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本編
眠りとぬくもりの間[sideフィーネ]
しおりを挟むお風呂から上がると、ハヤトがこちらに背を向けて荷物を整理していた。
物音がしたのか、振り向いたハヤトは少し驚いた顔をしている。
そのまま立ち上がって無言で近付いてきた。
(もももも、もしかして……っ!)
「髪、びしょ濡れのままだと風邪ひくぞ?」
「あ、ありがとぉ……」
そう言って風魔法で優しく乾かしてくれたのだった。
何かガッカリしてしまっている自分にちょっとだけ引いた。ハヤトはそんないきなり襲ってきたりとかする不誠実な人ではないのに。
……ハヤトにやったら襲われてもええけど……ってあほか!何考えてるんやぼくは!
脱いだ服も片付けてしまったし、あとはもう寝るしかない。
荷物が詰め込まれたカバンを見つめても、どうしようもない。解決法は『もう寝てまう』しかなかった。
「フィーネ、もう寝る?」
「!!う、うん!」
ハヤトの声にビクッと肩が跳ねる。
慌てて頷きながらベッドに向かい、挙動不審にならないように必死でなんとか布団に潜り込んだ。なるべく壁側に。壁だけをじっと見つめて。
少しして、ハヤトもベッドに入ってくる。
その重みで少し沈んで、背後から布がすれる音が聞こえた。
ほんのりハヤトの体温も感じる。思ったより近い。心臓の音がハヤトにも聞こえてしまいそう。
「フィーネ、寒くない?」
「う、うん。あったかい……」
むしろ暑いです……と思いながら答えると「そっか」とハヤトが笑った気がした。
固く閉じたまぶたの裏に、あの優しい笑顔が浮かぶ。
(こうやって人と寝るのって、そういえばめっちゃ久しぶりや。ハヤト、あったかい……)
少しずつ緊張がほどけて、ふわふわとした気持ちになる。
ハヤトとこうして寝れるなんて……ちょっと幸せかも。
背後にいるハヤトの背中を意識しながら、まぶたに入れていた力をそっと抜いた。
――
「……!?」
いつの間にか寝てたみたいやけど、何かにぐいっと引っ張られて目が覚めた。
目を開けると真っ暗で余りよく見えへんけど、目の前が白い。……壁?
そっと上を見ると、人の顎が見えた。
「へ?」
戸惑ってる内に腰に重みが乗る。
気付けば、ハヤトの腕の中にすっぽり収まってしまっていた。
(ひ、ひぇ~!!!ど、ど、どうしよ!!!!)
全身が熱い。
なんとか抜け出そうとモゾモゾ動いてみたけど、疲れてるハヤトを起こすわけにはいかない。
しかも、ぼくが動く度にハヤトの腕の力は強くなっていく。
……もうあかん。
諦めて身体から力を抜くと、頭の上から「ふっ」とハヤトの笑う声が聞こえた。
そしてさらに、ぎゅっと抱き締められる。
起きたんかな?と思ってこっそり覗き見たハヤトは相変わらず寝てたけど、優しく微笑んでいた。
……夢の中で誰を抱きしめてるんやろ。
そんなことを考えたら、ぎゅっと胸が苦しくなった。
ハヤトが優しく微笑んで抱きしめる相手がぼくやったらいいのに。
ドキドキして、嬉しくて、でも切ない。
なんか泣きそうになってきた。
(ハヤト、すきやで……)
いつの間にこんなに好きになってしまったんやろう。涙の膜で目の前が滲んでいく。
どうせ寝てるし、今だけ……。
そう思って、自分からもハヤトに近付いてそっと胸に顔を埋めた。
ハヤトのお日様と石鹸みたいな匂いに包まれて、安心して、そのまま眠ってしまった。
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