4 / 80
本編
エルフの秘密と心の距離
しおりを挟む王都から離れるにつれ、少しずつ魔獣のレベルが上がってきていた。
流石に3人も戦闘に混ざってくれるようになって、本格的に魔獣の討伐をこなして行く。
そんなある日。
魔獣を討伐し、日が暮れてきたので今日は森の中で野営をすることになった。
みんなでテントを張ったり、夕食の準備をしていたのだが、フィーネの姿が見当たらない。
少し心配になって近くを探すと、木の根元に座り込み自分の腕に包帯を巻こうとしているフィーネを見つけた。
何だか苦戦している感じなのを見ていると自然に顔が緩む。
「フィーネ」
「……あ、ハヤト」
「貸して」
少し戸惑っているようなフィーネの手から包帯を取り、痛くない様に巻き付けた。
「慣れてる……」
「あぁ、施設のチビたちよく怪我しててさ。手当てするのも日常だったから」
「施設?」
「俺親いないんだ。施設っていうのは事情があって親と暮らせない子どもとかを育ててくれるところ。こっちでいう孤児院みたいな。そこで育ったから年下の子ども達の面倒はよく見てたよ」
「そうなんだ」
こちらの世界では親がいない子どもは珍しくない。だからなのかフィーネからは少ししょんぼりした感じは受けるものの、向こうの世界で感じていた押し付けがましい同情心みたいなのは感じなかった。
「それより、自分の怪我には治癒魔法かけないんだ?」
「うん、あんまりバカスカ治癒魔法かけまくるのも良くないねん、身体が持ってる本来の治癒力が弱っていくから……だから重症とかじゃない怪我なんやったら出来るだけ清潔に保って自分で治す方がいいねん」
「……ん?」
俺には異世界召喚オプションで言語理解の能力が備わっているらしく、いきなり召喚されたにも関わらず最初から言語が理解出来たし文字とかも読めていた。
にも関わらず、今のフィーネの言葉に違和感を感じて首を傾げるとフィーネがはっとした顔をした。
「……っ!ちゃう!ちゃうねん!」
「え?」
関西弁である。
フィーネの口から、日本でもテレビでしか聞いた事がなかった関西弁が飛び出している。
こっち世界にも関西があるのか?
「や、ちゃうことないねんけど、わ、忘れて……」
「なんで?ていうか忘れられないだろ」
困った様に頬を赤く染めて涙目でこちらを見てくるフィーネに何故かドキッとしてしまう。
美形の涙目の破壊力すげぇな……。
「だ、だって……他の種族からしたらエルフっぽくないんやろ?この喋り方」
「……」
「昔から言われててん、『エルフってもっと上品なんだと思ってた』『エルフなのに訛ってるんだーなんかショック』とか。だから異世界から来る勇者様とはちゃんと上品に喋ろって決めててんけど……あかんかったなぁ、すぐバレちゃった」
『なんかごめんな……』フィーネは寂しそうに小さく笑った。
「俺はそのままのフィーネがいいけど」
「え?」
「他のやつとかどうでもいいよ、俺はありのままのフィーネと仲良くなりたい。取り繕ってるフィーネと仲良くなってもそれは本当のフィーネじゃないじゃん?」
「……ハヤト」
「それに」
「ん?」
「訛ってるフィーネの方が可愛くて好きだ。なんか雰囲気が余計柔らかくてフィーネらしいって感じ」
「へ……ぇ?」
「うん、そうだ。誰が何と言おうと訛ってるフィーネは可愛い。だから俺も飾ってないフィーネと仲良くなりたい」
いつの間にかフィーネの顔は真っ赤に染っていて、その尖った耳の先までも真っ赤だった。
35
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる