのだろう。それ以上でないと信じたい。
「で、だ。どうする? 女も男も、縁を切るなら今だぞ?」
「……出来ない」
「辛いぞ」
「辛いか、そうかもね。でも二人とも大事な人なんだ。まだ事情も聞いてないのにそんなことなんて出来ないよ」
優しい。優しすぎる。
そして臆病なんだ。
一紗はそれを咎める気はなかった。選んだのは彼であり努力するのは彼女らだ。執行猶予が与えられただけで全面的に許された訳では無い。
後は擦り合わせをすれば和の気持ちもいくらか晴れるだろう。一紗は新しい寄生先の問題が解決したことに肩の荷をおろしていた。
その一言を残して倒れ込んだ和に、一紗は咥えていた陰茎をようやく離した。
だらしない。まだ六発目だと言うのに。普段から鍛えていないからこんなことになるんだ。
とはいえ一紗も随分と満足していた。数えるのも億劫なほどイッたし、しっかりと深イキも出来た。頭が真っ白になって、緩んだ股から失禁さえしそうになったが、ホテルじゃないことを思い出して気合いで堪えることもあった。
久々に心と身体の満たされたセックスが出来て、下半身の疼きも無くなっていた。それはそれとしてやりたい気持ちが無くなった訳では無いが。
服従のポーズを取る和の、開かれた腕が枕に丁度よさそうで、甘えたがりな心が目を出していた。一紗は身体を起こして、彼のそばに来ると、
『ピーンポーン』
見計らったように鳴る、来客を告げるベルの音を聞いて、一紗は分かりやすく舌打ちをしていた。
「ん、だれ?」
「元カノだろ、多分」
起き上がろうとする和の胸に手を当てて制止する。まかせてというと彼はそのまま横になっていた。
「はーい」
別に全裸のままでもよかった。そのほうが状況を理解しやすいと思っていた。ただ郵便とか別の人だった場合を考えて、床に転がっていた白いTシャツを拾い上げて頭からかぶる。
自分の物ではなく、和のものは少しだけ丈が長くて、ギリギリ陰毛が隠れる程度だった。二秒ほど逡巡してから面倒だと玄関に向かう。
「開けるよ」
扉を開けた。躊躇なく。
声を聴いて不審に思っていたのだろう、男女二人が訝し気に一紗の顔を見つめていた。ただ男性のほうは視線が下のほうへゆっくりと流れていっていた。
……あっ
薄手のTシャツ一枚しか着ていないのだ。先ほどまで可愛がられていた乳首はその存在を主張しているし、たぶん透けている。ただで見せるほど安い女じゃないが、隠すのも違う気がして、
「誰?」
「いや、あんたが誰よ?」
女性――海――が一歩前に出ていた。
一紗は彼女を見て、軽く笑みを浮かべる。
「私は和の彼女だけど」
「はああっ!? そんなわけないじゃない!」
「まあいいや。とりあえずあがんなよ。外に聞こえても面倒だろ?」
そう言って一紗は返答も待たずに部屋に入る。
がちゃっと鍵の締まる音が聞こえる。それを背中で確認しながら尻を丸出しにしながら和の元へと向かっていた。
……あっ
そこにいたのは力なく横たわる彼氏の姿だった。全裸だ。何も着ていない。
一瞬そのままでも面白そうと思ったが、ちょっとかわいそうになって、一紗は端に寄せてある布団を掛けていた。それとほぼ同時に後ろから二人が部屋に入ってくる。
「あ……二人とも。こんな状況でごめんね」
顔しか出ていない和が、ひきつった笑みを浮かべていた。
「風邪か?」
男性――晴人――が尋ねると、海がそんなわけないでしょと、その足を踏んでいた。
ほぼ裸の女性が部屋にいて、確かにそれはない。何かの冗談だろうと思ったが海の反応からまじめに言ったのかと一紗は呆れていた。
さてこれからどうしようかと頭を悩ませる。誰かが話のきっかけを作らない限り黙ったままなのは目に見えていた。
……ちょっと、良さげじゃん。
一紗は考えながらも、一歩後ろに下がっている晴人を品定めしていた。骨太な、逞しい筋肉が、夏場の薄着のせいではっきりとうかんでいた。
あの腕で抱えられながら、地に足つかないで犯されたらと考えると、股がじっとりと準備を始めていた。
……だめだなぁ。
浅ましい発想に思わず笑みが零れる。とても自分らしくて嫌になる。
しかし今はそんなことを考えている場合じゃない。この馬鹿みたいにつまらない状況を終息させなければ気持ちよくセックスに向き合えないのだから。
一紗はベッドに腰掛けて二人、いや海に視線を向けていた。
「で、あんたはどうしたいんだ?」
「どうって……」
「選択肢は四つ。和を取るかそこの男を取るか、または両方切るか――」
一紗はそこで言葉を一旦切って海を見る。目には愉悦を浮かべて、試すように。
「――両方取るか」
「そんなこと、出来るわけないでしょ」
「出来るかどうかじゃないし。努力をするかしないかの問題だろ」
「ちょっと、おかしいわよこの女!」
海は首を激しく振っていた。聞きたくない途いうように耳を押さえる様はヒステリックに見えなくもない。
それを見て、一紗は別に何も感じていないかった。ただ、子供じゃないんだからわめく前に答えは出してほしかった。
めんどくさ……
一生関わらないでくれないかな。それが一番早いだろと一紗は思っていた。しかし口に出すことはできない。和がそれを望んでいなかったからだ。
ひとまず道は示した。どれを取るかは彼女次第で関与すべき問題ではない。
一紗は寝ている和の腹辺りを軽く叩いていた。ぽんぽんと埃がたつことも厭わず、
「で、和はどうしたい?」
「どうって……」
「おんなじなんだよ。そこの女をとるかとらないか……そこの男と知り合いなん?」
ふと気になって一紗は聞いていた。
部屋に入ってきた二人に和がかけた言葉にも親しみがあったし、浮気したのに相手の体調を心配するほどの余裕があるのもおかしい。
和はただはにかみながら頷いて、
「晴人とは大学一年からの親友だよ……うん」
「和……」
「せめて一言言ってほしかったけどね」
一言でいいのか……
男達は苦笑しつつも熱い視線を交わしていた。余程大切な友達ということなのだろう。それ以上でないと信じたい。
「で、だ。どうする? 女も男も、縁を切るなら今だぞ?」
「……出来ない」
「辛いぞ」
「辛いか、そうかもね。でも二人とも大事な人なんだ。まだ事情も聞いてないのにそんなことなんて出来ないよ」
優しい。優しすぎる。
そして臆病なんだ。
一紗はそれを咎める気はなかった。選んだのは彼であり努力するのは彼女らだ。執行猶予が与えられただけで全面的に許された訳では無い。
後は擦り合わせをすれば和の気持ちもいくらか晴れるだろう。一紗は新しい寄生先の問題が解決したことに肩の荷をおろしていた。
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