上 下
13 / 115
三章 幼馴染からのスタート

13話

しおりを挟む

「高校入って、初めての連休なのに酷くね!?」


「だよねー、私もそう思う!」


放課後。クラスはGW明けにあるテストのことでもちきり。私はクラスの輪には入っていかず、図書室に向かうことにした。


とりあえず静かに勉強出来る場所に行きたい。


「はぁー‥‥赤点取ったらどうしよう」


大量の教科書を持ってブツブツと独り言を言いながら歩いていたその時、ドンッ! と誰かとぶつかった。


「きゃ!?」


思ったよりも可愛い声が出てしまっていた。というより、声が裏返ってた気がする。


あたりには教科書が散らばり、よく見ると難しい文章が書かれた書類? のような物があった。


「貴方は一年の霧姫朱里ですね。怪我はありませんでしたか?」その場で尻もちをついてしまっていた私に差し出された手。上を見上げると、そこには見たことある人物がいた。


「堅物会長さん!?」


「霧姫朱里。‥‥貴方もそのあだ名で呼ぶんですか」


表情には出てないものの、心なしか声が怖い。どうやら怒らせてしまったみたい。集会で男子が言っていた言葉がインプットされていたらしい。


如月紅蓮、生徒会長さんだ。まさか、こんなところで会うなんて。


「す、すみません! 今すぐ拾います!!」


私は慌てて、会長さんの書類をかき集めた。これ、生徒会の仕事だよね、多分。色々難しいことが書いてあって、私にはよくわからない。


「いえ、自分の不注意でした。霧姫朱里、もう一度聞きます。怪我はありませんか」


「え? は、はい!」


意外と紳士的な人だな。でも、さっきからフルネームで呼ばれてることが気になった私は「まさか全校生徒のフルネームと顔が一致してたりしないですよね~」と言いながら軽く笑った。


「‥‥‥‥テスト頑張ってください。それとあまり遅くまで学校に残らないように。貴方に怪我がなくて安心しました。‥‥さようなら」


長い無言のあとに会長さんが発したのは私の怪我の心配だった。やばい、もしかして図星だったの? 軽い冗談で言ったつもりだったんだけど。


この学校はめちゃくちゃ生徒数が多い。そんな中で全校生徒の名前と顔が一致してるとか、会長さんって一体何者‥‥。


「さ、さようなら」


堅物会長なんてあだ名で呼ばれてるから、冷酷なイメージがあったけど、普通に優しい人だった。


でも、会長から頑張れなんて応援されると逆にプレッシャーが‥‥。


ますます勉強を頑張ろうと思った私は図書室に足を進めた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,627pt お気に入り:139

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,022pt お気に入り:139

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,679pt お気に入り:307

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:584

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,435pt お気に入り:4,187

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,205pt お気に入り:93

処理中です...