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【第一章】聖女
2. 使者
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私は、目の前の光景に言葉を失った。
そこには、私が今まで見たことの無い景色が広がっていたからだ。
私が立っているのは、小高い丘の上のようで、石畳の階段が下へと続いている。
そのずっと先の方には、小さな木戸があり、その先に街が広がっていた。
街を囲うように星の形に外壁が積み上げられている。
(北海道の五稜郭に少し似ているかも……)
家族で旅行に行った時に見た景色を思い出す。
でも、見える建物の大きさから五稜郭とは比べ物にならないくらい広いのが分かる。
こんな街を私は日本で見たことがない。
(まさか……外国に売られたのかしら)
確か気を失う前に会った、あの男も異国語を話していた。
しかし、誘拐されたにしては、見張りの一人もいないことに疑問を感じる。
(とにかく、ここから離れないと……)
街へ行けば、人がいる。
助けを求めれば、例え言葉は通じなくても、警察を呼ぶくらいはしてもらえるだろう。
それか、電話を貸してもらえれば、誰かに連絡を取ることも……と、そこまで考えて、私は、ある物の存在を思い出した。
(……そうだ! スマホ!)
私は、ポケットに入れていたスマホが未だそこにあることを確認して、ほっとした。
どうして今まで忘れていたのだろう。
取り出して画面にタッチする。
アンテナを確認すると……圏外だった。
これでは、チャットも電話も使えない。
(……仕方ない。
やっぱり街まで行って、誰かに助けを……)
そう思って、石畳の階段へ足を向けた時のことだった。
階段の下の方から誰かが登ってくる。
男の人のようだ。
(やだ……見張りの人が戻って来たのかしら……)
咄嗟に、どこかへ身を隠そうと辺りを見回したが、先程の洞窟以外に身を隠せそうな物は見当たらない。
この丘には、洞窟以外に何もなさそうなので、あの男の人の目的地は、十中八九洞窟だろう。
このまま洞窟へ戻っても、あの男の人が見張りなのだとしたら、捕まって終わりだ。
これが誘拐だとしたら……の話ではあるが。
私がどうしようかと迷っている内に、下から登ってきた男が私を見つけて、声を上げた。
「……だ、誰だっ?!」
その言葉だけで、男が誘拐犯の見張りなどではない、ということが分かって安心する。
犯人であれば、誰だ、とは聞かないだろう。
たまたまここを通り掛かった街の人なのかもしれない。
「ここは、禁域です。
分かっていて、入ったのですか?」
「す、すみません。
私、ここが入ってはいけない場所だとは知らなくて……気が付いたら、あの洞窟の中で寝かされていたんです。
すみませんが……ここは、どこなんでしょうか?」
すると、男の顔が見る見るうちに青ざめて、信じられないものを見たかのような表情に変わる。
(なんだろう……言葉は通じていそうだけど……)
「まさか……まさか、あなた様は……聖女様なのですか?」
「…………え? 聖女?
いえ、私は……」
私の言葉を最後まで聞くことなく、突然男が地面に平伏すと、頭を地に擦り付けて涙を流し始めた。
「おお……おお……本当に聖女様が……!
天は我らを見捨てなかった……!
聖女様、ご無礼をお許しください。
どうか、どうか……私達の世界をお救いください!!」
(ど、どういうこと……?)
そこには、私が今まで見たことの無い景色が広がっていたからだ。
私が立っているのは、小高い丘の上のようで、石畳の階段が下へと続いている。
そのずっと先の方には、小さな木戸があり、その先に街が広がっていた。
街を囲うように星の形に外壁が積み上げられている。
(北海道の五稜郭に少し似ているかも……)
家族で旅行に行った時に見た景色を思い出す。
でも、見える建物の大きさから五稜郭とは比べ物にならないくらい広いのが分かる。
こんな街を私は日本で見たことがない。
(まさか……外国に売られたのかしら)
確か気を失う前に会った、あの男も異国語を話していた。
しかし、誘拐されたにしては、見張りの一人もいないことに疑問を感じる。
(とにかく、ここから離れないと……)
街へ行けば、人がいる。
助けを求めれば、例え言葉は通じなくても、警察を呼ぶくらいはしてもらえるだろう。
それか、電話を貸してもらえれば、誰かに連絡を取ることも……と、そこまで考えて、私は、ある物の存在を思い出した。
(……そうだ! スマホ!)
私は、ポケットに入れていたスマホが未だそこにあることを確認して、ほっとした。
どうして今まで忘れていたのだろう。
取り出して画面にタッチする。
アンテナを確認すると……圏外だった。
これでは、チャットも電話も使えない。
(……仕方ない。
やっぱり街まで行って、誰かに助けを……)
そう思って、石畳の階段へ足を向けた時のことだった。
階段の下の方から誰かが登ってくる。
男の人のようだ。
(やだ……見張りの人が戻って来たのかしら……)
咄嗟に、どこかへ身を隠そうと辺りを見回したが、先程の洞窟以外に身を隠せそうな物は見当たらない。
この丘には、洞窟以外に何もなさそうなので、あの男の人の目的地は、十中八九洞窟だろう。
このまま洞窟へ戻っても、あの男の人が見張りなのだとしたら、捕まって終わりだ。
これが誘拐だとしたら……の話ではあるが。
私がどうしようかと迷っている内に、下から登ってきた男が私を見つけて、声を上げた。
「……だ、誰だっ?!」
その言葉だけで、男が誘拐犯の見張りなどではない、ということが分かって安心する。
犯人であれば、誰だ、とは聞かないだろう。
たまたまここを通り掛かった街の人なのかもしれない。
「ここは、禁域です。
分かっていて、入ったのですか?」
「す、すみません。
私、ここが入ってはいけない場所だとは知らなくて……気が付いたら、あの洞窟の中で寝かされていたんです。
すみませんが……ここは、どこなんでしょうか?」
すると、男の顔が見る見るうちに青ざめて、信じられないものを見たかのような表情に変わる。
(なんだろう……言葉は通じていそうだけど……)
「まさか……まさか、あなた様は……聖女様なのですか?」
「…………え? 聖女?
いえ、私は……」
私の言葉を最後まで聞くことなく、突然男が地面に平伏すと、頭を地に擦り付けて涙を流し始めた。
「おお……おお……本当に聖女様が……!
天は我らを見捨てなかった……!
聖女様、ご無礼をお許しください。
どうか、どうか……私達の世界をお救いください!!」
(ど、どういうこと……?)
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