15 / 80
本編
勇者の言葉と心の温もり[sideフィーネ]
しおりを挟むそんなこんなで月日は過ぎて、ミーグとゴウシュはハヤトの旅立ちに問題ないと太鼓判を押した。
ぼくも意見を聞かれたけど、ハヤトなら大丈夫、何も問題ないよ、と言った。
あれから休憩時間に弓を教えたりしながら(すぐ出来るようになってびっくりした)少しずつ仲良くなって、ハヤトはよく笑いかけてくれるようになった。
口調もお互い柔らかく話せるようになったとも思う。
そして、ぼくたち4人は旅立つことになった。
――
その日は魔獣がよく出てきて、何度も討伐をした。
みんな疲れていたので、近くで野営しよう、ということになった。
みんながテントや食事の準備をしてくれている間、ぼくはミーグにことわって、少し離れた木の根元に座って自分に包帯を巻こうとしていた。
(うまく手がまわらへん……)
戦闘中に折れた枝でサクッと腕を切ってしまった。
サクッととはいえ、ちゃんと処置しないと色々と良くない。治癒魔法を使えばいいやんって言う人もおるけど、軽い傷は自分の治癒力で直すのがいいとぼくは思ってる。
利き手の方を怪我してしまったので、中々上手く巻けずに格闘していると、誰かの気配がした。
「フィーネ」
「あ、ハヤト……」
なんでここに……って言う前に、ハヤトはそっとぼくの手元にしゃがみ込んできて、優しく微笑んだ。
「貸して」
言葉の前に、もう手が動いてた。
包帯をするりとぼくの手から取り上げて、自然な動きで巻き始める。
「慣れてる……」
「あぁ、施設のチビたちよく怪我しててさ。手当てするのも日常だったから」
施設……?
聞き慣れん言葉に、首を傾げたぼくに、ハヤトは当たり前のように話し出してくれる。
自分が育った場所、家族がいなかったこと、そして小さな子たちの面倒を見てたこと。
こっちの世界では、孤児とかは結構少なくはない。
話を聞いてる分には平和やと思ってたハヤトの世界にもそういう子が沢山おるって知って、ハヤトが育ってきた環境を聞いて、そっかって思った。
だからハヤトは優しくて少し寂しそうなんや……。
「それより、自分の怪我には治癒魔法かけないんだ?」
「うん、あんまりバカスカ治癒魔法かけまくるのも良くないねん、身体が持ってる本来の治癒力が弱っていくから……だから重症とかじゃない怪我なんやったら出来るだけ清潔に保って自分で治す方がいいねん」
「……ん?」
……あ。
しまった。思わず普段のしゃべりが出てしもた。
ハヤトが首を傾げたのを見た瞬間、心臓がどきんと跳ねた。
「……っ!ちゃう!ちゃうねん!」
「え?」
やってもーた……。
思ってもないほど、ぼくの心は焦ってた。
異世界から来た“勇者様”には、ちゃんと上品な言葉で話そうって決めてたのに……。
どうしよう、ハヤトにもガッカリされたら……。
でも――
「俺はそのままのフィーネがいいけど」
その一言で、全部、崩れた。
嬉しくて、びっくりして、でも信じられなくて。
ハヤトが続ける言葉ひとつひとつが、じんわり胸の奥に染み込んでくる。
「訛ってるフィーネの方が可愛くて好きだ」って。
「俺も飾ってないフィーネと仲良くなりたい」って――。
……耳の先まで、熱い。
頬が火照って、心臓がうるさいくらい鳴ってる。
(……あかん。そんなこと言われたら……)
33
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる