召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

文字の大きさ
43 / 80
本編

媚薬の迷宮2

しおりを挟む

 右の通路に進んでからも、道幅はさほど変わらず、甘ったるい香りと霧の色は更に濃度を増していく。
 身体にまとわりつく熱気から逃れられなくなってきていて、皆がギリギリのところで正気を保っている。

「……っ、行き止まりだ」

 先頭のゴウシュが忌々しげに呟く。
 前方には石の壁が立ちはだかり、繋ぎ目すら見当たらなかった。

「……仕方ねぇよ、ちょっと休憩しようぜ」

 ジルクは満身創痍で壁に寄りかかった。
 前に進めなくなったことで少し緊張の糸が緩んだのだろう。
 ゴウシュは念の為、目の前に壁のあちこちを触ってギミックなどが隠されて居ないかを確認している。

 その時だった。

 床が眩く光だし、天井から甘い匂いの霧が大量に流れ込んで来た。

「罠か!?」

 ハヤトたちは素早く戦闘態勢を取ったが、何も現れない。
 そのままハヤト達は光に包まれて消えた。

 ――

 眩い光が消えて、ハヤトたちが目を開けると、いつの間にか別の場所へと出ていた。

「転移だったようだの」

 ミーグは戦闘態勢を維持したまま辺りを見回している。
 そこは先程の入り口と同様石造りの部屋になっており、ひとつだけ奥へ進めるのであろう通路がぽっかりと口を開けていた。

「……入り口に戻ってきたんかな?」
「……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「とりあえずまた前に進むしかねぇな」

 フィーネの一言にハヤトが返事をすると、ゴウシュは再び剣を握り直し前へと進み出した。

 石造りの通路を真っ直ぐ進んでいくと、今度はつきあたりに木製の扉が現れた。
 進むしかないと分かっているため、ゴウシュは慎重にその扉を開ける。

「……鏡?」

 扉を開けた先は、全面鏡張りになった小さな部屋だった。

「これは行き止まりとは別なのか?」

 そのゴウシュの疑問に誰も答えられなかったが、後戻りしてもどうにもならない為、6人全員でその部屋へと進む。全員が入ると、扉がバタンと音を立てて閉まり、跡形もなく消えてしまった。

「……閉じ込められたってことかよ」

 中に入ってみると壁どころか床も天井も全てが鏡になっていた。扉があった方の壁も鏡に変化している。
 無数の自分たちの姿が終わりなく見え、その奥の闇が怪しさを増していた。

「わぁ、ぼくたちがいっぱいいる!」

 シャンは不用心に目の前の鏡に触れようとしてピタリと立ち止まった。

「……え?」

 鏡には戸惑う自分の顔と、こちらを見て微笑むゴウシュが映っていた。
 シャンは思わず後ろを振り返ったが、ゴウシュはシャンの右隣に立っているし、こちらを見ていない。

「……あれれ?」

 再び鏡に視線を戻すと、鏡の中のゴウシュは鏡の中の『シャン』に抱きつき、しなだれかかっていた。
 ゴウシュの金色の目は潤み、顔を赤く染め、『シャン』の顔中にキスをしている。
 
「……な、んで?ゴウシュ……?」

 シャンの胸がドクリと大きな音を立てた。
 見た事もないゴウシュの表情に頭が混乱し始める。
 そして、鏡から目が離せなくなっていた。

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

「レジ袋はご利用になりますか?」

すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。 「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。 でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。 天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。

無慈悲な機械は逃げる穴を執拗に追いかける

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

解れきった穴は男根で更に甘くいたぶられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...