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ヒロの知りあい?

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『私、あの人怖い。』

ギュッとしがみついて呟く。
マティアスさんとくっついていると安心できる。

『さあ、おやじたちの家に帰ろう。』

マティアスさんが促してくれる。

もう、ここには居たくない。
今にもあの人たちが出てきて、マティアスさんと私を引き離してしまいそうで身体が震えるんだもの。

『あの、マスター。
王都に連絡をお願いします。』

あ、コーリーさんの事忘れてた。
まだ、帰れないよね。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




こんな所、さっさと後にしようと思ったら、王都に連絡しなければならない事をコーリーが思い出させた。

仕方ない、と連絡装置で王都に繋ぐ。

怪しい人物を捕らえたが、ジーズー王国の国王を名乗っている事を伝え、至急情報の確認と、今後の対応の指示を仰ぎ、今度こそ建物を後にした。

外に出た途端、重かった空気が心地好い物に変化したような気がする。

コーリーは残務処理の為、まだ残っている。

本当ならば、俺が残るべきなのだが、ヒロの事があるので、任せてしまった。

この一件が済んだら、休暇でもやるか、と思う。


『マティアスさんは大丈夫だよね?』

あの、くそったれ国王が言った言葉を心配しているのだろう。
俺のヒロを不安にさせた罪は重いぞ!!

『心配するな。
俺は大丈夫だからな。』

華奢でやわらかな身体を抱き寄せ、唇にキスをする。

涙の盛り上ったまぶたや、可愛らしい鼻、薔薇色の頬にもキスを落とす。

いじらしい。

とても愛しい、俺の嫁。

最後にもう一度、唇にキスを、、、。





『チ、ヒロ?』

女性の声が、呼び掛けてきた。
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