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50話

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「お疲れ様です聖女様。本日のお勤めはこれで最後となります」

 最後の訪問客を送り出し、私は自室のソファーに腰を掛けた。
 もう夜も更けて、遅い夕食を部屋に運んでもらう。

「アルバート神官長、ヴァリビネ州の騒動の様子はどうですか?」

「は。元貴族の親族たちが恩赦を求めておりますが、国民や軍は相変わらず処刑を求めており、まだまだ収まる気配がありません」

「そうですか……」

 元ヴァリビネ国で、ツバルアンナの薬による世界征服に賛同した者達は、例外なく処刑する事が決定している。
 最近の訪問者の大半も、ツバルアンナの薬による被害を受けていた国だ。
 噂でしか聞かなかったツバルアンナの薬が実在し、すでにあちこちで猛威を振るっていたんだから、発見・全処分までを行ったこの国、メジェンヌ国へは感謝や友好の品を送ってくる国が多い。

「あまりお気になさらない方が良いでしょう。あの国……州を良くする為には必要な事です」

「わかっては、いるのですが……」

 スープをすくって口に運ぶ。
 温かいスープを飲むと、急激に睡魔に襲われた。
 最近は忙しかったから、全然休めていない。
 今日もお昼は口に流し込んで終わっちゃったし。

 半分目が閉じた状態で食事をしていると、スプーンを落としそうになる。

「わ」

「聖女様、お疲れであれば、少し休まれてから食事を取ってはどうでしょうか」

「ん~……ううん、頂いてから休みます。今休むと、朝まで目が覚めそうに無いから」

 ゆっくりと、アルバート神官長と話をしながら頂いた。



 翌朝はロナウド副団長が神殿に来た。

「アトリア聖女様、おはようございます」

「おはようございますロナウド副団長。今日はお話があると聞きましたが、何かありましたか?」

 いつもならロナウド副団長は、数日前から訪問予定を入れて、こちらの都合を最優先で面会を求めてくる。
 でも今日は緊急という事で、朝から面会を求めてきた。

「ヴァリビネ州の元国王が自害しました」

「……え?」

「元国王及び王妃、第一から第三王子も、時を同じくして自害しました」

「監視は……されていたはずですよね?」

「はい。どうやら自害用の毒を隠し持っていたようです」

「どうして……そんな事を……元王族なら、国民に対して責任を取らなきゃいけないのに」

「プライドだけは高い一族でしたので、大衆の面前での処刑に耐えられなかったのでしょう」

 ツバルアンナの薬を使って世界征服を企んだ一族が……世界の敵ともいえる一族の最後が自害だなんて。
 結局は自分の事しか考えていなかったのかな。

「セルジュにもこの話を?」

「はい、セルジャック王太子にも通してあります。残った王族と貴族の監視、及び、身体検査の徹底を言い渡されました」

 見せしめの意味合いが大きいけど、公開処刑は予定通り行われるみたいだ。
 世界征服を否定はしないけど、薬で洗脳された世界なんてまっぴらごめんだわ。
 
 そして遂に、公開処刑の日がやってきた。
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