無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる

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第二十五話

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 新しい学期が始まりクラス替えが行われました。
 名目としては『クラスごとの学力差を無くすため』と言われていますが、実際には権力の平均化と言われています。
 例えば公爵の令息令嬢がいるクラスといないクラスでは、卒業後のスタートラインが全然違うようです。

 なのでそれを揃えるため、というのが目的でしょう。

「まぁ私には関係ないんですけどね」

「あらシルビア、アナタはすでに辺境伯と直接関係があるのよ? スタートラインは随分と前にあると思うけど」

「それを言うならただの平民だった私が、この学園にいる事自体がおかしいんです」

「……ま、それはいいわ」

 プリメラは少し考えた後で顔を逸らして話もそらします。

「それよりもコレよ! どうしてシルビアが礼儀作法講義の補助員になっているの⁉ ワタクシの付き人を何だと思っているのかしら!」

 そうなのです、連絡が来たのは昨日の事ですが、礼儀作法の講義の補助員として私が指名されました。
 講師の手助けをするだけですが、一応メリットもあります。
 なんと単位が必ずもらえるんです! これは嬉しいですね。

「でも経済学の方は断りましたから、両方とも断るのは流石に気が引けます」

 そう、なぜか専攻していない経済学の方からも補助員の使命がされていました。
 流石にこちらは断りましたが、あの時の講師の落胆した顔といったら……

「まったく、シルビアはワタクシのものなんだから手を出さないで欲しいわ」

 悪魔教徒との問題が解決して以降、プリメラがとても私を甘やかします。
 良き友人というよりも姉妹? いえ姉妹でも腕を組んで街をデートしませんよね?
 リック様とセフィーロ様以外の男性が私に近づこうとすると不機嫌になりますし。

「確かに私はプリメラのものですが、そんな事を言っていないで明日の準備をしませんか?」

「おっとそうだったわね」

 明日はクラス替え直後という事で、クラスごとでオリエンテーションがあるそうです。
 班ごと分かれて学園内で遊ぶだけですが、初対面の人には最初の一言がなかなか話しかけられませんので、強制的に話をさせる事で交流しやすくするのでしょう。

 翌日になり、私とプリメラは指定された教室に向かいます。
 教室の前にはクラスメイト一覧が張り出されており、ここで初めて誰がいるのかを知ることができます。
 とはいえ、自分のクラスは事前にわかりますから、仲の良い者同士はすでに誰と一緒か知っています。

「あらあら、同じクラスになりましたわね私達」

「今年も一年よろしくねリバティ」

 リバティ様とは同じクラスになりました。
 仲の良かった他の方は残念ながら別々になりましたが、一覧表を見て私は驚きました。

「あ、あら? リック様の名前があるわ」

「え? あら本当ね。リックも同じなんて賑やかになりそうね」

 リック様は男子寮なので、お休みの間はほとんどお会いしていません。
 なのでクラスがどこかは知りませんでした。
 そうですか、リック様も一緒なんですね、楽しい一年になりそう。

「へ~、リック君がいるのか。まったく、護衛は俺だけで充分なんだがな」

「お兄様、相変わらず護衛の任を受けたんですね」

 さっきまで居なかったはずのセフィーロ様が背後に立っていました。
 そうなのです、悪魔教との戦いが終わったにもかかわらず、セフィーロ様は引き続き私達の護衛をしているのです。
 ええ、少々賑やかが過ぎる気もしますが、ふふっ、また毎日がお祭りの様に楽しくなるんでしょうね。

 教室に入りしばらくすると講師が入ってきました。
 簡単な挨拶とオリエンテーションの説明がされましたが、残念ながらオリエンテーションのメンバーは学園が決めているようです。

「初めまして、ワタクシはプリメーラ、そして」

「付き人のシルビアです」

「はっ、初めまして! 私はカペラです!」

「付き人のデミオです」

「私はクロノス、そしてコレはキャロルよ」

「初めまして、私はセンティアよ。この子はボンゴ」

「あたしゃファミリア、よろしくな」

「付き人のベリーザと申します」

「初めまして皆さま。私はアテンザ。そしてこの子は」

「ペルソナと申します」 

 主人が六名、付き人六名の計十二名でオリエンテーションを行います。
 と言っても学園内に限られますので、全員女性ならばやる事は一つ。

「いや~助かったよ。今日は寝坊しちゃってね、お茶の用意何で出来なかったんだ」

 オリエンテーションの定番なのでしょう、あちこちにお茶用のテーブルが置かれていたので、芝生の上にあるテーブルをお借りしてお茶会を始めました。
 いきなり砕けた感じで会話を始めたのはファミリア様。付き人のペリーザは出しゃばりませんが、何も言われなくても次々にフォローしています。

 これだけ手際が良いのにお茶の用意を出来なかったなんて、今朝は随分と大変だったんでしょう。

「寝坊だなんて、淑女としてありえません。もっとご自分を律してはいかが?」

 落ち着きながらもきつい物言いの方はクロノス様。付き人のキャロルは何もしゃべりませんが、付き人を『コレ』呼びしていました。

「うっふふふ、個性的でよろしいじゃありませんか。私は他と違う人との会話が大好きですの」

 アテンザ様はとても優雅でお美しい方です。
 それに付き人のペルソナは背が高くスラリとしていてとても目立ちます。

「個性的だけなら構いませんが、それは礼節を守った上でのことですね。お気を付けになって」

 無表情にそう言ったのはセンティア様。
 付き人のボンゴは随分と年下で、たまによそ見をして叱られています。

「ま、気を付けるよ。それよりもさプリメーラ、シルビア、あの騒動はどうなったんだ? 学園襲撃以降は何もなかったけど、裏では何があったんだ?」

 これには皆さん興味があったようで、一斉に私達を見ます。
 そうですね、皆さん大好きですもんね、噂話とか。
 プリメラは待ってましたといわんばかりに笑顔を作ります。

「あの後ね……」

 もちろん全てを話すことは出来ないので、事前に言っていいことを確認してあります。
 簡単に言うとプリメラと私を見かけた犯罪組織が誘拐を企んだ、という内容です。
 あながち間違っていない所が真実味を帯びていますね。

「なるほど、大変だったんだなお前達。あたしゃてっきり他国と戦争でも始まるのかと思っちまったよ」

 どこから戦争が……ああ噂話ですもんね、色々とくっ付いてしまったんでしょう。
 噂、ですよね?
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