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三話
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「独身でも彼女さんくらい、いるんじゃないですか? 私は出会ったばかりですし、神宮寺さんに助けてもらったのに、これ以上迷惑かけるのは申し訳ないです」
どうせアパートに帰っても待っているのは地獄……。公孝(きみたか)には別れるみたいなメッセージを送っちゃったし。公孝のことだから怒ってるだろうな。次に公孝に会えば殴られるのは目に見えている。
家に帰りたくない。会社にも行きたくない。でも、そんな我儘は許されない。神宮寺さんに助けられた命、ここで無下にするのは神宮寺さんにも申し訳ない。
「彼女はいない。それに俺、童貞だし。三十すぎて童貞だと魔法使いになれるらしいな。って、このネタはお前みたいな若い奴には通じないか」
「わかりますよ。私、神宮寺さんと三歳しか変わりませんから」
神宮寺さん、目元がキツいから強面イケメンって感じで自虐ネタなんて言わなそうなのに……。言うことが面白い。見た目とのギャップで思わず笑ってしまった。
「やっと笑ってくれた。お前、笑うと可愛いじゃん」
「っ……!」
「だから俺のとこに来いよ」
「は、はい」
「いいのか?」
「神宮寺さんこそ私なんかでいいんですか?」
まるで結婚前の言葉みたいだ。そんなことを考えてしまうのは私だけだよね。
私だっていい年齢だ。女性なら大好きな人と結婚してウェディングドレスを着てみたいというのは何歳になっても憧れなはず。私の場合、背中にも大きな傷があるから、そんな儚い夢も夢のまま終わりそうだけど。
「これ以上、お前が不幸になる姿を俺は見ていられない。このまま家に帰ればお前は彼氏に何をされるかわからない。お前はどうしたい?」
「神宮寺さんが迷惑じゃなければ……」
この言い方は駄目だ。何がダメなんだと言語化するのは難しいけれど、私の勘がそう言ってる。神宮寺さんは私と一緒に住んでいいと言っている。あとは私自身の問題だ。神宮寺さんの言う通り、このまま家に帰っても、私の置かれている状況は変わらない。
公孝が変わる機会はいくらでもあった。けれど公孝は変わってくれなかった。なら、私が変わるしかないんだ。
私は私の手で幸せな未来を掴むんだ。私にだって幸せになる権利くらいあるはずだから……。
「不束者ですが、これからお世話になります」
「なんだよ、それ」
私の発言がおかしかったのか神宮寺さんは笑った。神宮寺さんは笑顔さえもカッコいい。口を大きく開かず笑うところも上品だ。
「神宮寺の名前を聞いて驚くかと思ったら、変わらずその態度だもんな。それでこそ俺が助けた女だ」
「え? え?」
神宮寺さんとエレベーターを使って、ビルを出ようとしたところだった。神宮寺さんの言ってることがわからず、私は思わず口をポカンと開けてしまう。
「隼人様。探しましたよ。会議中に抜け出すとは何事ですか」
「わるいわるい。俺には堅苦しい会議は似合わねぇんだよ。んで、会議はどうだった?」
「何事もなく無事に終わりましたよ」
「そりゃあ良かった」
「……」
隼人、様? 目の前には大きくて高そうな車が停まっている。車の種類は詳しくないからパッと名前が出てこない。
「隼人様。隣にいる女性は誰ですか?」
「この子か? 俺の新しい同居人」
「わっ……!」
腰をグイッと掴まれ、神宮寺さんのほうに引き寄せられた。ピッタリと神宮寺さんの距離が縮まる。近くで見るとよりイケメン……じゃなくて!
「神宮寺さん。私にもわかるように説明してください」
「ん? それは車に乗ってからな」
「この車、お金持ちの人しか乗れないイメージなんですけど……」
「ロールスロイスって別に金持ちじゃなくても乗れるぞ。ほら、手」
「は、はい」
ロールスロイス!? 神宮寺さんって実はお金持ち? 秘書さん? お付きの人? に隼人様って呼ばれてるし……。
「さっそく本題に入るが、俺の正体について知りたいんだろ?」
「そうです」
一緒に住むとは承諾したものの、私は神宮寺さんのことは何も知らない。神宮寺という名字を聞いて私が驚かなかったと言っていたのも気になる。
神宮寺さんがわざわざそれを言うってことはそれなりにいいとこのお坊ちゃまってことだよね?
どうせアパートに帰っても待っているのは地獄……。公孝(きみたか)には別れるみたいなメッセージを送っちゃったし。公孝のことだから怒ってるだろうな。次に公孝に会えば殴られるのは目に見えている。
家に帰りたくない。会社にも行きたくない。でも、そんな我儘は許されない。神宮寺さんに助けられた命、ここで無下にするのは神宮寺さんにも申し訳ない。
「彼女はいない。それに俺、童貞だし。三十すぎて童貞だと魔法使いになれるらしいな。って、このネタはお前みたいな若い奴には通じないか」
「わかりますよ。私、神宮寺さんと三歳しか変わりませんから」
神宮寺さん、目元がキツいから強面イケメンって感じで自虐ネタなんて言わなそうなのに……。言うことが面白い。見た目とのギャップで思わず笑ってしまった。
「やっと笑ってくれた。お前、笑うと可愛いじゃん」
「っ……!」
「だから俺のとこに来いよ」
「は、はい」
「いいのか?」
「神宮寺さんこそ私なんかでいいんですか?」
まるで結婚前の言葉みたいだ。そんなことを考えてしまうのは私だけだよね。
私だっていい年齢だ。女性なら大好きな人と結婚してウェディングドレスを着てみたいというのは何歳になっても憧れなはず。私の場合、背中にも大きな傷があるから、そんな儚い夢も夢のまま終わりそうだけど。
「これ以上、お前が不幸になる姿を俺は見ていられない。このまま家に帰ればお前は彼氏に何をされるかわからない。お前はどうしたい?」
「神宮寺さんが迷惑じゃなければ……」
この言い方は駄目だ。何がダメなんだと言語化するのは難しいけれど、私の勘がそう言ってる。神宮寺さんは私と一緒に住んでいいと言っている。あとは私自身の問題だ。神宮寺さんの言う通り、このまま家に帰っても、私の置かれている状況は変わらない。
公孝が変わる機会はいくらでもあった。けれど公孝は変わってくれなかった。なら、私が変わるしかないんだ。
私は私の手で幸せな未来を掴むんだ。私にだって幸せになる権利くらいあるはずだから……。
「不束者ですが、これからお世話になります」
「なんだよ、それ」
私の発言がおかしかったのか神宮寺さんは笑った。神宮寺さんは笑顔さえもカッコいい。口を大きく開かず笑うところも上品だ。
「神宮寺の名前を聞いて驚くかと思ったら、変わらずその態度だもんな。それでこそ俺が助けた女だ」
「え? え?」
神宮寺さんとエレベーターを使って、ビルを出ようとしたところだった。神宮寺さんの言ってることがわからず、私は思わず口をポカンと開けてしまう。
「隼人様。探しましたよ。会議中に抜け出すとは何事ですか」
「わるいわるい。俺には堅苦しい会議は似合わねぇんだよ。んで、会議はどうだった?」
「何事もなく無事に終わりましたよ」
「そりゃあ良かった」
「……」
隼人、様? 目の前には大きくて高そうな車が停まっている。車の種類は詳しくないからパッと名前が出てこない。
「隼人様。隣にいる女性は誰ですか?」
「この子か? 俺の新しい同居人」
「わっ……!」
腰をグイッと掴まれ、神宮寺さんのほうに引き寄せられた。ピッタリと神宮寺さんの距離が縮まる。近くで見るとよりイケメン……じゃなくて!
「神宮寺さん。私にもわかるように説明してください」
「ん? それは車に乗ってからな」
「この車、お金持ちの人しか乗れないイメージなんですけど……」
「ロールスロイスって別に金持ちじゃなくても乗れるぞ。ほら、手」
「は、はい」
ロールスロイス!? 神宮寺さんって実はお金持ち? 秘書さん? お付きの人? に隼人様って呼ばれてるし……。
「さっそく本題に入るが、俺の正体について知りたいんだろ?」
「そうです」
一緒に住むとは承諾したものの、私は神宮寺さんのことは何も知らない。神宮寺という名字を聞いて私が驚かなかったと言っていたのも気になる。
神宮寺さんがわざわざそれを言うってことはそれなりにいいとこのお坊ちゃまってことだよね?
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