50 / 80
本編
媚薬の迷宮9
しおりを挟む「……お前、誰なんだよ」
ハヤトはフィーネの肩を掴み、強く引き離した。
『……フィーネやで?わからんなってもーたん?』
目の前のフィーネは『これもダンジョンの罠かな?』と無邪気に笑っている。
見た目はどこからどう見てもフィーネだった。だが、今のハヤトにはそれが何かの化け物の様にしか見えなかった。
「……お前はフィーネじゃない。フィーネは……」
『……』
「俺の知ってるフィーネは、どうしようも無く優しくて、誰かを、困ってる誰かを見捨てられる様な人じゃない。魔王のことを投げ出して自分の欲を優先するようなやつじゃねぇんだよ!……優しくて、強くて、立派な人なんだよフィーネは!お前ごときがフィーネを穢してんじゃねぇよ!」
ハヤトは怒りに任せて剣を地面に突き刺した。
その瞬間。
バリーンッ!
『ざぁーんねん♡』
『フィーネ』がニヤリと笑った。
剣を突き刺した足元から、鏡が割れるようにボロボロと崩れ落ちていく。
「俺はフィーネのとこに帰る」
ハヤトの目が真っ直ぐに前を見据えた。
光が溢れ、空間が崩壊していった。
――
無数の光の粒が弾けるように舞う中、ハヤトの足元にしっかりとした地面が戻った。
石畳の感触と、湿った空気。かすかな甘い香り。
ハヤトはダンジョンの中に再び立っていた。
どさり、と音がして振り返ると、俯いて両手で顔を隠したフィーネが座り込んでいた。
「……フィーネ!!」
「……っ、ハヤト……ッ」
ハヤトの声で顔を上げたフィーネは、頬を上気させ、髪が乱れている。
「ハヤト、無事でよかった……!あ、あの、えっと……」
泣きそうになりながら、何かを誤魔化すかの様に言葉を探すフィーネをハヤトは黙って力強く抱きしめた。
「……え?!」
フィーネの身体がピタリと止まる。
抱き締めれば、何故惑わされていたのだろうと思うほどの安心感とフィット感があった。
ふんわりと香る花の香り、温かな体温。
どれもがハヤトの知っている本物のフィーネだった。
「……フィーネ」
「うん、ハヤト……」
そっと抱き締め返してくれた腕の温もりに、胸が締め付けられ泣きそうになる。
「……好きだ」
「……え」
「フィーネの事が好きだ」
思わずそう呟くと、背中に回された腕の力がギュッと強くなった。
「……ぼくも、ぼくもハヤトの事好きや」
2人の声は胸の奥から絞り出されたかのように掠れていたが、お互いの耳にハッキリと届いた。
ぴたりと額と額を合わせ微笑み合うと、そっと唇が重なり合う。
フィーネの身体がびくりと震えたが、逃げようとはしなかった。
柔らかい感触、確かなぬくもり。
本物のフィーネに触れてハヤトの胸が震える。
何度か角度を変えてキスをすると、ハヤトの胸がそっと押された。
「……っ、これ以上したら我慢するんしんどくなるから……」
「……フィーネにもそんな欲求あるんだ?」
「あっ、あるよ……!そりゃ!」
「俺だけかと思ってたから嬉しい」
「う、あ……」
耳の先まで赤くなったフィーネが愛おしくなってハヤトはそっと微笑んだ。
32
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「レジ袋はご利用になりますか?」
すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。
「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。
でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。
天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる