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第1章
初模擬戦part.2
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「——なっ!?」
体が勝手に後ずさっていた。反応速度が尋常じゃないほど洗練されているのか、それとも先を読まれ、軌道を逆算されていたか。
どちらにせよ、完全に上手を取られていた。
この状態で攻撃を続けても意味がない。間合いをかなり開け、かろうじて作り笑いでその場をしのいでみせた。
「この程度ですか?もっと強いはずでしょう?」
まるで挑発するように、淡々と千里はそう呟いた。
「じゃあ、次は本気で行かせてもらうよ」
「はい、さすがはわたしのお兄ちゃ……じゃないです。つ、司さん。」
模擬戦開始後、銀髪の少女はその場から微動だにしていなかった。
「今度はもっと速くしないとやられるってことか」
つま先に全体重を乗せるようなイメージ、目をつぶってゆっくりと体制を整える。
「ふぅー」
今度は何倍ものスピードで眼前の少女に襲いかかった。
……おかしい。
何度やっても、威力が完璧に打ち消される。
個性はそれぞれ微妙に威力が異なる。
そして、個性保持者ならその威力の差に気づくことが容易だ。
千差万別の先天的個性がぶつかり合う、なんて状況なのに威力が打ち消されている。
そう、それはつまり……
「やっと気付きましたか」
「でも、ありえないだろ、そんなこと………。」
「そのありえないが現に今、あなたの目の前で起こってるんですよ。」
「同じなんですよ。あなたの先天的個性と私のは」
先天的個性が同一だというのは兄弟以外は理論的にありえない。
これは科学が証明していることだし、実際そんなケースは報告されたなんて聞いたことがない。
ありえない。本当にありえないのだ。
「では、今度はこちらから行きます!」
あっけらかんとしている俺に対し、千里は一気に俺との間合いを詰める。彼女の拳は俺の顔面すれすれを通り過ぎた。
「っと、あぶない、あぶない」
「今のを避けましたか…。今度こそ潰します」
千里の動きはまるでさっきまでとは違い、こちらに合わせていたようなぎこちなさは全く感じられず、洗練されていた何かを感じざるを得なかった。
怯むことなく一方的な襲撃を返す余裕などそこにはなく、ただだだ避けることで精一杯、とてもカウンターを狙えるようなものではなかった。
一瞬、ほんのその隙を突かれ、今度は彼女のそれが顔面へまっすぐ放たれた。避けることができないないと悟ってしまうほど完璧な軌道で向かってくる。
これで終わりか。そう思った。
ここまでやって何もできないのだ。素直に負けを認めるしかない。
ただ、ふとなにか懐かしい匂いが鼻をすーっと通った。
だんだんと記憶の奥底で眠っていたようなそんな些細なものが頭の中にフラッシュバックしていく。
俺と5歳くらいの銀髪の少女が剣を交えていた。体格から考えて司もそのくらいの年齢だろう。
小さな公園だった。周りには遊具もあったが、そんなのには見向きもせず彼らは剣を振るっていた。
昔もこんなことをしてたっけ。そんな淡い記憶が脳裏をよぎった。
すると、急にあたりが暗くなった。次いでこげ臭い匂いが立ち込んだと思うと、父さん、母さんが口から血を吐き倒れていた。家は壊され、人々の悲鳴が聞こえる。明るく、賑やかだった街は一瞬にして死の街へと変わっていった。
そんな街には俺と顔も覚えていない、一人の少女が取り残されていた。
「侵攻だー!みんな逃げろーー!」
誰かがそんなことを言ったのが聞こえた。
俺はその女の子の手を引いて思いっきり走った。
周りに大人は誰もいなかった。いつのまにか女の子も消えていた。
ひとりぼっちになり、急に心細くなった。すると、体が重くなってその場から動くことすらできなくなって立ち尽くすことしかできずにいた。
そして……見つかったのだ。奴らに。
背筋が凍り、吐き気まで感じるほどの恐怖。それを体感したのだ。助けを求めようとしても声が出なければ、逃げようとしても足が動かない。
死ぬ。
当時、6歳だった少年でもわかった。もはや諦めるしかなかった。
そうだ…このあと俺は殺された。握り潰されて、死んだはずなのだ。
同時に、何か黒いモヤのようなものが、足元から立ち込めてきた。
抑えきれない何か、抑えてきた何かだ。
ただ、なすすべもなく全身が漆黒に染まっていく。意識は半端朦朧としており。周りの音もだんだんと聞こえなくなってきた。
「お兄ちゃん!」
その言葉が聞こえた。間違いなくそう聞こえた。
意識はそこで途絶えていた。
体が勝手に後ずさっていた。反応速度が尋常じゃないほど洗練されているのか、それとも先を読まれ、軌道を逆算されていたか。
どちらにせよ、完全に上手を取られていた。
この状態で攻撃を続けても意味がない。間合いをかなり開け、かろうじて作り笑いでその場をしのいでみせた。
「この程度ですか?もっと強いはずでしょう?」
まるで挑発するように、淡々と千里はそう呟いた。
「じゃあ、次は本気で行かせてもらうよ」
「はい、さすがはわたしのお兄ちゃ……じゃないです。つ、司さん。」
模擬戦開始後、銀髪の少女はその場から微動だにしていなかった。
「今度はもっと速くしないとやられるってことか」
つま先に全体重を乗せるようなイメージ、目をつぶってゆっくりと体制を整える。
「ふぅー」
今度は何倍ものスピードで眼前の少女に襲いかかった。
……おかしい。
何度やっても、威力が完璧に打ち消される。
個性はそれぞれ微妙に威力が異なる。
そして、個性保持者ならその威力の差に気づくことが容易だ。
千差万別の先天的個性がぶつかり合う、なんて状況なのに威力が打ち消されている。
そう、それはつまり……
「やっと気付きましたか」
「でも、ありえないだろ、そんなこと………。」
「そのありえないが現に今、あなたの目の前で起こってるんですよ。」
「同じなんですよ。あなたの先天的個性と私のは」
先天的個性が同一だというのは兄弟以外は理論的にありえない。
これは科学が証明していることだし、実際そんなケースは報告されたなんて聞いたことがない。
ありえない。本当にありえないのだ。
「では、今度はこちらから行きます!」
あっけらかんとしている俺に対し、千里は一気に俺との間合いを詰める。彼女の拳は俺の顔面すれすれを通り過ぎた。
「っと、あぶない、あぶない」
「今のを避けましたか…。今度こそ潰します」
千里の動きはまるでさっきまでとは違い、こちらに合わせていたようなぎこちなさは全く感じられず、洗練されていた何かを感じざるを得なかった。
怯むことなく一方的な襲撃を返す余裕などそこにはなく、ただだだ避けることで精一杯、とてもカウンターを狙えるようなものではなかった。
一瞬、ほんのその隙を突かれ、今度は彼女のそれが顔面へまっすぐ放たれた。避けることができないないと悟ってしまうほど完璧な軌道で向かってくる。
これで終わりか。そう思った。
ここまでやって何もできないのだ。素直に負けを認めるしかない。
ただ、ふとなにか懐かしい匂いが鼻をすーっと通った。
だんだんと記憶の奥底で眠っていたようなそんな些細なものが頭の中にフラッシュバックしていく。
俺と5歳くらいの銀髪の少女が剣を交えていた。体格から考えて司もそのくらいの年齢だろう。
小さな公園だった。周りには遊具もあったが、そんなのには見向きもせず彼らは剣を振るっていた。
昔もこんなことをしてたっけ。そんな淡い記憶が脳裏をよぎった。
すると、急にあたりが暗くなった。次いでこげ臭い匂いが立ち込んだと思うと、父さん、母さんが口から血を吐き倒れていた。家は壊され、人々の悲鳴が聞こえる。明るく、賑やかだった街は一瞬にして死の街へと変わっていった。
そんな街には俺と顔も覚えていない、一人の少女が取り残されていた。
「侵攻だー!みんな逃げろーー!」
誰かがそんなことを言ったのが聞こえた。
俺はその女の子の手を引いて思いっきり走った。
周りに大人は誰もいなかった。いつのまにか女の子も消えていた。
ひとりぼっちになり、急に心細くなった。すると、体が重くなってその場から動くことすらできなくなって立ち尽くすことしかできずにいた。
そして……見つかったのだ。奴らに。
背筋が凍り、吐き気まで感じるほどの恐怖。それを体感したのだ。助けを求めようとしても声が出なければ、逃げようとしても足が動かない。
死ぬ。
当時、6歳だった少年でもわかった。もはや諦めるしかなかった。
そうだ…このあと俺は殺された。握り潰されて、死んだはずなのだ。
同時に、何か黒いモヤのようなものが、足元から立ち込めてきた。
抑えきれない何か、抑えてきた何かだ。
ただ、なすすべもなく全身が漆黒に染まっていく。意識は半端朦朧としており。周りの音もだんだんと聞こえなくなってきた。
「お兄ちゃん!」
その言葉が聞こえた。間違いなくそう聞こえた。
意識はそこで途絶えていた。
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