【完結】男爵令嬢が気にくわないので追放したら、魔族に侵略されました

如月ぐるぐる

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1話

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「今日の訓練はこれで終わろう」

「あ、ありがとう……ございました」

 毎日の日課である訓練が終わり、やっと一息つける。
 朝は魔の森で戦闘訓練、昼はマナーの勉強、夜は学問のお勉強。

 毎日毎日大変だけど、私が根を上げる訳にはいかない。
 我が家は取り潰し寸前とも言われるマイヤー男爵家……その一人娘が私・ジェニファーだ。

 なんとか良い家に嫁いで家を再興しないと!

「お帰りなさい。今日の森はどうだった?」

「ただいまお母さま。いつも通りよ、精々中級魔族がいた程度、訓練には丁度いいわ」

「こらこら、中級魔族と言っても油断はいかんぞ?」

「大丈夫よ。お父様と訓練をしていれば、上級魔族もおいそれと出て来ないわ」

 いつもの会話、いつもの時間。私は両親との時間が大好き。
 でもお父様もお母さまも、きっと優しすぎるんだと思う。

 一人娘だからって、こんなに甘やかされていいのかしら。

 数日後、私はお母さまと王都を訪れた。国王陛下への定期報告のため。
 王都は相変わらずきれいで、人が多い。
 ふふっ、これだけ人がいっぱいいても、私ほど甘やかされてる人は居ないだろうな。


 お城に入り、陛下との謁見の手続きをして入城する。
 待っている間、お母様と城内をお散歩していたら、中庭からにぎやかな声が聞こえた。

「あら、マイヤー男爵夫人じゃありませんこと? お久しぶりね、今日は何の御用かしら?」

「お久しぶりです公爵夫人。本日は陛下との謁見のため、登城とじょういたしました」

 沢山の人が優雅にお茶会をしてる。そろそろお昼だけど、午前の部の休憩?
 いいなぁ、私も頑張ったら、お茶会に参加できるかな。

「あらジェニファー久しぶりね。魔の森のおもりはいいのかしら?」

 公爵令嬢が私の前に出て来た。

「はい、今日も魔の森は変わりなく、平和なものでしたので」

「アハハハ! なに言ってるの? 魔の森なんて小動物もいない、深いだけの森じゃない! 変わりなんてあるはずないでしょ?」

 ……あれ? 小動物は居るし、それどころかマッドベアーがかっ歩してる。
 マッドベアーが小動物ですらないって事? やっぱりみんな凄い! 私ももっと頑張らなくちゃ!

「それに今日の森の事なんて分かるはずないでしょ? 馬でも2日かかるのよ? そんな適当な事ばかり言ってるから、家が無くなりそうになるのよ」

 馬で2日? 何を言ってるんだろう、私はお母さまと今朝家を出発して、さっき到着したのに。

「あの、私達は今朝家をムグ」

 お母様に口を押さえられた。
 なんだろう、あ、口答えしたらダメって事ね? 公爵夫人やその令嬢に反論なんて、男爵家が出来るハズないもん。
 いけないいけない、無礼を働く所だった。

「それではお嬢様方、私たちはそろそろ謁見の時間ですので、これで失礼させていただきます」

「ええ、用事が終わったらサッサと帰るのよ。ジェニファー? アナタはさっさと平民とでも結婚なさい」

 お母様が挨拶をして、私も頭を下げる。
 平民と結婚、かぁ。私の努力なんてまだまだだもんね、出来れば伯爵様とか、可能なら王太子と……。

「ジェニファー? 森の事をあまり口にしてはいけませんよ?」

「はーいお母さま」




「久しぶりだねカタリナ、相変わらずお美しい」

「お久しぶりでございます陛下。陛下も変わらずお元気そうで」

「お久しぶりです陛下!」

「久しぶりだねジェニファー。君もカタリナに似て美しく育ったものだ」

 国王陛下に直接お会いするのは半年振りかな。月一の報告はお父様かお母さまがしているから、私はたまにしか王都に来ていない。
 今日はハインツ王太子はいらっしゃらないのかな。

「それでは報告を聞こう」

 報告は魔の森の魔物の数とその変化、そして周辺諸国の軍事的・政治的動向などで、私も時々お手伝いしている。
 まだないけど、緊急事態の時は、私かお母さまが王城に走る事になってる。

「ジェニファーが来てるって本当!?」

 扉が音を立てて開けられた。

「これハインツ、女性の前ではしたないぞ」

「あ、失礼しました」

「大丈夫ですわハインツ様、報告は一通り終わりました。ジェニファーも、そろそろ暇を持て余しております」

「え? お、お母さま!?」

「ほっほっほ、それではハインツ、ジェニファー嬢とお茶でもどうだ。失礼のないようにな」

「はい! それではジェニファー、お手を」

「ありがとうございます、ハインツ様」

 第一王子ハインツ様。
 この王太子様は私に気を遣って下さる数少ない男性だ。
 はぁ、至福の時間が始まる!

 長くて広い廊下を通り、広いバルコニーに来た。
 ハインツ様にお会いした時は、ここでお茶をする事が多い。

 執事さんが紅茶とお菓子を用意してくれて、いよいよお話をしようとした時。

「ハインツ様! そのような下級貴族と2人でお茶など、王家の恥ですわ!」

 さっきの公爵令嬢が現れた。
 ちょっと!? 私の至福の時間を邪魔しないで!

「さあ、私がお相手しますので、こちらへ」

「いや、私はジェニファーと話をしたいのだ。キミとは頻繁に会っている事だし、今はジェニファーとの時間を楽しませてくれ」

 ハ、ハインツ様……嬉しい。
 公爵令嬢は私を睨みつけ、無言で立ち去って行った。
 幸せな気分でいる私は、公爵令嬢の最大級の恨みを買った事に気づけなかった。
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