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十一章 困難の先に待っているもの
94話
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「お願いします! 柊黒炎くんを転校させないように署名をお願いします!」
翌日から私は黒炎くんの署名活動を行った。早朝から学校に来て、校門で生徒一人一人に声をかけている。中には、変な人という眼差しを向けたり、こちらを指さしながらヒソヒソ話を始める人もいた。
そりゃあ、これだけの人数がいたらそう思われても仕方ない。だけど、一刻を争う状況で嫌だと思う暇はない。私は陰口を言っている人にも声をかける。
「どうかお願いします!」
「なんで私たちが? 署名なんだから強制じゃないでしょ」
「それは、そうなんですけど……」
ネクタイの色を見る限り先輩のようだった。しかも、女の先輩が複数人。うっ、なんというか怖い。相手が年上ということもあり、変に緊張してしまう。でも、ここで怯んだら全てが水の泡だ。黒炎くんと一生会えないなんて、死んでもいやだ。
「って、黒炎君の署名なの? なら早く言いなさいよ」
「え?」
署名の紙をパシッ! と取られた。サラサラと名前を書き、私に渡す先輩たち。
「私たちは話す機会はなかったけど、黒炎君のファンクラブ会員なの。あんなにイケメンな後輩が学校を辞めるなんて嫌だもの」
「先輩……ありがとうございます!」
私は何度も深深とお辞儀をした。
あぁ、黒炎くんのことなのに自分のことのように嬉しい。紅炎さんはああ言ってたけど、柊家なんか関係なく、黒炎くんは黒炎くん自身として必要とされてるんだ。
非公認とはいえ、生徒の中には黒炎くんのファンクラブの人もいる。
これは思ったよりも時間かからないんじゃない? と、この時の私は本当に甘い考えをしていたと今になって思う。
上手くいったのは初日だけだった。それ以降、声をかけても無視をされ、署名の紙すら受け取ってはもらえなかった。そう世の中、簡単にはいかない。これが現実だと今になって思い知らされた。
一部では、黒炎くんが柊グループの子供ではないかという噂まで流れ始めた。私は黒炎くんが隣にいないことで卑屈になり、落ち込み始めた。
頑張ろうって決めたのに……会えないことでこんなにも弱くなってしまうなんて。私は黒炎くんがいないと駄目なんだ。
けれども、毎日のように署名活動は行った。だけど、なかなか思うようには行かず、残り一週間となってしまった。
「うぅ……」
正直、泣きそうだった。朝だけじゃなく、昼休みも放課後も署名活動をしてみたけれど、一人だとやっぱり影響力はないようで。誰も手伝ってはくれない、そう諦めかけていたとき。
「その紙を一枚貸してください」
「え、かい……」
目の前にいたのは会長だった。今は受験勉強で忙しいはずじゃ……どうして、ここに。
「泣くのはまだ早いですよ。諦めるなんて貴方らしくもない。……どうして頼らないんですか」
「だって、一人で……それに会長も忙しいと思って」
放課後。私は校門近くで泣いた。一人で心細かったんだ。こんな場所で泣くなんて、みんなに見られるのに今は泣かずにはいられない。
会長の優しさに触れ、涙は一向に止まらない。
翌日から私は黒炎くんの署名活動を行った。早朝から学校に来て、校門で生徒一人一人に声をかけている。中には、変な人という眼差しを向けたり、こちらを指さしながらヒソヒソ話を始める人もいた。
そりゃあ、これだけの人数がいたらそう思われても仕方ない。だけど、一刻を争う状況で嫌だと思う暇はない。私は陰口を言っている人にも声をかける。
「どうかお願いします!」
「なんで私たちが? 署名なんだから強制じゃないでしょ」
「それは、そうなんですけど……」
ネクタイの色を見る限り先輩のようだった。しかも、女の先輩が複数人。うっ、なんというか怖い。相手が年上ということもあり、変に緊張してしまう。でも、ここで怯んだら全てが水の泡だ。黒炎くんと一生会えないなんて、死んでもいやだ。
「って、黒炎君の署名なの? なら早く言いなさいよ」
「え?」
署名の紙をパシッ! と取られた。サラサラと名前を書き、私に渡す先輩たち。
「私たちは話す機会はなかったけど、黒炎君のファンクラブ会員なの。あんなにイケメンな後輩が学校を辞めるなんて嫌だもの」
「先輩……ありがとうございます!」
私は何度も深深とお辞儀をした。
あぁ、黒炎くんのことなのに自分のことのように嬉しい。紅炎さんはああ言ってたけど、柊家なんか関係なく、黒炎くんは黒炎くん自身として必要とされてるんだ。
非公認とはいえ、生徒の中には黒炎くんのファンクラブの人もいる。
これは思ったよりも時間かからないんじゃない? と、この時の私は本当に甘い考えをしていたと今になって思う。
上手くいったのは初日だけだった。それ以降、声をかけても無視をされ、署名の紙すら受け取ってはもらえなかった。そう世の中、簡単にはいかない。これが現実だと今になって思い知らされた。
一部では、黒炎くんが柊グループの子供ではないかという噂まで流れ始めた。私は黒炎くんが隣にいないことで卑屈になり、落ち込み始めた。
頑張ろうって決めたのに……会えないことでこんなにも弱くなってしまうなんて。私は黒炎くんがいないと駄目なんだ。
けれども、毎日のように署名活動は行った。だけど、なかなか思うようには行かず、残り一週間となってしまった。
「うぅ……」
正直、泣きそうだった。朝だけじゃなく、昼休みも放課後も署名活動をしてみたけれど、一人だとやっぱり影響力はないようで。誰も手伝ってはくれない、そう諦めかけていたとき。
「その紙を一枚貸してください」
「え、かい……」
目の前にいたのは会長だった。今は受験勉強で忙しいはずじゃ……どうして、ここに。
「泣くのはまだ早いですよ。諦めるなんて貴方らしくもない。……どうして頼らないんですか」
「だって、一人で……それに会長も忙しいと思って」
放課後。私は校門近くで泣いた。一人で心細かったんだ。こんな場所で泣くなんて、みんなに見られるのに今は泣かずにはいられない。
会長の優しさに触れ、涙は一向に止まらない。
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