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一章
五話
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「あの、少しお尋ねしたいことが……」
「なんだい? こっちは子供に構ってる暇なんか……って、うわぁぁぁぁ!!」
「「!?」」
「なんで呪いの少女が病室から出てんだよ! 暴言を吐いちまったから俺も呪うのか!? お前はどれだけの人を食べれば気が済むんだよ!!!」
僕の後ろにいる彼女を見るなり、男性は叫びながら一目散にその場を離れる。
この世界に飛ばされたばかりの僕たちには訳がわからなかった。
呪いの少女……たしかに彼女は呪いをかけられている。だが、そんな名前で呼ばれたことは一度もない。第一、彼女の話をまともに聞き入れる人はいなかった。だから、まわりが魔法を信じることはなかった。
僕も魔法が使える身として、自分の存在価値がないと言われているようで悲しい。
だからといって、悪い魔法使いがした行動を許すことはできない。
「……」
「少し、先を急ごうか」
彼女が下を俯いてしまった。きっと自分のことを言われているようで悲しかったに違いない。
彼女を笑顔にしたいといった矢先にこれだ。
なんでもいい、早く試練のヒントを探さないと。
それから、すれ違う人に話を聞こうとするも結果は失敗。
彼女を見ると、皆、最初の男性と同じ反応をした。
そんなに似ているのか。彼女と呪いの少女が。
手かがり……そういえば、病室という単語を聞いた気がする。どうして忘れていたんだろう。
呪いの少女に会えば、なにかわかるかもしれない。
どっちが不幸だとか、そんなことを比べるつもりはないが、彼女と呪いの少女の境遇が少し似ていると感じた。
どうしよう。病院は探せばいくらでもあるし、そもそも呪いの少女がどの病院にいるのかすらわからない。
また……振り出しに戻る?
「……」
「悠、どうしたの?」
グイグイと僕の服を引っ張った。僕はハッと我に戻る。
「……」
あの病院、あそこにいると思う。
彼女は遠くを指さす。僕には病院はまだ見えない。
「道なりに真っすぐでいい?」
「……」
彼女は頷いた。どうやら正解だったみたい。
何故、彼女にはわかるんだろう。でも、彼女がいうのなら間違いない。
彼女の言葉を信じよう。当然、今までも疑ったことはないけど。
知らない世界にいきなり飛ばされたのに、彼女は強い。頼りない僕と違って。
歩く。ひたすら歩いた。目的地まで足を休めることなく。
「悠。ここでいいんだよね?」
やっとの思いで着いた病院。ここまで来れば僕にもわかる。
正直、何時間かかったのかわからない。
彼女はあんな遠くから、ここが見えてたっていうのかな。
「……」
うん。でもね、私にもわからないの。けど、なんとなくここだって思った。
「……」
この場合、直感が鋭いという言葉だけで済ませることは出来ないけれど、今はそうだと自己解決することにしよう。
しかし、もし地震が起こったらすぐにでも壊れそうな病院だな。そんな印象だった。
ギギギ。自動ドアが作動してるのか怪しいくらい怖い音だ。
ゆっくりと完全に開いた扉。僕たちは中へと入っていく。
「あの、ここに僕の友人が入院してて……」
「そうでしたか。でしたら、こちらに名前を」
「……」
しまった。とっさに嘘をついてしまったけど、僕は呪いの少女の名前を知らない。
呪いの少女に会いに来ました! ……きっと、病院を追い出されるに違いない。
「……」
「悠、なにを……」
彼女は出された紙にスラスラと文字を書いていく。
『片桐《かたぎり》雫《しずく》』
「……か、片桐雫様ですね。四階の一番奥の部屋になります。
どうか、無事で帰られて、く、くださいね」
受付の女性は片桐雫という名前を見るや否や、どんどんと顔色が悪くなっていった。
心配はするけど止めはしないんだな。
ということは、片桐雫に会いに来る人は少なからずいるということか。
「さっきも思ったけど、悠はどうして呪いの少女の名前がわかったの?」
「……」
急に頭の中に名前が浮かんできたの。
やっぱり、わからない。それは彼女自身も感じているはず。
ガタンガタン。激しく揺れるエレベーター。整備はしばらくされていないようだ。
急に上下に振動が来た。地震かと思いきや、四階に着いていた。
このエレベーター、心臓に悪すぎる……。
呪いの少女の病室は一番奥。
「ほかには誰も入院してないのかな?」
まわりを見ながら、歩く。ベッドはあるけど、人は誰もいない。
他の階も同じなのだろうか。
というか、今にも崩れそうな病院に入院する患者が大勢いるとは到底思えない。が、呪いの少女はいる。
コンコン。僕は2回ノックをする。
……返事はない。
患者の名前すら書いておらず、呪いの少女が本当にこの部屋なのか不安になってきた。
「……」
ガラッ。彼女が中の返事を待たずに入る。
「ちょ、悠?」
彼女の意外すぎる行動に僕はその場で固まってしまった。
僕が思ってるよりも、彼女は大胆な部分もあるみたい。
「……」
羅鎖宮、何してるの? ほら、いたよ。
ボーっと立ち尽くしている僕の腕を引っ張り、中へと入れる。
「あの、僕と彼女は、その……」
最初にどう挨拶しようとか、どんなことを聞けばいいのか、そんなことをグルグル考えていたら、頭が真っ白になり軽くパニックを起こしてしまう僕。
「初めまして……でいいわよね? 私は片桐《かたぎり》雫《しずく》。
あなた達は……誰?」
「……はる、か?」
そこにいたのは、呪いの少女の呼ばれ、人々から恐れられている。
本名を片桐《かたぎり》雫《しずく》。
その見た目は、彼女と瓜二つだった。
「なんだい? こっちは子供に構ってる暇なんか……って、うわぁぁぁぁ!!」
「「!?」」
「なんで呪いの少女が病室から出てんだよ! 暴言を吐いちまったから俺も呪うのか!? お前はどれだけの人を食べれば気が済むんだよ!!!」
僕の後ろにいる彼女を見るなり、男性は叫びながら一目散にその場を離れる。
この世界に飛ばされたばかりの僕たちには訳がわからなかった。
呪いの少女……たしかに彼女は呪いをかけられている。だが、そんな名前で呼ばれたことは一度もない。第一、彼女の話をまともに聞き入れる人はいなかった。だから、まわりが魔法を信じることはなかった。
僕も魔法が使える身として、自分の存在価値がないと言われているようで悲しい。
だからといって、悪い魔法使いがした行動を許すことはできない。
「……」
「少し、先を急ごうか」
彼女が下を俯いてしまった。きっと自分のことを言われているようで悲しかったに違いない。
彼女を笑顔にしたいといった矢先にこれだ。
なんでもいい、早く試練のヒントを探さないと。
それから、すれ違う人に話を聞こうとするも結果は失敗。
彼女を見ると、皆、最初の男性と同じ反応をした。
そんなに似ているのか。彼女と呪いの少女が。
手かがり……そういえば、病室という単語を聞いた気がする。どうして忘れていたんだろう。
呪いの少女に会えば、なにかわかるかもしれない。
どっちが不幸だとか、そんなことを比べるつもりはないが、彼女と呪いの少女の境遇が少し似ていると感じた。
どうしよう。病院は探せばいくらでもあるし、そもそも呪いの少女がどの病院にいるのかすらわからない。
また……振り出しに戻る?
「……」
「悠、どうしたの?」
グイグイと僕の服を引っ張った。僕はハッと我に戻る。
「……」
あの病院、あそこにいると思う。
彼女は遠くを指さす。僕には病院はまだ見えない。
「道なりに真っすぐでいい?」
「……」
彼女は頷いた。どうやら正解だったみたい。
何故、彼女にはわかるんだろう。でも、彼女がいうのなら間違いない。
彼女の言葉を信じよう。当然、今までも疑ったことはないけど。
知らない世界にいきなり飛ばされたのに、彼女は強い。頼りない僕と違って。
歩く。ひたすら歩いた。目的地まで足を休めることなく。
「悠。ここでいいんだよね?」
やっとの思いで着いた病院。ここまで来れば僕にもわかる。
正直、何時間かかったのかわからない。
彼女はあんな遠くから、ここが見えてたっていうのかな。
「……」
うん。でもね、私にもわからないの。けど、なんとなくここだって思った。
「……」
この場合、直感が鋭いという言葉だけで済ませることは出来ないけれど、今はそうだと自己解決することにしよう。
しかし、もし地震が起こったらすぐにでも壊れそうな病院だな。そんな印象だった。
ギギギ。自動ドアが作動してるのか怪しいくらい怖い音だ。
ゆっくりと完全に開いた扉。僕たちは中へと入っていく。
「あの、ここに僕の友人が入院してて……」
「そうでしたか。でしたら、こちらに名前を」
「……」
しまった。とっさに嘘をついてしまったけど、僕は呪いの少女の名前を知らない。
呪いの少女に会いに来ました! ……きっと、病院を追い出されるに違いない。
「……」
「悠、なにを……」
彼女は出された紙にスラスラと文字を書いていく。
『片桐《かたぎり》雫《しずく》』
「……か、片桐雫様ですね。四階の一番奥の部屋になります。
どうか、無事で帰られて、く、くださいね」
受付の女性は片桐雫という名前を見るや否や、どんどんと顔色が悪くなっていった。
心配はするけど止めはしないんだな。
ということは、片桐雫に会いに来る人は少なからずいるということか。
「さっきも思ったけど、悠はどうして呪いの少女の名前がわかったの?」
「……」
急に頭の中に名前が浮かんできたの。
やっぱり、わからない。それは彼女自身も感じているはず。
ガタンガタン。激しく揺れるエレベーター。整備はしばらくされていないようだ。
急に上下に振動が来た。地震かと思いきや、四階に着いていた。
このエレベーター、心臓に悪すぎる……。
呪いの少女の病室は一番奥。
「ほかには誰も入院してないのかな?」
まわりを見ながら、歩く。ベッドはあるけど、人は誰もいない。
他の階も同じなのだろうか。
というか、今にも崩れそうな病院に入院する患者が大勢いるとは到底思えない。が、呪いの少女はいる。
コンコン。僕は2回ノックをする。
……返事はない。
患者の名前すら書いておらず、呪いの少女が本当にこの部屋なのか不安になってきた。
「……」
ガラッ。彼女が中の返事を待たずに入る。
「ちょ、悠?」
彼女の意外すぎる行動に僕はその場で固まってしまった。
僕が思ってるよりも、彼女は大胆な部分もあるみたい。
「……」
羅鎖宮、何してるの? ほら、いたよ。
ボーっと立ち尽くしている僕の腕を引っ張り、中へと入れる。
「あの、僕と彼女は、その……」
最初にどう挨拶しようとか、どんなことを聞けばいいのか、そんなことをグルグル考えていたら、頭が真っ白になり軽くパニックを起こしてしまう僕。
「初めまして……でいいわよね? 私は片桐《かたぎり》雫《しずく》。
あなた達は……誰?」
「……はる、か?」
そこにいたのは、呪いの少女の呼ばれ、人々から恐れられている。
本名を片桐《かたぎり》雫《しずく》。
その見た目は、彼女と瓜二つだった。
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