召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

それぞれの距離

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 ほのかに朝日が差し込む部屋の中、心地よいまどろみを破ったのは、腕の中で「ん……」と甘えるように頭を胸に擦り付けてくる存在だった。

 (俺……またフィーネを抱きしめてたのか……)

 昨日と同じく腕の中にすっぽりと収まる温かさに、覚醒したばかりだというのに心臓がドコドコとうるさい。
 香ってくる花の香りに無意識に深呼吸をすると、頭の奥がじわっと痺れるようだった。

 今日は起こさないようにゆっくりとベッドから抜け出す。

「……ふふ」

 温もりを失ったからなのか、寝ているはずなのに腕をゴソゴソと動かして何かを探しているフィーネが可愛い。

 ――

 起きてきたフィーネと2人で食堂に降りると、そこにはもうミーグとジルクが座っていた。
 ジルクの膝の上にミーグが座っているのは昨日と変わらないのだが、今日はミーグがパンにバターを塗ったりしてジルクの世話をやいている。

「ミーグ、ジルクおはよう」
「おお、ハヤト、フィーネおはよう」
「おはよ……」
「2人ともおはよぉ、ジーくんまだ眠そうやね?」

 フィーネの言う通りジルクの目はとろんとしており、ときおりミーグの首筋に頭を埋めている。
 なんていうか雰囲気がエロい。

「こやつは低血圧での、朝は苦手なんじゃ」
「……ちゃんとベッドで寝たの久しぶりだったんだもん……ふわぁぁ……」

 そういえばジルクはミーグに言われて単独で魔王を探っていたのだった。

「ありがとう、ジルク。危険は無かったのか?」
「ん、1人で勝てそうなやつにしか会わなかったからだいじょうぶ……」
「なら良かった」

 俺とジルクの会話を聞き、ミーグが労わるようにジルクの頭をぽんぽんと撫ぜ、それに嬉しそうに擦り寄るジルク。2人の雰囲気は何となく昨日より甘く感じた。

 4人で話しながら朝食を食べていると、食堂のドアが開き、見慣れた2人が入ってきた。

「みんなおはよー!」
「お前らもうみんな揃ってんのか、おはようさん」

 シャンとゴウシュだ。
 それぞれ挨拶を返している間に席に着いた2人はメニューを見て楽しそうに話している。

「なんか……シャンとゴウシュってこの前知り合ったとは思われへんぐらい仲良しよな??」

 フィーネがそう言うと、何故かやっと意識がはっきりしてきたジルクが驚いていた。

「え?シャンって元からゴウシュのツレだったんじゃねーの?」
「んん?ぼくとみんなはこの前この街で会ったんだよー?2日?3日?前!」
「えぇ?」
「俺のツレでお前が知らねぇ奴なんかいねーじゃねぇかよ」
「いや、そんなんわかんねえじゃん。俺騎士団の奴とか顔覚えらんねーし」
「……ほんっとお前は興味がわかりやすいよな」
「そんなんはいんだよ、今は。3日?にしては懐きすぎじゃね?それ」

 『それ』とジルクが指さした先を見ると、きょとんとした顔でゴウシュと腕を組むシャンがいた。
 広場の暴発事件からこの2人はずっと引っ付いていたので違和感が仕事しなかったのだが、言われてみたら確かにそうだ。

「んん?」
「……んん?」

 シャンとゴウシュは顔を見合わせて頭にハテナマークを浮かべている。シャンはともかく、ゴウシュの違和感も仕事をしていないらしい。

「ぼくとゴウシュは仲良しだよ?」
「仲良し……って言われるとなんか照れるが……シャンと一緒にいるのはたのしいな」
「うへへ♡ぼくも!ぼくもゴウシュといるとたのしー!♡」

 シャンはゴウシュにガバッと抱きつき、ゴウシュはそんなシャンの頭をわしゃわしゃと掻き回した。
 
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