殺し屋JD、時給1,000万円 厄災ハントする

ぺぺ

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第一章

玉子サンドとクリームソーダ

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三半規管の訓練だと、父に掴まれぶんぶん振り回されていた頃以来よろけるなんて久方ぶりだったので、咄嗟にあったソファーに腰掛けると、そこは道路ではなく古びた喫茶店で、脱衣麻雀のテーブルの向かいに老紳士が座っている。

「何かご注文なさいますか?ご遠慮なさらずに」

聞かれるとほぼ同時にグーっとお腹が鳴った。

「軽食もありますよ、サンドウィッチも焼きそばも、ナポリタンもありますよ」

こちらはまだ何のことやら状況が掴めていないのに、さも当然の事として話が進んでゆく。

「じゃあたまごサンドで…」

側から見たら、ついさっきのオールバック店長と同じ顔をしていただろう私ではなく、空腹が注文をさせたのだと思う。

「ここのサンドウィッチは美味しいですよ」

私が注文をしたのがよほど嬉しかったのか、老紳士の声のトーンが更に明るくなった。

「先にたまごサンドを一つ、私はコーヒーで、雫さんは何を飲まれますか?」

老紳士の語り口に違和がなく、何で私の名前を知ってるのかという事よりも、メニューの写真を見たままに、話の流れで注文をした。

「クリームソーダを…」

と、言った後、値段を見ずに注文をしてしまった事を後悔したが、そんな事は歯牙にも掛けず、ジューッと玉子の焼ける音が香り、老紳士は話を続ける。

「たまごサンドは、注文を受けてから玉子を焼いて挟んでくれるんですよ。中々手が込んでるでしょう?」

まるで我が事の様に得意げに語る老紳士の言葉を遮らぬ配慮とともに、コーヒーとクリームソーダが運ばれてきた。

「来ました来ました、どうぞお召し上がり下さい」

いやいやいや、

そもそも、そもそもである、

ここは何処なのか?貴方は誰なのか?道路にいたんじゃないのか?何で喫茶店なのか?どうなってここにいるのか?何で私の名前を知っているのか?

全てがわからない。

「まぁまぁ、ともあれ飲みましょう、美味しそうですね」

サッパリわからん事だらけだが、老紳士の言葉には不思議な懐かしさみたいなものがあり、親戚でお菓子を勧められたみたいな感覚で、何が何だかさっぱり分からないのを差し置いて、老紳士がコーヒーカップを口にするのに合わせた一吸いめのクリームソーダは、空腹だったせいもあり沁み渡る程美味かった。
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