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二章

28話 新人アルバイトはまたも知り合いで

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『ねぇ、✕✕はさ。夢とかってないの?』

『俺か?そうだな……俺は魔族とか天使とか種族関係なく平和に暮らせる世界を作ること、かな』

『そんなこと本当に出来るの?』

『出来るさ。✕✕と俺が一緒なら』


「……っ」

ふと目を開けると、そこはいつもの天井だった。さっきの二人は誰だったんだ?

夢にしてはやたらリアルすぎて他人事とは思えない、そんな感じがした。

「龍幻、おはよう」

「ルリエ、おはよう。もしかして、俺ってあのあと寝たのか!?」

「うん、そうだよ。龍幻、なんだか疲れてるみたいだったし」

「そうなのか……」

無理もない、か。ルリエにはまだ話していないが、俺は魔導書に体力を持っていかれたって如月先輩に言われてたしな。

今でも信じられないが、俺は大魔法で魔族と戦ったんだよな……。

「夕方まで寝るなんてやっぱりバイト疲れだよね。ごめんね、私が……」

「もう謝らなくていいから。って、夕方!?」

「え?そ、そうだけど、どうしたの?」

「バイト!バイトに遅れる!ルリエ、とりあえず行ってくる!!」

「い、行ってらっしゃい」

まさか、そんなに長い時間寝てたなんて気付かなかった。俺は秒で着替えを済ませるとバタバタと家を出た。

(遅刻する!!!!)

猛ダッシュで走り、バイト先へと向かった。

「店長。遅れてすみませんでした!」

「白銀君、大丈夫かい?そんなに慌てなくても遅刻してないから大丈夫だよ。とりあえず息を整えようね」

「あ、はい」

時間を見ると、余裕とまではいかないがどうやら間に合ったようだ。

「あ、落ち着いてからでいいんだけど今日から新しいバイトの子が入ってね?」

「そうなんですか」

「白銀君と同じ大学で、しかも君のことを知っているようだったよ」

「それって……」

「龍幻、こないだぶりだな!元気してたか?」

「導!!」

よっ。と、手を俺に向けて振る。その姿は俺のよく知っている友人、導だった。

「実は欲しいアニメグッズがあってな。でも、わりと高額なんだ。んで、バイトを始めたってわけ。だけどまさか龍幻が働いてたバイト先だったなんて知らなかったよ。お前、働いてる場所とか全然言ってくれないし」

「それは悪かった。こっちも驚いたよ、導が俺と同じバイト先なんて」

「新人の子は白銀君の友人だったんだね。いやぁ~、それなら話は早い。あとは白銀君に任せてもいいかい?僕は奥で仕事があるから」

「わかりました。導のことは任せてください」

店長は俺に導を任せると奥の方へ入って行った。

「龍幻って年上に敬語とか使えるんだな、なんか意外」

「失礼だな。俺だって敬語くらい……この前だって一つ年上の先輩に敬語で話したんだぞ」

「先輩?龍幻ってサークルとか入ってたっけ?」

「いや、ちょっとした知り合いらしい。……俺は覚えてないんだけど」

「なんだよ、覚えてないって」

俺が変なことを言うもんだから導に笑われてしまった。どうやらツボに入ったらしく、腹を抱えている。

「龍幻ってたまにだけど面白いこと言うよな!ほんと一緒にいて飽きないっていうかさ」

「たまには余計だ。ほら、一通りの挨拶とか接客を教えてやるからこっち来い」

「はーい。なぁ、龍幻」

「ん?どうした?」

「あれから神崎紅先生について聞いてみたんだけどさ」

「あ、ああ……」

そうか、導はまだ知らないんだったな。神崎紅が如月先輩だって。そもそも如月先輩と導は会ったことすらないんじゃないか?

って、大学は学生の数も多いし、特定の誰かに会うには待ち合わせでもしてないと無理だよな。

「どうやら神崎紅先生は文芸部サークルに入ってるらしい!」

「そうなのか」

作家で文芸部ってイメージ通りといえばイメージ通りだな。だけど、サークルに入ってるイメージは如月先輩にはなかったな。

勝手な想像だが、人と群れるのが嫌いそうな、一人が好きそうな感じだったから。

「サークルまで分かればあとはサークルにお邪魔して特徴と一致する人物を探せば完璧だな!」

「だが、今は冬休み期間だぞ。運動部とは違って毎日の活動をしてるとは思わないが……」

「そこはまぁなんとかなるだろ!」

「適当かよ」

時々ではあるが、導の大雑把な性格はまわりの人を巻き込むくせがある。

「ってことで明後日の昼に大学に集合な!」

「明後日って、明日は何か用事でもあるのか?」

「明日はお前の家に行く。ルリエちゃんに会わせてくれるんだろ?」

「そんな急に決められても困るんだが……」

「機会があれば会わせてくれるって言っただろ?ってことで明日はお前の家に行くからな!」

「!?」

そう、こうやって導の思いつきは時に友人が被害にあうことも度々あるのだ。

そして、厄介なことに導は俺の都合が空いてる日を狙って誘ってくるので更にたちが悪い。

「約束だからな!!」

「あぁ、わかったよ」

約束というか強制的なんだよな、これって。だが、友人と遊ぶのはそれなりに楽しいから断れない俺もいるわけで……。

今日帰ったらルリエに口裏を合わせるように言っておかないと。

俺は導にバイトのマニュアルを教えると、自分の仕事に戻った。

導はロリコンだし、今からルリエが心配だ。不安を抱えながらのバイトは案の定、ミスの連続だった。
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