【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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58話

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 ロナウド副団長には城に行ってもらい、ヴァルプール国王に報告をしてもらう事にした。
 残りはハロルドを縛り上げて馬車に入れ、御者に命令してメジェンヌ国へと向かわせる。
 私達も馬に乗り、やっと国に帰れる。

「あれ? ねぇ、私の馬は?」

「ん? ああ予備の馬は無いから、お前は俺の後ろに乗るといい」

「お待ちを聖女様。セルジュの馬は乱暴ですので、こちらにお乗りください」

 左右から手を差し出され、私は交互に見比べている。
 あの、私の馬は……。
 この場合は、多少乱暴でも経験の多い方、セルジュの方が良いかな。
 アルバート神官長は馬慣れしてないし、私が乗ると負担が大きいかもしれない。

「今回はセルジュの馬に乗ります。アルバート神官長の後ろには、また次の機会に」

 がっくりと肩を落とす神官長。それに引き換え満面の笑みのセルジュ。
 馬に乗る位で大げさね。

 馬車を先頭にして夜道を走る。
 とても危険だと思うけど、今は少しでも早くメジェンヌ国に戻りたい。

「なぁアトリア」

「なに?」

「やっぱり信用できないか?」

「? なにを?」

「俺を、俺達を、最後には裏切るんじゃないかと、心配になるか?」

 その事か……でも、心配になるのも理解できる。
 だって、私を捨てた人が私を薬で洗脳し、自分の物にしようとした。
 捨てた上に自我を奪うなんて、男性以前に、人間不信になってもおかしくないと思う。
 
 でも。

「私ね、多分人間不信になると思う」

「そう……か」

 セルジュが唇をかみしめる。

「違うの! 皆が、3人が居なかったら、私は人間不信になってたと思うの!」

「俺達が居たから……人間不信にはならなかった、のか?」

「うん。私ね、3人の事が好き。でも、誰が一番好きなのか、わかんない」

 セルジュも、アルバート神官長も、ロナウド副団長も、みんなが居ると、私はとても楽しい。とても落ち着く。
 とても……ドキドキする。
 下らない話をして、真面目な話もして、相談に乗ってくれて、相談してくれて。

「でもゴメン、誰が、って言われても、みんなが好きとしか言えないの」

「それは朗報ですね。ついに聖女様が、私達に気がある事が判明しました」

 並走していたアルバート神官長が、馬を近づかせて話に入ってきた。

「おうよ! 今までは待つ一方だったが、これからはガンガン攻めるぜ!」

「それでいいの? 私を甘やかしすぎてない?」

「甘やかすさ」

「甘やかします」

 そ、それってどうなの?

「お前は甘やかしても調子に乗らない」

「聖女様を甘やかしても、ご自身には厳しくあろうとする」

 買いかぶりすぎ。そんなに出来た人間じゃない。
 2人は、私には勿体ないくらいに出来過ぎた人だ。

「さてアル。今の話はロナウド副団長には秘密だ」

「もちろんだ。ライバルは蹴落とすもの」

「あれ!? 今私、2人の事を凄いって思ったのに、いきなり抜け駆けぇ!?」
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