あなたは前に出ないでっていってるでしょう⁉

かきくけこ

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混迷の戦場

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 散りかけたケッケとアイーが慌てて戻ってくる。ゴーダ―の有様に呆れながらまくし立てた。
「ど、どうする?」
「いや、今までと同じく隠れて遭遇しないように……」
「さすがに逃げてたと思われないかしら? それに、10軍も名指しされてるわ」
 自分たちは落ちこぼれ、種族主義の批判を逸らすためだけにいるだけで他隊との連携はないと反論しようとしたゴーダ―だが、自慢にもならないと気づき取りやめる。
「それじゃあ……合流するのか?」
 ナンイが隠れながら声をあげた。
「隊長、これって絶対に軍と名家の奴らの武功目的だぜ!」
 ゴーダ―は苦い顔をせざるを得ない、それはわかりきったことであるが、反対の余地がないのも事実である。
 学生と言えど本部の命令は絶対、背けば当然マイルズとは『別口』の反乱者だ。
 どうやらケッケはそこまで考えが至らないらしく、本軍と合流すれば全てが好転すると思っているようだった。アイーはそれに心底同意はしていないものの、隊長の意見であるので表立って反論はできず、ゴーダ―に『それ』を期待していた。
 サイレの膝の弾力を頭に感じつつ、ゴーダ―は挟まれた自身を呪うのだった。演習がここまで混迷に包まれるとは予想できるはずもない。
 何よりも、彼ら全員を無事に本国に送り届ける。見捨てさえすればほぼすべての問題が片付く選択肢を使えぬ己を呪うのだった。
 好むものも好まざるものも、己でその命の価値を付けることが彼には不可能なのだ。
 土小人が叫びながら駆け寄ってくる。
「『大将』‼ 敵兵が来てるう‼」
「ああ、もう……合体だ!」
「『甲殻羽邪神・トリントルング』‼」
3匹が合体し巨人と化した。膝をつくと、胸が広がり空洞が現れる。
 ゴーダ―はサイレから起き上がり、隊員たちに指示を出した。
「全員中に避難‼ 聞かないなら知らないぞ‼」
 タイトンは頷き、ハールーイと共にさっそく年少の隊員を誘導していった。
 ケッケはアイーに促され、青くなりながら隊員たちを巨人へと向かわせた。ゴーダ―が責任をとってくれるのかと目で訴えたが、サイレから睨み返されて退散する。
 はしゃいだナンイとフウがやってくる。
「中に乗れるのか?」
「あんたはどうするの『大将』?」
「お前たちはこっちに乗せてやるから、騒いだり暴れたりはするなよ?」
 ゴーダ―が手を合わせると、新たなる5匹の巨獣が出現した。『集いの輝』による召喚である。
 3匹とは違い、いずれもが水棲生物であった。
鮫、ふぐ、タコ、イカ、ウツボ、巨大であるだけでなく、その種とは微妙に細部が異なっており、既存の生物とは断定できなかった。地上に備えてか、水棲人と同じく粘液で体を覆っている。
 ナンイは親しみを覚えてふぐにちょっかいをかけて、身体を膨らませて威嚇されていた。
 尖った鼻先を持つ鮫がゴーダ―の元へ這ってくる。
「お呼びかや?」
 独特の訛りにナンイは懐かしさを思い出す。故郷では老人たちがこの訛りを使い、若者は前時代的と嗤っていたものだった。
 他の水生生物も同様の訛りをもって騒ぎ出す。
「お久」
「放っておいてくれやってえ」
「いっつもそうなあ」
「緊急事態だ、合体してくれ。『混成青流帝・サムルノデッサ』!」
「人使い荒いんだもんね」
 口々に文句を言いながら、5匹は合体した。
 頭部は鮫、胴体はふぐ、イカが下半身で、両腕にタコとウツボが備わった水棲巨人が誕生した。
 3匹の巨人と比較するとより巨体な半面、生物感に乏しく水生生物を『模して』はいるものの、鎧のように見えた。
「『混成青流帝・サムルノデッサ』見参! ぶっ潰したるで!」
「中に入れてくれ」
 『サムルノデッサ』は求めに応じて、膝をつき胸を開けゴーダ―らを体内へ収納した。
 
 一行は柔らかでゆったりとした、生臭い空間に包まれていた。
 ナンイとフウが歓声をあげたのは、そこにあって外の光景が四方八方から見えたからだ。高い位置から木々を見下ろし、戦う兵士と『集いの輝』が伺える。
 ゴーダ―は手を握り、気を吐きながら巨人二人に指示を出した。
「こうなったら敵兵を撃退しきるぞ、そうすれば文句も出ないはずだ」
「よっ『大将』」
「9,10,11軍も片付けないとまずいわよ」
「ちょっと、二人ともそんな……」
「任セロ」
「わっちらの力あ、みせたる!」
 巨人二人と何人かの声援と共に、10軍20隊、17軍3隊の連合は進撃を開始した。
 ゴーダ―は一歩ごとの振動に青ざめて、サイレが慌てて逞しい膝を貸した。
「隊長、きっとみんな無事で帰れますよ」
「油断禁物……終わった後もまた―」
 彼を遮るように『集いの輝』での伝波が届いた。
「ザイカンだ。吉報である、本軍に各家々より増援の方々がいらっしゃった、彼らに恥じぬように、本軍は協力、軍学生は従い行動するように」
 ゴーダ―の顔が青を越して紫色に変わっていた。
 もしや、妹も来ているのではなかろうかと。
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