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【本編】
動物愛護センター
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(大丈夫……。
一晩経てば、コウヤは、人間の姿に戻れる。
そうしたら、きっと誤解も解けて、無事に帰してもらえるわ)
百合が帰った後、私は、一人で部屋の中をウロウロと歩き回りながら、自分に言い聞かせていた。
(……でも、待って。
それは、それで問題なんじゃない?
突然、犬が人間の姿に変身したら、それこそニュースにでもなって、怪しい研究材料とかにされて、帰してもらえなくなるんじゃ……)
私は、居てもたってもいられず、今すぐにでも保健所へ出掛けて行きたい気持ちをぐっと堪えた。
どの道、コウヤが犬の姿のままでは、いくら私が行って訴えたところで、相手にしてもらえないだろう。
(コウヤ……お願い、私が行くまでは犬のままでいて!)
その夜、私は、久しぶりに一人で夜を過ごした。
明日のために早く寝ようとベッドに入ったが、コウヤのことが気になって、なかなか寝付けない。
(このベッド……こんなに広かったっけ?
シングルなんだけどな……)
思えば、ここ最近ずっとコウヤに抱きしめられながら眠っていた。
布団の中に居るというのに、何故か肌寒く、私は身震いした。
明日のためにも早く寝なくては、と思えば思うほど目が冴えてしまう。
私は、ベッドから出て、ベランダに出ると、空を見上げた。
いつの間にか雨は止んでいたが、曇っていて星一つ見えない。
(まさか、こんなことになるなんて……。
百合のあんな顔……初めて見た。
一体いつから私と純也の関係を知っていたのかしら?)
ずっと隠していたつもりだったのに、彼女が知ったのだとしたら、きっと純也から聞いたのだろう。
私は、純也との関係を親しい友人たちにすら話したことはない。
この前、百合に誘われて一緒に食事をした時は、結婚するのだと嬉しそうに話していた。
その後で、純也から話を聞いたのだろうか。
それとも、もっと前から……?
だとしたら、百合が私を恨むのも無理はないだろう。
恋愛相談をしていた相手が想い人の恋人だったと知ったら、からかわれていたと、馬鹿にされていたのだと受け取っても仕方ない。
そもそも、ずっと私が百合を欺いてきたのだから、当然だ。
(……私の所為だわ。
もっと早く……ううん、最初から正直に純也とのことを伝えていたら、
こんなことにはならなかったかもしれない……)
今更後悔しても、もう遅い。
純也とのことを隠していたことは、百合に謝るべきだろう。
でも、保健所へ通報されて、無理やりコウヤを連れて行かれたことは正直許せない。
とてもではないが、今すぐ謝る気にはなれない。
(コウヤ……お願い、無事でいて……!)
私は、祈るような気持ちで空を見上げた。
そこにある暗い曇天の夜空が、まるでこの先に希望などないと言っているかのようだった。
翌朝の月曜日、私は、溜まっていた有給を取って、動物愛護センターへ向かった。
学生時代、サークルのボランティア活動の一環で、何度か訪れたことがある。
受付で事情を話し、コウヤの特徴を伝えると、しばらく待たされた後に、見覚えのある職員が姿を現した。
昨日、コウヤを連れて行った年配の職員だった。
「コウヤは……昨日、うちから連れて行った大型犬は、無事ですか?!」
カウンター越しに前のめりになって話す私に、その職員は、若干引き気味になりながら、何故だかはっきりしない表情を浮かべた。
「ああ……昨日の……」
「あの子は、元々野良だったんですが……私が責任を持って飼うつもりでいます。
人を襲わないよう、しつけもします。
家も……飼える環境を整えるので……少し時間はかかりますけど。
すぐに返してもらえないなら、せめて少しだけでも会わせてください。お願いします!」
そう言って私が勢いよく頭を下げると、職員の人が困ったような口調で言葉を濁す。
「あー……あの犬ですが、実は」
「まさかもう処分したって言うんですか?!」
私は、思わず両手をカウンターに激しく叩きつけた。
その音に、他の職員の人たちが一斉に何事かと驚いた顔でこちらを見る。
応対してくれている職員は、私の剣幕に気圧されながらも、両手をこちらに見せて肩をすくめた。
「少し落ち着いてください。
今、事情を説明しますから……」
心臓がばくばく音を立てている。
私は、逸る気持ちを抑えながら、職員の説明を待った。
そして、職員の口から語られたのは、驚くべき予想外の内容だった。
一晩経てば、コウヤは、人間の姿に戻れる。
そうしたら、きっと誤解も解けて、無事に帰してもらえるわ)
百合が帰った後、私は、一人で部屋の中をウロウロと歩き回りながら、自分に言い聞かせていた。
(……でも、待って。
それは、それで問題なんじゃない?
突然、犬が人間の姿に変身したら、それこそニュースにでもなって、怪しい研究材料とかにされて、帰してもらえなくなるんじゃ……)
私は、居てもたってもいられず、今すぐにでも保健所へ出掛けて行きたい気持ちをぐっと堪えた。
どの道、コウヤが犬の姿のままでは、いくら私が行って訴えたところで、相手にしてもらえないだろう。
(コウヤ……お願い、私が行くまでは犬のままでいて!)
その夜、私は、久しぶりに一人で夜を過ごした。
明日のために早く寝ようとベッドに入ったが、コウヤのことが気になって、なかなか寝付けない。
(このベッド……こんなに広かったっけ?
シングルなんだけどな……)
思えば、ここ最近ずっとコウヤに抱きしめられながら眠っていた。
布団の中に居るというのに、何故か肌寒く、私は身震いした。
明日のためにも早く寝なくては、と思えば思うほど目が冴えてしまう。
私は、ベッドから出て、ベランダに出ると、空を見上げた。
いつの間にか雨は止んでいたが、曇っていて星一つ見えない。
(まさか、こんなことになるなんて……。
百合のあんな顔……初めて見た。
一体いつから私と純也の関係を知っていたのかしら?)
ずっと隠していたつもりだったのに、彼女が知ったのだとしたら、きっと純也から聞いたのだろう。
私は、純也との関係を親しい友人たちにすら話したことはない。
この前、百合に誘われて一緒に食事をした時は、結婚するのだと嬉しそうに話していた。
その後で、純也から話を聞いたのだろうか。
それとも、もっと前から……?
だとしたら、百合が私を恨むのも無理はないだろう。
恋愛相談をしていた相手が想い人の恋人だったと知ったら、からかわれていたと、馬鹿にされていたのだと受け取っても仕方ない。
そもそも、ずっと私が百合を欺いてきたのだから、当然だ。
(……私の所為だわ。
もっと早く……ううん、最初から正直に純也とのことを伝えていたら、
こんなことにはならなかったかもしれない……)
今更後悔しても、もう遅い。
純也とのことを隠していたことは、百合に謝るべきだろう。
でも、保健所へ通報されて、無理やりコウヤを連れて行かれたことは正直許せない。
とてもではないが、今すぐ謝る気にはなれない。
(コウヤ……お願い、無事でいて……!)
私は、祈るような気持ちで空を見上げた。
そこにある暗い曇天の夜空が、まるでこの先に希望などないと言っているかのようだった。
翌朝の月曜日、私は、溜まっていた有給を取って、動物愛護センターへ向かった。
学生時代、サークルのボランティア活動の一環で、何度か訪れたことがある。
受付で事情を話し、コウヤの特徴を伝えると、しばらく待たされた後に、見覚えのある職員が姿を現した。
昨日、コウヤを連れて行った年配の職員だった。
「コウヤは……昨日、うちから連れて行った大型犬は、無事ですか?!」
カウンター越しに前のめりになって話す私に、その職員は、若干引き気味になりながら、何故だかはっきりしない表情を浮かべた。
「ああ……昨日の……」
「あの子は、元々野良だったんですが……私が責任を持って飼うつもりでいます。
人を襲わないよう、しつけもします。
家も……飼える環境を整えるので……少し時間はかかりますけど。
すぐに返してもらえないなら、せめて少しだけでも会わせてください。お願いします!」
そう言って私が勢いよく頭を下げると、職員の人が困ったような口調で言葉を濁す。
「あー……あの犬ですが、実は」
「まさかもう処分したって言うんですか?!」
私は、思わず両手をカウンターに激しく叩きつけた。
その音に、他の職員の人たちが一斉に何事かと驚いた顔でこちらを見る。
応対してくれている職員は、私の剣幕に気圧されながらも、両手をこちらに見せて肩をすくめた。
「少し落ち着いてください。
今、事情を説明しますから……」
心臓がばくばく音を立てている。
私は、逸る気持ちを抑えながら、職員の説明を待った。
そして、職員の口から語られたのは、驚くべき予想外の内容だった。
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