15 / 63
【本編】
浮気
しおりを挟む
『先輩って、純也先輩と仲が良いですよね。
もしかして、付き合ってたりとか、するんですか?』
『まさか。純也とは、ただの同期よ』
『本当ですか?! 良かったぁ~。
実は私、純也先輩のことが好きなんです。
でも、純也先輩モテるから……。
先輩、私のこと応援してくれます?』
今更、”NO”と言える筈がない。
私は、いつの間にか、純也と女の子たちの恋のキューピット役に選ばれてしまっていた。
要は、そうやって牽制しておくことで、ライバルを一人でも減らそうという魂胆だ。
でも、私には、どうしても純也と付き合っていることを彼女たちに言う勇気がなかった。
水谷百合も、その内の一人だった。
最初は、私のことを”先輩”と呼んで、慕ってくれる可愛い後輩だと思っていた。
でも、彼女から純也への気持ちを打ち明けられてから、彼女は、毎日のように純也とのことを私に逐一報告してくるようになった。
『今日、純也先輩から”可愛い”って言ってもらえたんです』
『純也先輩にランチをご馳走になっちゃいました~』
『純也先輩が私の頭をなでなでしてくれて……きゃあ~もうどうしようかと思っちゃいました~!』
『実は、今度、純也先輩を思い切って、デートに誘ってみようかと思うんです』
百合からのメッセージを見る度、私の心はすり減って、荒んでいった。
(やっぱり、純也が私なんかを本気で好きになるわけがないのよ。
今まで付き合った女の子とは、毛色の違うタイプで珍しかっただけ……きっとすぐに捨てられる)
サークル活動中、純也と百合が二人一緒に居る姿を見かけるだけで、私は、うまく呼吸ができなくなった。
純也は、私と二人きりの時は優しかったけど、純也の優しさは、私だけに向けられているものではないと、私は知っていた。
百合は、愛嬌もあって可愛くて、屈託なく誰とでも打ち解けられて、私よりも純也に釣り合っているように見えた。
『私、純也先輩にキスされちゃいました』
その百合からのメッセージを見た時、私の心に残っていた僅かな自尊心と期待が音を立てて壊れた。
私は、純也へメッセージを送った。
『ごめん、もう無理。別れよう』
顔を見て伝える勇気はなかった。
私は、純也を徹底的に避けるようになった。
純也は、訳が分からないと言ったふうで、しつこく私に付きまとい、理由を尋ねた。
百合とのことを責めるつもりはなかった。
それが決定打ではあったけれど、そのことがなくても、きっといつかこうなっていたと思うからだ。
『最初から合わなかったのよ、私たち。
私なら、もう何とも思ってないから、純也は、純也の好きにしたらいいよ』
私のことは気にせず、百合と付き合いたいなら、そうしたらいい、という意味で伝えたつもりだった。
でも、その言葉は、純也をひどく怒らせた。
『なんだよそれ…………お前って、そんなひでぇ女だったんだな』
何がそんなに純也を怒らせてしまったのか、私には分からなかった。
ただ、それ以来、純也が私に声を掛けることはなくなった。
私は、就活を理由にサークルを辞めた。
純也と百合のいる空間に、あれ以上居続けることは、耐えられなかった。
それでも、同じ大学の敷地で二人を見掛けることがあると、私は、胸がしめつけられるように痛くなり、動悸がして、息も苦しくなった。
その内、大学へ行くのも億劫になり、単位ぎりぎりでの卒業、就活なんて散々だった。
希望していた就職先のほとんどが内定をとれず、結局、好きでも何でもない職業に就く羽目になった。
私の心は、ズタボロだった。
せめての救いは、純也が就活組ではなく、大学院へ進学したことだ。
私の就職先は、大学とは反対の方角にあったので、純也と顔を合わせることもない。
お互いの住んでいる家は、二駅しか離れていないのに、卒業してから今日まで私たちが顔を合わせることも、連絡を取り合うことすらなかった。
(今更、何を送ってきたんだろう……)
私は、恐る恐る純也からのメッセージを開いた。
もしかして、付き合ってたりとか、するんですか?』
『まさか。純也とは、ただの同期よ』
『本当ですか?! 良かったぁ~。
実は私、純也先輩のことが好きなんです。
でも、純也先輩モテるから……。
先輩、私のこと応援してくれます?』
今更、”NO”と言える筈がない。
私は、いつの間にか、純也と女の子たちの恋のキューピット役に選ばれてしまっていた。
要は、そうやって牽制しておくことで、ライバルを一人でも減らそうという魂胆だ。
でも、私には、どうしても純也と付き合っていることを彼女たちに言う勇気がなかった。
水谷百合も、その内の一人だった。
最初は、私のことを”先輩”と呼んで、慕ってくれる可愛い後輩だと思っていた。
でも、彼女から純也への気持ちを打ち明けられてから、彼女は、毎日のように純也とのことを私に逐一報告してくるようになった。
『今日、純也先輩から”可愛い”って言ってもらえたんです』
『純也先輩にランチをご馳走になっちゃいました~』
『純也先輩が私の頭をなでなでしてくれて……きゃあ~もうどうしようかと思っちゃいました~!』
『実は、今度、純也先輩を思い切って、デートに誘ってみようかと思うんです』
百合からのメッセージを見る度、私の心はすり減って、荒んでいった。
(やっぱり、純也が私なんかを本気で好きになるわけがないのよ。
今まで付き合った女の子とは、毛色の違うタイプで珍しかっただけ……きっとすぐに捨てられる)
サークル活動中、純也と百合が二人一緒に居る姿を見かけるだけで、私は、うまく呼吸ができなくなった。
純也は、私と二人きりの時は優しかったけど、純也の優しさは、私だけに向けられているものではないと、私は知っていた。
百合は、愛嬌もあって可愛くて、屈託なく誰とでも打ち解けられて、私よりも純也に釣り合っているように見えた。
『私、純也先輩にキスされちゃいました』
その百合からのメッセージを見た時、私の心に残っていた僅かな自尊心と期待が音を立てて壊れた。
私は、純也へメッセージを送った。
『ごめん、もう無理。別れよう』
顔を見て伝える勇気はなかった。
私は、純也を徹底的に避けるようになった。
純也は、訳が分からないと言ったふうで、しつこく私に付きまとい、理由を尋ねた。
百合とのことを責めるつもりはなかった。
それが決定打ではあったけれど、そのことがなくても、きっといつかこうなっていたと思うからだ。
『最初から合わなかったのよ、私たち。
私なら、もう何とも思ってないから、純也は、純也の好きにしたらいいよ』
私のことは気にせず、百合と付き合いたいなら、そうしたらいい、という意味で伝えたつもりだった。
でも、その言葉は、純也をひどく怒らせた。
『なんだよそれ…………お前って、そんなひでぇ女だったんだな』
何がそんなに純也を怒らせてしまったのか、私には分からなかった。
ただ、それ以来、純也が私に声を掛けることはなくなった。
私は、就活を理由にサークルを辞めた。
純也と百合のいる空間に、あれ以上居続けることは、耐えられなかった。
それでも、同じ大学の敷地で二人を見掛けることがあると、私は、胸がしめつけられるように痛くなり、動悸がして、息も苦しくなった。
その内、大学へ行くのも億劫になり、単位ぎりぎりでの卒業、就活なんて散々だった。
希望していた就職先のほとんどが内定をとれず、結局、好きでも何でもない職業に就く羽目になった。
私の心は、ズタボロだった。
せめての救いは、純也が就活組ではなく、大学院へ進学したことだ。
私の就職先は、大学とは反対の方角にあったので、純也と顔を合わせることもない。
お互いの住んでいる家は、二駅しか離れていないのに、卒業してから今日まで私たちが顔を合わせることも、連絡を取り合うことすらなかった。
(今更、何を送ってきたんだろう……)
私は、恐る恐る純也からのメッセージを開いた。
2
あなたにおすすめの小説
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる