【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~

風雅ありす

文字の大きさ
31 / 63
【本編】

不穏な予感

しおりを挟む
若い職員は、部屋の中を見回すと、ベッドの上で上半身だけ起こしているコウヤを見つけた。
きょとんとした表情で職員の顔を見ると、何かを思い出したように口を”あ”の字に開けた。

「昨日、うちに来た人」

「……はい。インターホンを鳴らしましたが、
 どなたもお出にならなかったので、お留守かと……」

私がコウヤに、インターホンが鳴っても絶対に出ないで!と、強く言い聞かせていたからだろう。
私が仕事へ行っている間に、彼らが来ていたという事実に私は、血の気が引く思いがした。

若い職員は、部屋の中に犬の姿がないことを確認すると、玄関で待っていた年配の職員に向かって頷いて見せた。

「犬は、飼ってらっしゃらないようですね。
 大変失礼致しました」

二人の職員は、確認がとれましたので、と言って軽く会釈をして帰って行った。

私は、扉を閉めると、鍵を閉め、大きなため息を吐いた。

「ファム、大丈夫?」

「ちょっと、昨日あの人たちが来たなら、私に言ってよね。
 はぁー……寿命が縮むかと思ったわ」

「うん……でも、今の人たち、誰だったの?」

コウヤは、事情が分からず、不思議そうな顔で首を傾げている。

「動物愛護センターの職員だって。
 つまり、野良犬とか野良猫、飼い主のいない動物を引き取って、管理する人たち」

いまいちピンと来てなさそうなコウヤに、私は、言うべきかどうか迷ったが、
大事なことなので伝えておくことにする。

「前に、コウヤが純也の腕に噛みついたことがあったでしょ?
 たぶん、そのことで、コウヤを探してるんだと思う」

「俺、行った方がいい?」

「ダメよ! 絶対に見つかっちゃダメ!
 動物愛護センターっていうのは、可愛らしい名前で誤魔化してるけど、
 引き取り手のない犬猫を殺処分してる所なんだから。
 人を傷つけた犬なんて、捕まったら、どうなるか……」

大学のサークルで、犬猫の里親を探す活動をしていたため、私も何度か行ったことがある。
助けてあげられなかった子たちもたくさんいた。
その時の気持ちを思い出し、気分が落ち込んだが、とりあえず今は、コウヤのことだ。

「まぁ、コウヤが人間の姿で居れば、何の問題もないんだから。
 大丈夫よ」

すると、コウヤが少し言いにくそうな顔で頬をつつく。

「あー……そのことなんだけど、俺、実は……」

「何?」

コウヤが上目遣いで私を見る。

「新月の日だけは、人間になれないんだ」

「え?! そうなの??
 ……ってか、新月の日って、いつよ」

私は、慌ててスマホで検索をした。

「……って、明日じゃない!」

私が責めるような目をコウヤに向けると、コウヤは、肩をすくめて見せた。

「なんで新月の日は、人間になれないの?」

「んー……俺もよく分からないんだけど、
 何か月からもらってるエネルギーパワーとかがあんのかなぁ……」

呑気な口調で答えるコウヤを見て、私は、先行きに不安を感じた。

「と、とにかく、家から一歩も外へ出なければいいのよ!
 職員の人たちだって公務員なわけだし、日曜日まで仕事しないでしょう。

 ……いい? 明日は、一日、家の中で大人しくしてて。
 吠えたり、声を出してもダメよ」

「えー、トイレは、どうすればいいの?」

「え……」

それは考えていなかった。
今までコウヤがずっと人間の姿でいたので、普通にトイレを使っていたからだ。

「そ、そうね。じゃあ、ペットシーツを買ってくるわ」

他にも何か必要そうな物はないだろうか、と色々検索をして、私は、近所のスーパーへ走った。
一緒に行くとコウヤは言ったが、また外でさっきの人たちに遭遇しても嫌なので、私一人で行くことにする。
私は、妙な胸騒ぎを感じていたが、それを走っている所為にして、自分に言い聞かせた。

(大丈夫よね……何も起きないわよ、きっと)

スーパーから出て見上げた空は、雲が広がり、余計に私の気持ちを暗くするようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...