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本編
媚薬の迷宮2
しおりを挟む右の通路に進んでからも、道幅はさほど変わらず、甘ったるい香りと霧の色は更に濃度を増していく。
身体にまとわりつく熱気から逃れられなくなってきていて、皆がギリギリのところで正気を保っている。
「……っ、行き止まりだ」
先頭のゴウシュが忌々しげに呟く。
前方には石の壁が立ちはだかり、繋ぎ目すら見当たらなかった。
「……仕方ねぇよ、ちょっと休憩しようぜ」
ジルクは満身創痍で壁に寄りかかった。
前に進めなくなったことで少し緊張の糸が緩んだのだろう。
ゴウシュは念の為、目の前に壁のあちこちを触ってギミックなどが隠されて居ないかを確認している。
その時だった。
床が眩く光だし、天井から甘い匂いの霧が大量に流れ込んで来た。
「罠か!?」
ハヤトたちは素早く戦闘態勢を取ったが、何も現れない。
そのままハヤト達は光に包まれて消えた。
――
眩い光が消えて、ハヤトたちが目を開けると、いつの間にか別の場所へと出ていた。
「転移だったようだの」
ミーグは戦闘態勢を維持したまま辺りを見回している。
そこは先程の入り口と同様石造りの部屋になっており、ひとつだけ奥へ進めるのであろう通路がぽっかりと口を開けていた。
「……入り口に戻ってきたんかな?」
「……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「とりあえずまた前に進むしかねぇな」
フィーネの一言にハヤトが返事をすると、ゴウシュは再び剣を握り直し前へと進み出した。
石造りの通路を真っ直ぐ進んでいくと、今度はつきあたりに木製の扉が現れた。
進むしかないと分かっているため、ゴウシュは慎重にその扉を開ける。
「……鏡?」
扉を開けた先は、全面鏡張りになった小さな部屋だった。
「これは行き止まりとは別なのか?」
そのゴウシュの疑問に誰も答えられなかったが、後戻りしてもどうにもならない為、6人全員でその部屋へと進む。全員が入ると、扉がバタンと音を立てて閉まり、跡形もなく消えてしまった。
「……閉じ込められたってことかよ」
中に入ってみると壁どころか床も天井も全てが鏡になっていた。扉があった方の壁も鏡に変化している。
無数の自分たちの姿が終わりなく見え、その奥の闇が怪しさを増していた。
「わぁ、ぼくたちがいっぱいいる!」
シャンは不用心に目の前の鏡に触れようとしてピタリと立ち止まった。
「……え?」
鏡には戸惑う自分の顔と、こちらを見て微笑むゴウシュが映っていた。
シャンは思わず後ろを振り返ったが、ゴウシュはシャンの右隣に立っているし、こちらを見ていない。
「……あれれ?」
再び鏡に視線を戻すと、鏡の中のゴウシュは鏡の中の『シャン』に抱きつき、しなだれかかっていた。
ゴウシュの金色の目は潤み、顔を赤く染め、『シャン』の顔中にキスをしている。
「……な、んで?ゴウシュ……?」
シャンの胸がドクリと大きな音を立てた。
見た事もないゴウシュの表情に頭が混乱し始める。
そして、鏡から目が離せなくなっていた。
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