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六章 夏、はじまります!

34話

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「手当てといったものの、怪我ではなく足をつったんですね。
それなら、足のマッサージをします。少し痛いかもしれませんが我慢してください」

「は、はい……」

日陰にすとんと静かにおろされて、私の足の様子を見てくれる会長さん。
痛いと言われて身構えていたけど全然痛くない。

近くで見ると、まつ毛が長くて整った顔立ちはまるでモデルさんみたい。
でも、やっぱり笑わないんだなぁ。黒炎くん以外の男の子と2人きりなんてなったことがないから緊張する。しかも、それが会長さんなら尚更。

黒炎くんは普段は子供っぽいけど、会長さんは落ち着いてるし大人って感じ。
私や黒炎くんも高校3年になったらこんなふうになれるのかな。

かたくて、大きな手。やっぱり会長さんも1人の男の子なんだよね。そう思うとドキドキはするけど黒炎くんといるときよりも安心するのは何故だろう。

それはきっと会長さんに恋をしていないから。

「終わりました。ですが、海に入るときに1人なのは感心しません。
霧姫朱里、自分は貴方の飲み物を買ってきますから少し待っていてください」

「うっ、すみません。……わかりました」

会長さんの言うことが正論すぎてなにも言えない。

それから数分して会長さんがスポーツ飲料を私にくれた。

「スポーツ飲料は脱水症状の回復が出来る飲み物ですから今の貴方に最適かと思います」

「え、それはどうして?」

「足がつるのは脱水症状も大きく関係しているのを知らなかったんですか」

「今、知りました。会長さん、ここまでお世話してくれてありがとうございます、本当に助かりました。会長さんが助けに来てくれなかったら今頃……」

会長さんがさっきから難しいことばかり言ってきて半分くらい言ってることがわからなかったけど、感謝の気持ちは伝えなくちゃと私はお礼を言った。

「生徒会長として当然の行動ですからお礼は不要です。
それに貴方を最初に助けにくるべきは……」

会長さんが曇った表情を見せる。それは誰のことを話しているのか私にはすぐにわかった。

「もしかしなくても黒炎くんのこと、ですよね? 私たち付き合ってるわけじゃないから、さすがにそこまでは申し訳ないというか」

「それは関係ありません。幼馴染が危険なのに助けに来ないのはいけないと言っているんです」

「でも、黒炎くんにも何か理由があったんじゃないかって」

「手遅れになってからじゃ遅いんですよ。離れてから、相手の有り難みがわかったところでそれはなんの意味にもならないんですから」

会長さんの言葉がやたらリアルに聞こえた。まるで自分が体験しているみたいに。

「柊黒炎には今一度注意しておきますから。次は大丈夫です」

「ひいらぎ……」

黒炎くんの名字が変わっていないことに気付いた。

「あの、会長さん。黒炎くんのこと何か知ってるんですか!? 知ってたら教えてください! 黒炎くんから最近はいつも会長さんの話を聞くんです。それって少なくとも友人ってことですよね!?」
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