6 / 80
本編
煙立つ街と赤く染まる耳
しおりを挟む少し遠くに街が見えだした。
レンガ造りの煙突が何本も建ち並び、色とりどりの煙を吐き出している。
「見えた!あれがグラズなのだ!」
目的地が近い事がわかり、テンションが上がったミーグはゴウシュの背中から飛び降りた。
「わぁー、煙突いっぱいやなあ」
「職人街って感じだ……」
フィーネもグラズは初めてのようで、目をキラキラさせている。
「グラズは飯も美味いもんが多いぜー!久しぶりに酒でも飲みてぇな!」
ゴウシュもニカッと嬉しそうだ。
目の前に目的地が見えてきたことで、自然と脚に力が入るのを感じた。
――
「到着!!」
ゴウシュの一声で改めてグラズの街に入ると、どこからともなく金属を打ち付ける音がする。
煤を顔につけ、両手に荷物を抱えて走る少年や、金属のパーツっぽいものや色とりどりの石など、何かわからないものを売っている露店が通りにズラっと並んでいる。
「えっと、とりあえず今日泊まる宿決めて、ほんでからご飯、ほんで魔道具探し……ってことでええかな?」
フィーネが指を折りながらグラズでしなければならない事を確認している。
「だな、魔道具探すついでに武器のメンテしてくれそうなとこと、携帯出来る食料売ってるとこも探すか」
「決まりだの!我は飯がうまいおすすめの宿でも聞いて来ようぞ!」
すっかりテンションの上がったミーグは、そのまま広場の方に向かって走っていってしまった。
見た目が中学生だからあっ!と思ってしまったけど、中身は120歳なんだった。まあ、大丈夫だろう。
その後ミーグが街の人に聞いてきてくれたおすすめの宿屋に向かう。あまり余計なことにお金を使わない事にしているので二人部屋を二部屋用意してもらった。
「へ、部屋割りってどうする……?」
なんとなくフィーネがモジモジしながら口を開くと、ゴウシュとミーグが顔を合わせてニヤニヤしだす。昔なじみの三人の間では何かあるのだろうか。
誰かのいびきがすごいとか?寝相が悪いとか?
「我はゴウシュと同じ部屋でよい。なぁ、ゴウシュ!」
「そうだな、どうせ俺はミーグと飲みに行くし、俺とミーグ、フィーネとハヤトでいいだろ」
「っ……は、ハヤトは?それでも大丈夫……?」
またフィーネの耳の先が赤くなっている。
「いいよ?」
そう答えると何故かフィーネはホッとしたような顔をしていた。
宛てがわれた部屋に入り荷物を置くと、やはりおすすめされただけあって清潔で広さも申し分ない。……のだが。
「……あれ?」
ベッドがひとつしかない。しかもダブルだ。
隣のフィーネもそれに気付いたようで声をあげる。
「ふっ、二人部屋ってベッドが二つなんやと思ってた……」
「俺も。……ちょっと聞いてくるわ」
フロントに降りて確認すると、今日は人が多いらしくもう部屋の空きはないとのことだった。
今から宿を変えるのは得策ではないし、最悪部屋の真ん中にあったソファーで寝ればいいか。
フィーネにその事を伝えようと部屋に戻ると、同じ姿勢で固まったまま突っ立っていた。
「ダメだった。今日は満室なんだって」
「……そっ、そっかあ」
フィーネが視線を伏せ、モジモジと指を絡める。耳の先がまた赤い。
「俺がソファーでいいよ?」
フィーネも見せないだけで疲れてるだろうし、俺はどこでも寝れる派なので毛布さえ貸してくれればそれでいい。
なのでそう提案すると、フィーネははっ!と顔を上げた。
「そんなんあかん!ハヤトは慣れへん旅で疲れてるねんから!」
「それはフィーネもじゃん」
「ぼくは元々森の里で育ってるし!」
「……?じゃあ一緒にベッドでいい?結構デカいし、このベッド」
「~~~~ッッ!!!!」
フィーネはついに顔を真っ赤にして背中を向けてしまった。
なんか肩も震えてる気がする。
「……やっぱやだ?」
何だか申し訳ない気持ちになってそう言うと、フィーネは肩をびくっと揺らし、バッとこちらを見た。
そして口を開けたり閉めたりを繰り返した後。
「いっ!一緒に寝よ!!!!」
「……?わかった」
その顔を見て何だか久しぶりにトマトが食べたくなった。
43
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる