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プロローグ
とある国の最前線、戦場にて。(後編)
しおりを挟む「まったく、何やってるんですか!」
「………ごめんなさい」
少し傷を負ったものの、S級を倒した。
「まあ倒したので良しとます。……それより、最後の任務お疲れ様。隊長と変わりますね」
「千里ちゃんおつかれさま。よく頑張ったね」
今度帰ってきたのは、無駄にむさ苦しい声だった。
声の主は私の……あまり呼びたくないがお義父さん、義理にでもこの人がお義父さんかと思うと本当にこう何か拾われるとこ間違ったなあと思う。
「キモいです。何ですかかクソじ、いや軍隊長」
いつもの調子でクソじじいとの会話。
本人はぞんざいに扱わないでとかなんとか言ってるがうるさいのでいちいち相手にしていない。
「クソじじいはやめようよ…。お義父さん悲しいな」
「なんですか?気分が悪いので切りますよ」
「いや、ちょっと待った、明日のこと。学校の方に荷物は送ってあるから、早速で悪いけど、学院の方にはそのまま向かってくれ」
「はいはいわかってます。っていうかそれ行く前にも言ってましたよね」
「えーっと、体には気をつけて、しばらく会えなくなるけど、精一杯頑張りなさい」
何かまだ話したいことがあると、いつもこの人は曖昧に言葉を濁す癖がある。今回も例に漏れずそういうことなのだろう。
「わかってますって。ではしばらく前線から抜けますが、いままでありがとうございました。あと、再招集なんてやめてくださいね。私がいない間にくたばるとかもダメです」
「 おうおう、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか。大丈夫だ。お前一人いなくなったくらいで、へばるやわな軍はじゃねぇから」
これから学院寮に引っ越す人を前線に借り出しといてよくそんなこと言えるなこの人。
「そんな大口叩いて大丈夫ですか?あとで泣きついても知りませんからね」
こんな事を言ってるが、もしそんなことがあったら誰が反対しようともここへ戻ってくるだろう。だって私は……
「もうこれ以上、大切な人を何もできずに殺したくないですから」
「うう、千里ちゃんパパはそんな事言ってもらって嬉しいよ」
うげ、つい声に出てましたか。
けっこう後始末大変なんですよね、この人。
「べ、別に深い意味はないです。ではさようなら」
「千里。わかってると思うけど君の兄は……」
「その話はもういいです!わかってますよ!」
兄の消息は分かっていない。
恐らく、死んだんだろう。と、言われた。
でも、もし彼が生きているとしたら、今どうしているのだろう。
私はこれから一時的に軍を抜け高校に行く。もちろん高校といっても、個性保持者の高校。つまりは将来ここに入ってくるような子たちのためのものだ。
昔から憧れはあった。
綺麗な制服に袖を通し、女の子の友達とおしゃべりしたりするそんなありふれた生活。私が切望していた普通の生活がやっと手に入る。
しかし、自分だけ生活をしているというのはどうなのだろう。
そんなの私には耐えられない。……嘘です。お兄ちゃんに会いたくてしょうがないだけですが。
だから私は探す。
この期間を利用してなんとしてでもお兄ちゃんを探し出す。
そして………
約束を果たそうじゃないか。
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