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第1章
初模擬戦part.1
しおりを挟む「11番か……」
俺たちは先生に言われるまま、演習場なる巨大施設に来ていた。
模擬戦の内容は1対1のタイマン。
1から20までに区分けされた50メートル四方のフィールドに、事前に行ったくじ引きで同じ番号だった人と収容され、それが今回模擬戦の対戦相手……。
殴り合いでも剣術でも個性全開でも、殺さなければ良いという……かなりシンプルな内容だった。
よく言えば自由がきくし悪く言えば大雑把。
もはやこれ、ただ単に先生が模擬戦やりたかっただけなんじゃないかと、とても親睦とは言えない内容に教室内の一同は一度は騒然しガヤガヤと騒ぎ立てた。
しかし、新入生といえど、もともと軍所属のための学院だ。
各々、それ相応の覚悟はできているようで、戦いという言葉に何ら否定的な意見を出すものはいなかった。
もちろんそれは俺も同様で、少しめんどくさいなとは思ったものの、指定されていた場所へ移動する。
そこににいたのは、さっきに逃げ出された銀髪の少女だった。
「えっと……君が俺の対戦相手」
「そうみたいですね」
彼女はこちらをちらりと見ると、ただそれだけを答えた。
「結城司だ。よろしく」
「……真嶋千里です」
「親睦なので、やっぱり最初は名前を言い合いましょう」とまあ、そんなことを先生が言っていたので、とりあえずこのくらいやればよかろう。
「ええっと真嶋さん?」
「…………」
真嶋さんは気づかないふりなのか、明後日の方を向いている。
「あれ?………真嶋さんであってるよね?」
「千里です。真嶋はやめてください。嫌なら腹パンします」
「じゃあ、千里さん」
「やっぱり顔面の方が良かったりしますか?」
「ち、千里」
「はい、なんですか?」
満面の笑みを浮かべ、真嶋さ……千里はそう答えた。
「さっきはどうしたの?何か変なことでもしちゃったのかと思って」
「あー……すみません。あの時は気が動転してて、なんでもないです、もし気を遣わせてしまったのであればごめんなさい」
少し、嘘くさい感じがした。
「どちらにせよここで会うことになったし、こうなるのも運命だったってことなのかな」
「ううううう運命って、そんな突然プロポーズさせれても、困りますってば。いや待ってくださいこれは罠です。今のうちに喜ばせておけば油断してくれるだろうとかそういう系のやつですか!?」
こちらを無視して一人自分の世界に入ると、顔を真っ赤にし、うっとりとした表情で手をバタバタさせる千里。
「え、えーっと、千里?」
「はっ、ごめんなさい」
「対戦形式は自由に決めていいんだよね。俺たちはどうする?」
俺の言葉に対して彼女は「えっと、そうですね」とだけ言うと、腰についていた剣を地面に落とした。
「やっぱりやるならこれにしましょうよ」
明らかな挑発。目上の人にやれば一発で
殴り合いを求める合図だった。
「いいの?男の俺と素手で勝負なんて」
「ええ、だって私、負けませんから」
まるで自分が勝つということ以外考えていないかのように彼女はその場に悠然と佇んでいる。
「本気でいってもいいんだね?」
「相変わらず優しい人ですね……大丈夫ですよ。全力でお願いします」
この銀髪の少女かなりの自信家なのか、全く物怖じする様子もなくこちらの目を見てそう答えた。
互いに間合いを開ける。
今回深くは規定がないので、自分たちの感覚で5メートル程度の間を開いた。
入学早々で、気の緩みもあった。
他のクラスメイトも準備が整ったのか演習場に数秒の静寂が訪れた、その時。
「では……始め」
先生の声を聞き、俺は個性を発動すると、間合いを一気に詰めた。
「超加速」(オーバードライブ)
それが俺の先天的個性(コアアビリティ)だ。
この世界のに存在する個性は大きく分けて先天的個性と後天的個性(リメインダーアビリティ)の2つに分別される。
前者は、新生児の約1%の確率で生まれる。まさに先天的なもので人によってその特性や効果が全く違うのが特徴。それこそ兄弟や姉妹くらいでないと同じものは滅多に現れない。
後者は、各々A~E段階に分けられた属性適正により習得の有無および威力が変わるのが特徴。
現在見つかってるのは火 水 風 土 雷 の5属性。
ただ、属性に奴らunknownの能力「闇」を含め6属性とする理論もあるので、一概には何とも言えない。
よくあるRPGに出てくる「魔法」とほぼ同じだと思ってくれて構わない。
ちなみにどの属性の後天的個性も適正「E段階」以上で発動させることは可能。ただ、ある程度までは威力を高めることができても、基本的に威力は段階に依存してしまうという点から、各個人最も適正の高い後天的個性を習得するのが一般的。
とてつもない威力の先天的個性を持ち周りを圧倒する者もいれば、多種多様な後天的個性を使い分け、相手を翻弄する者もいる。
ちなみに俺の後天的個性の適性はとういうと……
計測不能。
つまり、後天的個性の習得が理論上不可能とされているF段階の人間だ。
速攻。
軌道を意識しながら彼女の胴を狙い、あとは流れに沿って拳を振るった。
—————バアアアアン
演習場の壁に反響し、大きな音が響く。
軌道、威力共に完璧なはず。
しかし、彼女はその威力を完璧に打ち消し、いとも簡単に片手で受け止めていた。
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