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愛を誓うならヤドリギの下で 7
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収穫祭当日の朝、まだ肌寒いうちから起き出したルクシウスの気配に気付いたシュカはベッドに横たわったまま目を擦った。
ルクシウスはもう顔を洗ってきたのだろう、髪もいつもどおりに整えられている。
ぼんやりとしていたシュカの意識は、シャツを羽織る寸前のルクシウスの背中を見つけた瞬間に覚醒した。
少しも弛みのない背中はすぐに隠れてしまったが、普段からきっちりとした服装ばかりのルクシウスの素肌を初めて目撃したシュカはうろうろと視線を彷徨わせる。つられて耳の奥に甦るのは昨夜ルクシウスから告げられた言葉だった。
「すまない、起こしてしまったかな」
「っ、お、おはようございます」
「おはよう」
ルクシウスはわざわざベッドまで近付くと、シュカの頬におはようのキスをしてくれた。
まだボタンを留めきっていないせいで開いた襟元からは鎖骨が僅かに覗いていて、至近距離で見てしまったシュカの頬にじわじわと血が上がる。
「まだ寝ていていいんだよ?」
「あ、いえ…僕も起きます」
シュカは毛布を掻き分けてベッドから降り、鞄の中の着替えを引っ張り出した。
ルクシウスと一緒に収穫祭を回れないのは知っていたから一旦家に戻るつもりで簡素な服を選んで詰め込んできたのだが、この時間には少し薄手すぎたかもしれない。しかしこれ以上手持ちの服はないし、歩いて家に帰るのだから身体も少しはあたたまるだろう。
そんなふうに考えていたシュカの肩にやわらかい重さがかかる。
「それでは風邪を引いてしまう」
ルクシウスが着せてくれたのは、シュカの太ももまですっぽりと隠れる丈の長いカーディガンだった。太めの毛糸で模様編みされたカーディガンは品が良く、これは絶対にルクシウスに似合うはずだとシュカは確信する。
「ありがとうございます、ルクシウスさん」
「どういたしまして。大事なシュカに風邪を引かせてしまったら、ご両親からも怒られてしまうしね」
ルクシウスは優しく微笑しながら、シュカには長すぎる袖を折り曲げてくれる。右手が終われば左手も同様に。
子供扱いではあるけれど、甘やかされていることが嬉しくてシュカの頬は勝手に緩んだ。
朝食は手早く済ませられるようにと、昨夜のうちにルクシウスが作っておいたサンドイッチとコーヒーだった。もちろんシュカの分のコーヒーにはミルクと砂糖がたっぷり入れられている。
「お昼過ぎにはお母さんと一緒に図書館に顔を出せると思います」
「そうか、ならその時間は何が何でも図書館から離れないようにするよ」
そんな会話をゆっくりと楽しんでからシュカはルクシウスと一緒に家を出た。
朝の空気には冬の気配が混ざっているのではと思うくらい冷えている。昼になれば汗ばむほどの陽気になるかもしれないがカーディガンを借りて正解だった。
それに動くたびにカーディガンからはジャスミンの香りがして、彼に抱き締められているみたいでドキドキする。素直にそう思ったことを口にすると、ルクシウスはやや目を細めて微笑み、優しくシュカを抱き締めてくれた。
「では、また後でね」
「はいっ、また後で」
図書館に向かう道の前で分かれ、手を振ってルクシウスを見送ったシュカは家までの道を足早に進んだ。
小道を挟むように生えた木々の葉はすっかり色付いて、それだけで足取りは軽くなる。
家に帰ると両親は朝食の最中だった。
「ただいま!」
「あら、おかえりなさい、シュカ。朝ごはんは?」
「ルクシウスさんのところで済ませてきたよ」
僅かに息を弾ませたまま答えると、お茶を飲んでいたイーサンがあからさまに顔を顰めた。父は相変わらずルクシウスのことが苦手らしい。
「お父さんは収穫祭には行かないの?」
「悪いな、急ぎの仕事が入ってるんだ。ミシェーラと楽しんでおいで」
「そっかぁ…お仕事大変だね。何かいいものがあったらお土産にするから」
「ありがとう。シュカはいい子だなぁ」
頬を緩めた父に頭を撫でられたシュカは笑い声を上げ、そんな二人をミシェーラは微笑ましく見つめる。
「ほらほら、そんな調子じゃお仕事が終わらないわよ? シュカも、もう少しあたたかい服に着替えていらっしゃい」
「うん!」
シュカは部屋に飛び込んで衣装タンスの中を覗いた。今日一日だけ貸してもらおうと開き直ってカーディガンと相性の良さそうな中着を探す。
あれでもないこれでもないと散々迷ってから、シュカは少しだけ厚手の白いシャツを選んだ。
「シュカ、準備できた?」
「も、もうちょっと待って!」
急いで着替えて部屋を出ると、髪を緩く纏めた母が柔らかい笑顔を浮かべる。
「その組み合わせ、いいと思うわよ」
ほっとしてはにかんだシュカは指輪を通した革紐を首の後ろで結んだ。
居間の父に声をかけてから家を出ると気温は少しずつ上がりはじめていたが、漂う緩い風はさすがに深まった秋を感じさせる温度だった。
収穫祭のメイン会場である広場に向かう道沿いには趣向を凝らした飾りが点々と置かれている。
カボチャやイガが付いたままの栗を盛り付けた編み篭や、乾燥させた花や果実を使ったリース、鮮やかなオレンジや赤色のリボンで飾り付けられた道は落ち着いた雰囲気なのに鮮やかで、見ているだけでも胸が躍った。
昔からこの村では収穫祭を一番大事にしている。
一年間の実りに感謝して年齢も性別も関係なく平等に分かち合い、そしてこれから訪れる長めの冬も皆で元気に乗り切ろうという気持ちが込められた祭りでは誰もが浮かれ、村全体が自然と盛り上がる。
普段は気難しくて有名な老人でさえ、この日だけは笑顔を浮かべるのだ。
シュカは今にも駆け出してしまいたい気持ちを堪えながら、母と手を繋いで広場を目指す。
「ねえシュカ、ルクシウスさんとは上手くいっている?」
突然の質問にびっくりしたシュカは自分の足に躓きそうになった。
「ど、どうしたの突然…」
「母親として気になったの。あの人がいるところではなかなか聞けないから」
「ああ…」
ルクシウスに苦手意識を持ったままの父を思い出すと納得するしかない。
かつては酷い人間嫌いだったとルクシウス自身の口から聞いたのに、今のルクシウスしか知らないシュカはまったく信じられなかった。だから余計に学生時代の父とルクシウスがどんなふうに過ごしていたかも、なかなか想像することができない。
「上手くいってる…と思うよ。他の人がどうしてるか知らないから比べられないけど」
「シュカが上手くいってると思えるのなら大丈夫ね」
「それでいいの?」
「いいのよ。だってルクシウスさんのことを話してる時のシュカはいつも幸せそうな顔をしているもの。お母さんがお父さんとまだ恋人同士だった頃を思い出すわ」
思わず両手で顔を隠すシュカを見たミシェーラは少女のように笑う。
「ねえ…お母さんは、お父さんとどんなふうに付き合いはじめたの?」
シュカはここぞとばかりに日頃から聞きたくて仕方がなかった質問を口にした。
ミシェーラは少し遠くに視線を投げ、そしてシュカを見た。
「お父さんと出会ったのはね、今向かってる広場なの」
「え、そうなの?」
母がこの村の出身ではないことは知っていたけれど、まさか二人の出会いが村の広場だとは思っていなかったシュカは大げさなほど驚いた。
次の瞬間にはその瞳が興味深々で輝くのを見て小さく笑い声を上げたミシェーラは自分と同じ色の髪を慈しむように撫でる。
「その日もちょうど今日と同じ収穫祭の日でね、お母さんは隣の町から花を運んで来ていたの」
「お花屋さんだったの?」
「私の叔母がね。叔母はとても元気な人だったけど、収穫祭の直前に運悪く腰を痛めてしまって、その年だけ代わりに私が花屋として出店することになったのよ。花を荷馬車にめいっぱい積み込んでここまで運んで、下ろすのに苦労していた時に声をかけてくれたのが…」
「もしかして、お父さん?」
「そう!」
にっこりと笑う母の顔を見たシュカも自分のことのように嬉しくなる。
「お父さんは魔術を使って、花と水が入った重たい桶を全部運んでくれたの。魔術を見たのは初めてじゃなかったけれど、その時はものすごく驚いたし、すごいすごいってはしゃいじゃってね。あの人は何か目的があって収穫祭に来てたはずなのに、結局一日中、私が店番をしていた花屋から動かなかったわ」
「そうだったんだ」
「でね、その日のうちに恋人になってほしいって言われたのよ」
「その日のうちに…!」
頬を染めて目を丸くするシュカに、ミシェーラは堪えきれない様子で笑った。同じように目を丸くした当時の自分を鏡で見ているような気分だ。
「で、お母さんは何て答えたの?」
「もちろん……いいわよ、って」
「うわぁ!」
シュカがキラキラと瞳を輝かせる。
出会ったその日のうちに恋人になっただなんてロマンチックだ。まるで運命のような出会いだったのだろうと想像すると胸がときめいてしまう。
「その時はまだお父さんは学生だったけど、卒業してすぐに結婚して、それからあなたが生まれたのよ。私達の大切な宝物。あなたが大人になっても、それはいつまでも変わらないわ」
髪を撫でてくれる母の手は本当に宝物を扱うように優しくて、何だかシュカは胸がいっぱいになってしまった。
「だからあなたにも幸せになってほしいの」
「ルクシウスさんとなら幸せになれるよ、絶対」
「ふふ…そうね。きっと大丈夫ね」
二人が辿り着いた広場には既にたくさんの人が集まっていて、飾り付けや陳列を終えた店を覗いたり、村で仕込んだワインを片手に笑い合ったりしている。カボチャを象ったオーナメントがあちこちに散りばめられた会場は賑やかで楽しそうで、今年の実りが村を潤すのに充分だったことを示していた。
シュカははぐれないようにミシェーラと手を繋いで喧騒に満ちた会場に足を踏み入れる。
どこかから甘く香ばしい匂いが漂ってきて、つられるように近付くと、カボチャのパイを並べた店を見つけることができた。こんがりと焼き色が付いたパイはとてもおいしそうで、匂いに釣られた人々で店先は賑わっている。
「お母さん、あれをお父さんへのお土産にしようよ」
「いいわね、早めに買っちゃいましょうか」
「うんっ」
広場の店をすべて覗いて回り終わった頃には随分と陽も高くなって、会場の活気も満ち満ちている。誰もが楽しそうに過ごしているのが嬉しい。
予定どおりシュカは母と一緒に図書館へと向かった。
落ち葉を使って自分だけの栞を作れるということで特に子供からの人気が高く、エントランス前のスペースに用意されたテーブルはどこもいっぱいだ。思った以上に盛況な様子でなかなか近付けない。
母と一緒に賑やかな様子を見ていると、各テーブルに追加する落ち葉を詰めた箱を抱えたラランがシュカに気付いて声をかけてくれた。
「シュカ君、来てくれたんだね!」
「ラランさん、こんにちは。すごく盛り上がってますね」
「そうなのよ~、もうずっとこんな感じで大変! シュカ君はお母さん…と一緒?」
言いながらラランはミシェーラとシュカを見比べる。
二人で歩いていると姉弟に間違われることもあるくらいで、シュカは母と顔を見合わせて笑った。
「はじめまして、シュカの母です。この子がいつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそ! シュカ君はいつも礼儀正しくて勉強熱心で、すごくいい子なんですよ。昨日もここのお手伝いをしてくれて助かりました」
「あらまあ、そうだったのね」
褒められたシュカは照れて唇をもぞつかせる。
「司書長ならもう一つテーブルを増やそうって、今ジアスと一緒にテーブルを取りに行ってるよ。たぶんもうすぐ戻って…あ、来た来た!」
弾かれるように振り返ったシュカがジアスと一緒にテーブルを運んでいるルクシウスを見つけて顔を輝かせると、ルクシウスもすぐにシュカに気付いて表情を緩めた。
見せ付けられてしまったと、図らずもラランとミシェーラは同じことを考える。
そんなこと露ほども知らないシュカはルクシウスに駆け寄り、広げられた腕の中に飛び込んだ。
「来てくれて嬉しいよ、シュカ。母上殿もよく来てくれたね」
「シュカがどうしても一緒に行きたいって聞かなくて。でも落ち葉で栞を作るだなんて、素敵だわ」
「どーぞどーぞ、二人も作っていってくださいね!」
ラランから栞の土台になる厚紙を受け取ったシュカは母と一緒に落ち葉を選ぶ。
ルクシウスをその場に残して、ラランは子供達の歓声が一際大きく上がった別のテーブルの様子を見に行った。
「私もあまり長居はできないけれど…」
そう言いながらも傍にいてくれるのだからルクシウスは優しい。
落ち葉を置く位置を決めたら軽く糊で固定してから特殊な加工をしたシートで挟み、シートの余分を切って形を整え、栞らしく紐を通す穴を開ければ完成だ。この作り方なら幼い子供でも充分に楽しめるだろう。
早速シュカは先端がギザギザした小さい葉を選んで糊で貼り付けた。
盛況を極めた栞作りは人手不足が否めないようで、ルクシウスは名残惜しそうにシュカの髪を撫でてから別のテーブルの手伝いに回った。
「できた!」
「あら、随分小さめの栞なのね」
「文庫本にも挟めるくらいがいいなって思ったから」
シュカは緑色をやや残した黄色の葉と紺色の紐を使った自分だけの栞を誇らしく見つめる。秋を閉じ込めたような栞はなかなか良い出来栄えではないだろうか。
ミシェーラは真っ赤に色付いた雫型の葉と黄色の紐を使って仕上げた栞をシュカに見せてくれた。そちらもとても秋らしい色合いだ。
そんな時、シュカの視界の隅に見覚えのある赤毛が映る。
「アッシュ君!」
声を張って呼びかけると、声に気付いたアッシュは辺りを見回し、すぐに手を振るシュカを見つけてくれた。
「来てくれたんだね」
「前に言っただろ。顔を見に行くって」
「それでわざわざ?」
「まあな」
アッシュはミシェーラに視線を向けると軽く頭を下げる。たったそれだけの動きでもアッシュの育ちの良さを垣間見ることができた。
「先日はシュカ君を遅くまで引き止めてしまって申し訳ありませんでした」
「そのことはもういいのよ。ちゃんとシュカを送ってくださって、こちらこそありがとう」
「そうだアッシュ君、今度は僕の家で一緒にクッキーを作ってみない?」
「あら、いいわね! そうしましょう」
「…いいんですか?」
「もちろんよ。お夕飯も食べていってね」
「ありがとうございます。ご都合の良い日に、ぜひ」
そんな会話をしてからアッシュとは別れ、シュカは父へのお土産を手に帰路に就く。
イーサンは仕事部屋に篭っているようだった。急ぎの仕事だと言っていたのを思い出せば声をかけるのも憚られる。
「シュカ、アッシュ君ってとてもいい子ね。その革紐もあの子がくれたんでしょう?」
「うん、そうだよ。これまでほとんど話したことはなかったんだけど、もっと早く話せてたら良かったのにって思うくらいだよ」
母が淹れてくれたお茶を飲みながらカボチャのパイをつつく。生クリームを混ぜて作られているパイはねっとりと濃厚で、サイズは小さいけれど物足りなさはない。
今年は両親の馴れ初めも聞けたし、いろいろな意味で収穫は多かった。
「来年の収穫祭も楽しみだね」
「あらあら、気が早いわね。もう来年の話?」
母に笑われて、シュカも笑い出した。
日付が変わった瞬間にルクシウスの誕生日も祝えたし、あれをプレゼントと言ってもいいのかわからないけれど満足はしてもらえたと思う。来年の収穫祭は違う日に当たるかもしれないが、ルクシウスの誕生日を祝いたい気持ちは絶対に変わらない。
夜には今年取れたばかりのジャガイモをたっぷり使ったグラタンを家族三人で食べ、両親はリンゴ酒を、シュカはリンゴジュースを楽しんだ。
入浴を済ませて部屋に戻ったシュカは白く冴えた満月の光を浴びながらいつもの儀式を済ませると、机の上に置いた落ち葉の栞を手に取る。アッシュはどんな栞を作ったのだろう。
教科書の間に栞を挟んでから、シュカはもう一度月に向かって祈りを捧げた。
「どうか、アッシュくんの恋も上手くいきますように」
あの悲しそうな笑い顔を幸せな笑顔に変えられますように。
翌日、シュカはアッシュが登校してくるのを今か今かと待ち侘びていた。
「おはよう、シュカ」
「おはよう、アッシュ君。昨日はどんな栞を作ったの?」
「そう言うと思ってた」
アッシュは鞄から本を出すと、合間に挟んでいた栞を引き出す。細長い赤い葉が一枚だけ使われた栞には紫の紐が結ばれていた。
「落ち葉を使った栞は見るのも作るのも初めてだったが、世界にひとつだけというのはなかなかいいな」
「でしょう? 僕のはこんな感じになったよ」
互いの栞を見せ合う二人は教室から出ないまま話し出す。
今までシュカとアッシュが教室で会話しているところを見たことがなかったクラスメートは顔を見合わせ、アッシュの取り巻き達も二人に間に入れずに戸惑っていたが、予鈴が鳴ってしまったことで慌ててそれぞれのクラスへと戻っていった。
「時間がいくらあっても足りないな」
「ほんとだね」
授業の合間の休憩時間はもちろん、移動教室の道すがらでも話し込んでいるのに話題は尽きるどころか次々と湧いてくる。
放課後になりシュカが帰り支度を整える一方で、掃除当番らしいアッシュは代わりに掃除をすると言い寄ってくる取り巻き達を帰らせると掃除道具を手に取った。
シュカは肩から提げた鞄を置き、せっせと箒を動かすアッシュを手伝うために椅子や机を移動させる。
「図書館へ行かないのか?」
「昨日の片付けがあるから、今日は臨時で休館してるんだ」
「そうだったのか。それでも会いには行くんだろう?」
「うん、そのつもり。良ければ家においでって言ってもらえたから」
「仲睦まじくて何よりだ」
結局、最後まで掃除に付き合ったシュカは「礼の代わりだ」とアッシュに押し切られ、彼と一緒に馬車に乗り込んだ。
「先日一緒に作ったクッキーは屋敷の者で分けたんだ。皆、おいしいと言ってくれた」
「そっか、良かったね!」
「たまにはああいうのもいいものだな」
アッシュが表情を緩める。
教室にいる間は少し硬い表情のアッシュも、二人でいる時は随分と柔らかい顔をするようになった。
ルクシウスの家の近くで馬車から降りたシュカは窓から手を振るアッシュに手を振り返し、嬉しさに弾んだ気分のままルクシウスの家のドアをノックする。
「こんにちは、ルクシウスさん」
「いらっしゃい、シュカ。どうぞ入って」
「お邪魔します」
図書館で見るよりもラフな素材のシャツを着たルクシウスに促されて椅子に座ったシュカの視線の先で、ルクシウスは手早くお茶を淹れてくれた。ジャスミンの香りのする甘いミルクティーは今ではすっかりシュカのお気に入りだ。
お茶と一緒に出されたのはクルミとサツマイモのカップケーキで、控えめにかけられたホワイトチョコが程良いアクセントになっている。
シュカはお茶とお菓子を楽しみながら、昨日の収穫祭のことをルクシウスに話した。
広場で売っていたカボチャのパイがおいしかったこと、乾燥させた蔓とドライフラワーを使った飾りが素朴で可愛かったこと、見たことのない真っ赤な木の実を宝石みたいにあしらったアクセサリーを見かけたこと。
「お店の人に言われるまで、それが木の実だって気付かなかったくらい綺麗だったんですよ」
「なるほど。もしかするとそれはコリータの実かな」
「コリータ?」
初めて聞いた名前にシュカは首を傾げる。
「コリータはここから北にある山を越えた地域に自生している植物で、乾燥させた種子を丹念に磨き上げると艶が出て、ルビーのようにさえ見えるほどでね。それを使ったアクセサリーは比較的安価で人気があるんだよ」
「そうだったんですね。やっぱりルクシウスさんって物知りだなぁ」
「褒めても何も出ないよ」
そんなふうに言いつつもルクシウスは嬉しそうだ。
お茶を楽しんでから書斎に移動したシュカは試験勉強のために教科書とノートを開き、ルクシウスはシュカの隣に座って何かの書類を読みはじめる。
しばらくは無言でペンを走らせ、教科書のページを捲っていたシュカはふと顔を上げた。書斎の壁にはルクシウスがかつて魔術師だった頃の名残であるロッドが飾られているのを見て、いつかは自分も彼のようになろうと、そんな思いが湧き上がった。
「勉強は順調かい?」
「あっ…えっと、はい。今のところは」
ルクシウスに聞かれたシュカはしどろもどろで頷いた。
期末試験が終わって年が明ければすぐに進級試験があるのだが、どんなに勉強したとしても不安は拭いきれない。
「シュカなら大丈夫だよ」
言葉自体に根拠はなくても、言ってくれるのがルクシウスだというだけで心強い。
「無事に進級できたら来年は実習授業がはじまるんですけど、そしたらやっと自分のロッドを持てるんです。考えるだけで今から楽しみで仕方なくて」
「確かに自分のロッドが出来上がると気分も違ってくるね」
「ルクシウスさんはロッドを選ぶ時には何に気を付けましたか?」
聞くと、ルクシウスは意味有り気に笑ってシュカの左手を握り締める。薬指の指輪をなぞる指先が肌に触れて少しくすぐったい。
「君にプレゼントした指輪のサファイアと同じだよ。いずれ君が持つ宝珠もそうだが、ロッド自体も持ち主との相性が一番大事になる。ちなみに私のロッドは古いツタを材料にしているよ」
立ち上がったルクシウスは、壁に飾られていたロッドを外してシュカに差し出す。
ロッドは螺旋状にやや捻れている持ち手部分だけがツタだった頃の質感を保っていて、磨かれた先端部分と持ち手の境目にはペリドットの宝珠が嵌め込まれていた。
かつて、この淡い緑色の輝きを放つ宝珠にヤドリギの精霊が宿ったのだと思うと、おいそれとは触れない。
「さ、触っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。これはもうシュカの気配に慣れているからね」
「気配に慣れる…? ロッドって、意識とか意思みたいなものがあるんですか?」
「それほど明確ではないが、性格もしくは性質のようなものがあるらしいんだ。従順だったり頑固だったり、中には持ち主にさえ反抗的なロッドもあると聞くよ」
穏やかに説明しながらなおもロッドを差し出してくるルクシウスの手から、シュカは恐る恐るロッドを受け取った。
材質がツタだからか思ったよりもずっと軽い。それに緩やかに捻れた持ち手は何となく手に馴染みやすく感じた。
「ルクシウスさんのロッドはどんな性格なんですか?」
何気なく聞いたシュカの耳に低い声が吹き込まれる。
「従順だよ」
「っ…!」
ごく近い場所から顔を覗き込まれて一気に頬を熱くしたシュカの手を、ルクシウスがロッドごと握り締めた。
彼は僅かに目を細めて、真っ赤に染まり上がったシュカの頬にキスをする。
突然こんな雰囲気にするのは心臓に悪いからやめてほしい。シュカは心底切実にそう思うのに、額に唇が触れて、そして顎を掬い上げられて唇を塞がれると、溢れ出しそうなほどに幸福感が湧き出す。
気付けば手からはロッドが奪われていて、シュカはルクシウスの腕の中に閉じ込められていた。
「君はどんな大人になるんだろうね…」
何かを押し殺したような声が聞こえる。
少し前のシュカだったらルクシウスがこんなことを言い出したら不安でいっぱいになったかもしれないが、今はそうはならない。腕を伸ばしてルクシウスの背中を抱き締める。
「明日も明後日も、大人になってからも、僕はずっとルクシウスさんが大好きです」
指輪をもらった日から毎晩繰り返している儀式と同じ言葉を囁けば、ルクシウスの腕がぴくりと震えた。
あまり本心を語ってくれないルクシウスがもしも何らかの不安を抱えているのだとしたら、自分がその不安を消してあげたい。決意と期待を込めてシュカはルクシウスの胸に頬を擦り寄せる。
今にも身体から溢れ出してしまいそうな恋心が少しでもルクシウスに伝われば良いのに。
ルクシウスはシュカが成人したら抱くと言った。具体的なあれこれについて調べるにはまだ勇気が足りなかったが、成人を迎える誕生日まではあと一年と少しの時間がある。
わざわざルクシウスが宣言したのは、その間にシュカが覚悟を決めておけるようにと配慮してくれたからなのだろう。
「どんな大人になったって、それは変わりません」
シュカは身体を離してルクシウスの唇に指先で触れ、驚きを浮かべるブルーグレーを見つめて微笑んだ。
身も心もすべてをルクシウスのものにしてほしい。はしたないかもしれないが、それがシュカの偽りのない本心だ。
「僕が成人する日はルクシウスさんのことを独り占めさせてくださいね」
「ああ。もちろんだとも」
恥じらいを誤魔化すための我が儘を言ったつもりだったのに、ルクシウスは微笑みを湛えて頷き、気が付けば優しくソファに押し倒されていた。
最初から深く唇が重なる。唇の隙間から入ってくる舌を受け入れただけでなく、シュカは自分からもおずおずと舌先を伸ばしてみた。いとも容易く絡め取られた舌を吸い上げられて背中が反り返る。
「…ン、ん…」
呼吸がままならず少しずつ苦しくなってくると、それに気付いたルクシウスがやっと口を離してくれた。少しだけ咳き込んだシュカの背中を大きな手のひらが擦る。
「大丈夫かい?」
「へ、いきです…」
「手加減できなくてすまなかった」
本当に申し訳なさそうに眉を下げるルクシウスを見て、シュカは僅かに息を荒くしたまま笑った。
「手加減なんてしてほしくないです」
肩を支えられてソファに座り直すと、そのままの勢いでルクシウスに抱き付いた。
躊躇っているのか、どことなく遠慮がちに抱き返してくれるルクシウスが何だか無性に可愛く思えてしまう。勝手に笑いが漏れてしまって、小さく肩を震わせたシュカは困惑するルクシウスの瞳を覗き込んだ。
「ちゃんと受け止められるようになるから、手加減なんてしないでください」
「君って子は…」
強く抱き締められて苦しいほどなのに、それさえも嬉しい。シュカはルクシウスの背中に腕を回して力を込めた。
自分にとっての幸せがルクシウスの形をしているように、彼にとっての幸せが自分の形をしていたらいいのに。惹かれるように再び唇を触れ合わせながらシュカはそう願った。
ルクシウスはもう顔を洗ってきたのだろう、髪もいつもどおりに整えられている。
ぼんやりとしていたシュカの意識は、シャツを羽織る寸前のルクシウスの背中を見つけた瞬間に覚醒した。
少しも弛みのない背中はすぐに隠れてしまったが、普段からきっちりとした服装ばかりのルクシウスの素肌を初めて目撃したシュカはうろうろと視線を彷徨わせる。つられて耳の奥に甦るのは昨夜ルクシウスから告げられた言葉だった。
「すまない、起こしてしまったかな」
「っ、お、おはようございます」
「おはよう」
ルクシウスはわざわざベッドまで近付くと、シュカの頬におはようのキスをしてくれた。
まだボタンを留めきっていないせいで開いた襟元からは鎖骨が僅かに覗いていて、至近距離で見てしまったシュカの頬にじわじわと血が上がる。
「まだ寝ていていいんだよ?」
「あ、いえ…僕も起きます」
シュカは毛布を掻き分けてベッドから降り、鞄の中の着替えを引っ張り出した。
ルクシウスと一緒に収穫祭を回れないのは知っていたから一旦家に戻るつもりで簡素な服を選んで詰め込んできたのだが、この時間には少し薄手すぎたかもしれない。しかしこれ以上手持ちの服はないし、歩いて家に帰るのだから身体も少しはあたたまるだろう。
そんなふうに考えていたシュカの肩にやわらかい重さがかかる。
「それでは風邪を引いてしまう」
ルクシウスが着せてくれたのは、シュカの太ももまですっぽりと隠れる丈の長いカーディガンだった。太めの毛糸で模様編みされたカーディガンは品が良く、これは絶対にルクシウスに似合うはずだとシュカは確信する。
「ありがとうございます、ルクシウスさん」
「どういたしまして。大事なシュカに風邪を引かせてしまったら、ご両親からも怒られてしまうしね」
ルクシウスは優しく微笑しながら、シュカには長すぎる袖を折り曲げてくれる。右手が終われば左手も同様に。
子供扱いではあるけれど、甘やかされていることが嬉しくてシュカの頬は勝手に緩んだ。
朝食は手早く済ませられるようにと、昨夜のうちにルクシウスが作っておいたサンドイッチとコーヒーだった。もちろんシュカの分のコーヒーにはミルクと砂糖がたっぷり入れられている。
「お昼過ぎにはお母さんと一緒に図書館に顔を出せると思います」
「そうか、ならその時間は何が何でも図書館から離れないようにするよ」
そんな会話をゆっくりと楽しんでからシュカはルクシウスと一緒に家を出た。
朝の空気には冬の気配が混ざっているのではと思うくらい冷えている。昼になれば汗ばむほどの陽気になるかもしれないがカーディガンを借りて正解だった。
それに動くたびにカーディガンからはジャスミンの香りがして、彼に抱き締められているみたいでドキドキする。素直にそう思ったことを口にすると、ルクシウスはやや目を細めて微笑み、優しくシュカを抱き締めてくれた。
「では、また後でね」
「はいっ、また後で」
図書館に向かう道の前で分かれ、手を振ってルクシウスを見送ったシュカは家までの道を足早に進んだ。
小道を挟むように生えた木々の葉はすっかり色付いて、それだけで足取りは軽くなる。
家に帰ると両親は朝食の最中だった。
「ただいま!」
「あら、おかえりなさい、シュカ。朝ごはんは?」
「ルクシウスさんのところで済ませてきたよ」
僅かに息を弾ませたまま答えると、お茶を飲んでいたイーサンがあからさまに顔を顰めた。父は相変わらずルクシウスのことが苦手らしい。
「お父さんは収穫祭には行かないの?」
「悪いな、急ぎの仕事が入ってるんだ。ミシェーラと楽しんでおいで」
「そっかぁ…お仕事大変だね。何かいいものがあったらお土産にするから」
「ありがとう。シュカはいい子だなぁ」
頬を緩めた父に頭を撫でられたシュカは笑い声を上げ、そんな二人をミシェーラは微笑ましく見つめる。
「ほらほら、そんな調子じゃお仕事が終わらないわよ? シュカも、もう少しあたたかい服に着替えていらっしゃい」
「うん!」
シュカは部屋に飛び込んで衣装タンスの中を覗いた。今日一日だけ貸してもらおうと開き直ってカーディガンと相性の良さそうな中着を探す。
あれでもないこれでもないと散々迷ってから、シュカは少しだけ厚手の白いシャツを選んだ。
「シュカ、準備できた?」
「も、もうちょっと待って!」
急いで着替えて部屋を出ると、髪を緩く纏めた母が柔らかい笑顔を浮かべる。
「その組み合わせ、いいと思うわよ」
ほっとしてはにかんだシュカは指輪を通した革紐を首の後ろで結んだ。
居間の父に声をかけてから家を出ると気温は少しずつ上がりはじめていたが、漂う緩い風はさすがに深まった秋を感じさせる温度だった。
収穫祭のメイン会場である広場に向かう道沿いには趣向を凝らした飾りが点々と置かれている。
カボチャやイガが付いたままの栗を盛り付けた編み篭や、乾燥させた花や果実を使ったリース、鮮やかなオレンジや赤色のリボンで飾り付けられた道は落ち着いた雰囲気なのに鮮やかで、見ているだけでも胸が躍った。
昔からこの村では収穫祭を一番大事にしている。
一年間の実りに感謝して年齢も性別も関係なく平等に分かち合い、そしてこれから訪れる長めの冬も皆で元気に乗り切ろうという気持ちが込められた祭りでは誰もが浮かれ、村全体が自然と盛り上がる。
普段は気難しくて有名な老人でさえ、この日だけは笑顔を浮かべるのだ。
シュカは今にも駆け出してしまいたい気持ちを堪えながら、母と手を繋いで広場を目指す。
「ねえシュカ、ルクシウスさんとは上手くいっている?」
突然の質問にびっくりしたシュカは自分の足に躓きそうになった。
「ど、どうしたの突然…」
「母親として気になったの。あの人がいるところではなかなか聞けないから」
「ああ…」
ルクシウスに苦手意識を持ったままの父を思い出すと納得するしかない。
かつては酷い人間嫌いだったとルクシウス自身の口から聞いたのに、今のルクシウスしか知らないシュカはまったく信じられなかった。だから余計に学生時代の父とルクシウスがどんなふうに過ごしていたかも、なかなか想像することができない。
「上手くいってる…と思うよ。他の人がどうしてるか知らないから比べられないけど」
「シュカが上手くいってると思えるのなら大丈夫ね」
「それでいいの?」
「いいのよ。だってルクシウスさんのことを話してる時のシュカはいつも幸せそうな顔をしているもの。お母さんがお父さんとまだ恋人同士だった頃を思い出すわ」
思わず両手で顔を隠すシュカを見たミシェーラは少女のように笑う。
「ねえ…お母さんは、お父さんとどんなふうに付き合いはじめたの?」
シュカはここぞとばかりに日頃から聞きたくて仕方がなかった質問を口にした。
ミシェーラは少し遠くに視線を投げ、そしてシュカを見た。
「お父さんと出会ったのはね、今向かってる広場なの」
「え、そうなの?」
母がこの村の出身ではないことは知っていたけれど、まさか二人の出会いが村の広場だとは思っていなかったシュカは大げさなほど驚いた。
次の瞬間にはその瞳が興味深々で輝くのを見て小さく笑い声を上げたミシェーラは自分と同じ色の髪を慈しむように撫でる。
「その日もちょうど今日と同じ収穫祭の日でね、お母さんは隣の町から花を運んで来ていたの」
「お花屋さんだったの?」
「私の叔母がね。叔母はとても元気な人だったけど、収穫祭の直前に運悪く腰を痛めてしまって、その年だけ代わりに私が花屋として出店することになったのよ。花を荷馬車にめいっぱい積み込んでここまで運んで、下ろすのに苦労していた時に声をかけてくれたのが…」
「もしかして、お父さん?」
「そう!」
にっこりと笑う母の顔を見たシュカも自分のことのように嬉しくなる。
「お父さんは魔術を使って、花と水が入った重たい桶を全部運んでくれたの。魔術を見たのは初めてじゃなかったけれど、その時はものすごく驚いたし、すごいすごいってはしゃいじゃってね。あの人は何か目的があって収穫祭に来てたはずなのに、結局一日中、私が店番をしていた花屋から動かなかったわ」
「そうだったんだ」
「でね、その日のうちに恋人になってほしいって言われたのよ」
「その日のうちに…!」
頬を染めて目を丸くするシュカに、ミシェーラは堪えきれない様子で笑った。同じように目を丸くした当時の自分を鏡で見ているような気分だ。
「で、お母さんは何て答えたの?」
「もちろん……いいわよ、って」
「うわぁ!」
シュカがキラキラと瞳を輝かせる。
出会ったその日のうちに恋人になっただなんてロマンチックだ。まるで運命のような出会いだったのだろうと想像すると胸がときめいてしまう。
「その時はまだお父さんは学生だったけど、卒業してすぐに結婚して、それからあなたが生まれたのよ。私達の大切な宝物。あなたが大人になっても、それはいつまでも変わらないわ」
髪を撫でてくれる母の手は本当に宝物を扱うように優しくて、何だかシュカは胸がいっぱいになってしまった。
「だからあなたにも幸せになってほしいの」
「ルクシウスさんとなら幸せになれるよ、絶対」
「ふふ…そうね。きっと大丈夫ね」
二人が辿り着いた広場には既にたくさんの人が集まっていて、飾り付けや陳列を終えた店を覗いたり、村で仕込んだワインを片手に笑い合ったりしている。カボチャを象ったオーナメントがあちこちに散りばめられた会場は賑やかで楽しそうで、今年の実りが村を潤すのに充分だったことを示していた。
シュカははぐれないようにミシェーラと手を繋いで喧騒に満ちた会場に足を踏み入れる。
どこかから甘く香ばしい匂いが漂ってきて、つられるように近付くと、カボチャのパイを並べた店を見つけることができた。こんがりと焼き色が付いたパイはとてもおいしそうで、匂いに釣られた人々で店先は賑わっている。
「お母さん、あれをお父さんへのお土産にしようよ」
「いいわね、早めに買っちゃいましょうか」
「うんっ」
広場の店をすべて覗いて回り終わった頃には随分と陽も高くなって、会場の活気も満ち満ちている。誰もが楽しそうに過ごしているのが嬉しい。
予定どおりシュカは母と一緒に図書館へと向かった。
落ち葉を使って自分だけの栞を作れるということで特に子供からの人気が高く、エントランス前のスペースに用意されたテーブルはどこもいっぱいだ。思った以上に盛況な様子でなかなか近付けない。
母と一緒に賑やかな様子を見ていると、各テーブルに追加する落ち葉を詰めた箱を抱えたラランがシュカに気付いて声をかけてくれた。
「シュカ君、来てくれたんだね!」
「ラランさん、こんにちは。すごく盛り上がってますね」
「そうなのよ~、もうずっとこんな感じで大変! シュカ君はお母さん…と一緒?」
言いながらラランはミシェーラとシュカを見比べる。
二人で歩いていると姉弟に間違われることもあるくらいで、シュカは母と顔を見合わせて笑った。
「はじめまして、シュカの母です。この子がいつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそ! シュカ君はいつも礼儀正しくて勉強熱心で、すごくいい子なんですよ。昨日もここのお手伝いをしてくれて助かりました」
「あらまあ、そうだったのね」
褒められたシュカは照れて唇をもぞつかせる。
「司書長ならもう一つテーブルを増やそうって、今ジアスと一緒にテーブルを取りに行ってるよ。たぶんもうすぐ戻って…あ、来た来た!」
弾かれるように振り返ったシュカがジアスと一緒にテーブルを運んでいるルクシウスを見つけて顔を輝かせると、ルクシウスもすぐにシュカに気付いて表情を緩めた。
見せ付けられてしまったと、図らずもラランとミシェーラは同じことを考える。
そんなこと露ほども知らないシュカはルクシウスに駆け寄り、広げられた腕の中に飛び込んだ。
「来てくれて嬉しいよ、シュカ。母上殿もよく来てくれたね」
「シュカがどうしても一緒に行きたいって聞かなくて。でも落ち葉で栞を作るだなんて、素敵だわ」
「どーぞどーぞ、二人も作っていってくださいね!」
ラランから栞の土台になる厚紙を受け取ったシュカは母と一緒に落ち葉を選ぶ。
ルクシウスをその場に残して、ラランは子供達の歓声が一際大きく上がった別のテーブルの様子を見に行った。
「私もあまり長居はできないけれど…」
そう言いながらも傍にいてくれるのだからルクシウスは優しい。
落ち葉を置く位置を決めたら軽く糊で固定してから特殊な加工をしたシートで挟み、シートの余分を切って形を整え、栞らしく紐を通す穴を開ければ完成だ。この作り方なら幼い子供でも充分に楽しめるだろう。
早速シュカは先端がギザギザした小さい葉を選んで糊で貼り付けた。
盛況を極めた栞作りは人手不足が否めないようで、ルクシウスは名残惜しそうにシュカの髪を撫でてから別のテーブルの手伝いに回った。
「できた!」
「あら、随分小さめの栞なのね」
「文庫本にも挟めるくらいがいいなって思ったから」
シュカは緑色をやや残した黄色の葉と紺色の紐を使った自分だけの栞を誇らしく見つめる。秋を閉じ込めたような栞はなかなか良い出来栄えではないだろうか。
ミシェーラは真っ赤に色付いた雫型の葉と黄色の紐を使って仕上げた栞をシュカに見せてくれた。そちらもとても秋らしい色合いだ。
そんな時、シュカの視界の隅に見覚えのある赤毛が映る。
「アッシュ君!」
声を張って呼びかけると、声に気付いたアッシュは辺りを見回し、すぐに手を振るシュカを見つけてくれた。
「来てくれたんだね」
「前に言っただろ。顔を見に行くって」
「それでわざわざ?」
「まあな」
アッシュはミシェーラに視線を向けると軽く頭を下げる。たったそれだけの動きでもアッシュの育ちの良さを垣間見ることができた。
「先日はシュカ君を遅くまで引き止めてしまって申し訳ありませんでした」
「そのことはもういいのよ。ちゃんとシュカを送ってくださって、こちらこそありがとう」
「そうだアッシュ君、今度は僕の家で一緒にクッキーを作ってみない?」
「あら、いいわね! そうしましょう」
「…いいんですか?」
「もちろんよ。お夕飯も食べていってね」
「ありがとうございます。ご都合の良い日に、ぜひ」
そんな会話をしてからアッシュとは別れ、シュカは父へのお土産を手に帰路に就く。
イーサンは仕事部屋に篭っているようだった。急ぎの仕事だと言っていたのを思い出せば声をかけるのも憚られる。
「シュカ、アッシュ君ってとてもいい子ね。その革紐もあの子がくれたんでしょう?」
「うん、そうだよ。これまでほとんど話したことはなかったんだけど、もっと早く話せてたら良かったのにって思うくらいだよ」
母が淹れてくれたお茶を飲みながらカボチャのパイをつつく。生クリームを混ぜて作られているパイはねっとりと濃厚で、サイズは小さいけれど物足りなさはない。
今年は両親の馴れ初めも聞けたし、いろいろな意味で収穫は多かった。
「来年の収穫祭も楽しみだね」
「あらあら、気が早いわね。もう来年の話?」
母に笑われて、シュカも笑い出した。
日付が変わった瞬間にルクシウスの誕生日も祝えたし、あれをプレゼントと言ってもいいのかわからないけれど満足はしてもらえたと思う。来年の収穫祭は違う日に当たるかもしれないが、ルクシウスの誕生日を祝いたい気持ちは絶対に変わらない。
夜には今年取れたばかりのジャガイモをたっぷり使ったグラタンを家族三人で食べ、両親はリンゴ酒を、シュカはリンゴジュースを楽しんだ。
入浴を済ませて部屋に戻ったシュカは白く冴えた満月の光を浴びながらいつもの儀式を済ませると、机の上に置いた落ち葉の栞を手に取る。アッシュはどんな栞を作ったのだろう。
教科書の間に栞を挟んでから、シュカはもう一度月に向かって祈りを捧げた。
「どうか、アッシュくんの恋も上手くいきますように」
あの悲しそうな笑い顔を幸せな笑顔に変えられますように。
翌日、シュカはアッシュが登校してくるのを今か今かと待ち侘びていた。
「おはよう、シュカ」
「おはよう、アッシュ君。昨日はどんな栞を作ったの?」
「そう言うと思ってた」
アッシュは鞄から本を出すと、合間に挟んでいた栞を引き出す。細長い赤い葉が一枚だけ使われた栞には紫の紐が結ばれていた。
「落ち葉を使った栞は見るのも作るのも初めてだったが、世界にひとつだけというのはなかなかいいな」
「でしょう? 僕のはこんな感じになったよ」
互いの栞を見せ合う二人は教室から出ないまま話し出す。
今までシュカとアッシュが教室で会話しているところを見たことがなかったクラスメートは顔を見合わせ、アッシュの取り巻き達も二人に間に入れずに戸惑っていたが、予鈴が鳴ってしまったことで慌ててそれぞれのクラスへと戻っていった。
「時間がいくらあっても足りないな」
「ほんとだね」
授業の合間の休憩時間はもちろん、移動教室の道すがらでも話し込んでいるのに話題は尽きるどころか次々と湧いてくる。
放課後になりシュカが帰り支度を整える一方で、掃除当番らしいアッシュは代わりに掃除をすると言い寄ってくる取り巻き達を帰らせると掃除道具を手に取った。
シュカは肩から提げた鞄を置き、せっせと箒を動かすアッシュを手伝うために椅子や机を移動させる。
「図書館へ行かないのか?」
「昨日の片付けがあるから、今日は臨時で休館してるんだ」
「そうだったのか。それでも会いには行くんだろう?」
「うん、そのつもり。良ければ家においでって言ってもらえたから」
「仲睦まじくて何よりだ」
結局、最後まで掃除に付き合ったシュカは「礼の代わりだ」とアッシュに押し切られ、彼と一緒に馬車に乗り込んだ。
「先日一緒に作ったクッキーは屋敷の者で分けたんだ。皆、おいしいと言ってくれた」
「そっか、良かったね!」
「たまにはああいうのもいいものだな」
アッシュが表情を緩める。
教室にいる間は少し硬い表情のアッシュも、二人でいる時は随分と柔らかい顔をするようになった。
ルクシウスの家の近くで馬車から降りたシュカは窓から手を振るアッシュに手を振り返し、嬉しさに弾んだ気分のままルクシウスの家のドアをノックする。
「こんにちは、ルクシウスさん」
「いらっしゃい、シュカ。どうぞ入って」
「お邪魔します」
図書館で見るよりもラフな素材のシャツを着たルクシウスに促されて椅子に座ったシュカの視線の先で、ルクシウスは手早くお茶を淹れてくれた。ジャスミンの香りのする甘いミルクティーは今ではすっかりシュカのお気に入りだ。
お茶と一緒に出されたのはクルミとサツマイモのカップケーキで、控えめにかけられたホワイトチョコが程良いアクセントになっている。
シュカはお茶とお菓子を楽しみながら、昨日の収穫祭のことをルクシウスに話した。
広場で売っていたカボチャのパイがおいしかったこと、乾燥させた蔓とドライフラワーを使った飾りが素朴で可愛かったこと、見たことのない真っ赤な木の実を宝石みたいにあしらったアクセサリーを見かけたこと。
「お店の人に言われるまで、それが木の実だって気付かなかったくらい綺麗だったんですよ」
「なるほど。もしかするとそれはコリータの実かな」
「コリータ?」
初めて聞いた名前にシュカは首を傾げる。
「コリータはここから北にある山を越えた地域に自生している植物で、乾燥させた種子を丹念に磨き上げると艶が出て、ルビーのようにさえ見えるほどでね。それを使ったアクセサリーは比較的安価で人気があるんだよ」
「そうだったんですね。やっぱりルクシウスさんって物知りだなぁ」
「褒めても何も出ないよ」
そんなふうに言いつつもルクシウスは嬉しそうだ。
お茶を楽しんでから書斎に移動したシュカは試験勉強のために教科書とノートを開き、ルクシウスはシュカの隣に座って何かの書類を読みはじめる。
しばらくは無言でペンを走らせ、教科書のページを捲っていたシュカはふと顔を上げた。書斎の壁にはルクシウスがかつて魔術師だった頃の名残であるロッドが飾られているのを見て、いつかは自分も彼のようになろうと、そんな思いが湧き上がった。
「勉強は順調かい?」
「あっ…えっと、はい。今のところは」
ルクシウスに聞かれたシュカはしどろもどろで頷いた。
期末試験が終わって年が明ければすぐに進級試験があるのだが、どんなに勉強したとしても不安は拭いきれない。
「シュカなら大丈夫だよ」
言葉自体に根拠はなくても、言ってくれるのがルクシウスだというだけで心強い。
「無事に進級できたら来年は実習授業がはじまるんですけど、そしたらやっと自分のロッドを持てるんです。考えるだけで今から楽しみで仕方なくて」
「確かに自分のロッドが出来上がると気分も違ってくるね」
「ルクシウスさんはロッドを選ぶ時には何に気を付けましたか?」
聞くと、ルクシウスは意味有り気に笑ってシュカの左手を握り締める。薬指の指輪をなぞる指先が肌に触れて少しくすぐったい。
「君にプレゼントした指輪のサファイアと同じだよ。いずれ君が持つ宝珠もそうだが、ロッド自体も持ち主との相性が一番大事になる。ちなみに私のロッドは古いツタを材料にしているよ」
立ち上がったルクシウスは、壁に飾られていたロッドを外してシュカに差し出す。
ロッドは螺旋状にやや捻れている持ち手部分だけがツタだった頃の質感を保っていて、磨かれた先端部分と持ち手の境目にはペリドットの宝珠が嵌め込まれていた。
かつて、この淡い緑色の輝きを放つ宝珠にヤドリギの精霊が宿ったのだと思うと、おいそれとは触れない。
「さ、触っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。これはもうシュカの気配に慣れているからね」
「気配に慣れる…? ロッドって、意識とか意思みたいなものがあるんですか?」
「それほど明確ではないが、性格もしくは性質のようなものがあるらしいんだ。従順だったり頑固だったり、中には持ち主にさえ反抗的なロッドもあると聞くよ」
穏やかに説明しながらなおもロッドを差し出してくるルクシウスの手から、シュカは恐る恐るロッドを受け取った。
材質がツタだからか思ったよりもずっと軽い。それに緩やかに捻れた持ち手は何となく手に馴染みやすく感じた。
「ルクシウスさんのロッドはどんな性格なんですか?」
何気なく聞いたシュカの耳に低い声が吹き込まれる。
「従順だよ」
「っ…!」
ごく近い場所から顔を覗き込まれて一気に頬を熱くしたシュカの手を、ルクシウスがロッドごと握り締めた。
彼は僅かに目を細めて、真っ赤に染まり上がったシュカの頬にキスをする。
突然こんな雰囲気にするのは心臓に悪いからやめてほしい。シュカは心底切実にそう思うのに、額に唇が触れて、そして顎を掬い上げられて唇を塞がれると、溢れ出しそうなほどに幸福感が湧き出す。
気付けば手からはロッドが奪われていて、シュカはルクシウスの腕の中に閉じ込められていた。
「君はどんな大人になるんだろうね…」
何かを押し殺したような声が聞こえる。
少し前のシュカだったらルクシウスがこんなことを言い出したら不安でいっぱいになったかもしれないが、今はそうはならない。腕を伸ばしてルクシウスの背中を抱き締める。
「明日も明後日も、大人になってからも、僕はずっとルクシウスさんが大好きです」
指輪をもらった日から毎晩繰り返している儀式と同じ言葉を囁けば、ルクシウスの腕がぴくりと震えた。
あまり本心を語ってくれないルクシウスがもしも何らかの不安を抱えているのだとしたら、自分がその不安を消してあげたい。決意と期待を込めてシュカはルクシウスの胸に頬を擦り寄せる。
今にも身体から溢れ出してしまいそうな恋心が少しでもルクシウスに伝われば良いのに。
ルクシウスはシュカが成人したら抱くと言った。具体的なあれこれについて調べるにはまだ勇気が足りなかったが、成人を迎える誕生日まではあと一年と少しの時間がある。
わざわざルクシウスが宣言したのは、その間にシュカが覚悟を決めておけるようにと配慮してくれたからなのだろう。
「どんな大人になったって、それは変わりません」
シュカは身体を離してルクシウスの唇に指先で触れ、驚きを浮かべるブルーグレーを見つめて微笑んだ。
身も心もすべてをルクシウスのものにしてほしい。はしたないかもしれないが、それがシュカの偽りのない本心だ。
「僕が成人する日はルクシウスさんのことを独り占めさせてくださいね」
「ああ。もちろんだとも」
恥じらいを誤魔化すための我が儘を言ったつもりだったのに、ルクシウスは微笑みを湛えて頷き、気が付けば優しくソファに押し倒されていた。
最初から深く唇が重なる。唇の隙間から入ってくる舌を受け入れただけでなく、シュカは自分からもおずおずと舌先を伸ばしてみた。いとも容易く絡め取られた舌を吸い上げられて背中が反り返る。
「…ン、ん…」
呼吸がままならず少しずつ苦しくなってくると、それに気付いたルクシウスがやっと口を離してくれた。少しだけ咳き込んだシュカの背中を大きな手のひらが擦る。
「大丈夫かい?」
「へ、いきです…」
「手加減できなくてすまなかった」
本当に申し訳なさそうに眉を下げるルクシウスを見て、シュカは僅かに息を荒くしたまま笑った。
「手加減なんてしてほしくないです」
肩を支えられてソファに座り直すと、そのままの勢いでルクシウスに抱き付いた。
躊躇っているのか、どことなく遠慮がちに抱き返してくれるルクシウスが何だか無性に可愛く思えてしまう。勝手に笑いが漏れてしまって、小さく肩を震わせたシュカは困惑するルクシウスの瞳を覗き込んだ。
「ちゃんと受け止められるようになるから、手加減なんてしないでください」
「君って子は…」
強く抱き締められて苦しいほどなのに、それさえも嬉しい。シュカはルクシウスの背中に腕を回して力を込めた。
自分にとっての幸せがルクシウスの形をしているように、彼にとっての幸せが自分の形をしていたらいいのに。惹かれるように再び唇を触れ合わせながらシュカはそう願った。
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