召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

媚薬の迷宮9

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「……お前、誰なんだよ」

 ハヤトはフィーネの肩を掴み、強く引き離した。

『……フィーネやで?わからんなってもーたん?』

 目の前のフィーネは『これもダンジョンの罠かな?』と無邪気に笑っている。
 見た目はどこからどう見てもフィーネだった。だが、今のハヤトにはそれが何かの化け物の様にしか見えなかった。

「……お前はフィーネじゃない。フィーネは……」
『……』
「俺の知ってるフィーネは、どうしようも無く優しくて、誰かを、困ってる誰かを見捨てられる様な人じゃない。魔王のことを投げ出して自分の欲を優先するようなやつじゃねぇんだよ!……優しくて、強くて、立派な人なんだよフィーネは!お前ごときがフィーネを穢してんじゃねぇよ!」

 ハヤトは怒りに任せて剣を地面に突き刺した。
 その瞬間。

 バリーンッ!

『ざぁーんねん♡』

 『フィーネ』がニヤリと笑った。
 剣を突き刺した足元から、鏡が割れるようにボロボロと崩れ落ちていく。
 
「俺はフィーネのとこに帰る」

 ハヤトの目が真っ直ぐに前を見据えた。
 光が溢れ、空間が崩壊していった。


 ――

 無数の光の粒が弾けるように舞う中、ハヤトの足元にしっかりとした地面が戻った。
 石畳の感触と、湿った空気。かすかな甘い香り。
 ハヤトはダンジョンの中に再び立っていた。

 どさり、と音がして振り返ると、俯いて両手で顔を隠したフィーネが座り込んでいた。

「……フィーネ!!」
「……っ、ハヤト……ッ」

 ハヤトの声で顔を上げたフィーネは、頬を上気させ、髪が乱れている。

「ハヤト、無事でよかった……!あ、あの、えっと……」

 泣きそうになりながら、何かを誤魔化すかの様に言葉を探すフィーネをハヤトは黙って力強く抱きしめた。

「……え?!」

 フィーネの身体がピタリと止まる。
 抱き締めれば、何故惑わされていたのだろうと思うほどの安心感とフィット感があった。
 ふんわりと香る花の香り、温かな体温。
 どれもがハヤトの知っている本物のフィーネだった。

「……フィーネ」
「うん、ハヤト……」

 そっと抱き締め返してくれた腕の温もりに、胸が締め付けられ泣きそうになる。

「……好きだ」
「……え」
「フィーネの事が好きだ」

 思わずそう呟くと、背中に回された腕の力がギュッと強くなった。

「……ぼくも、ぼくもハヤトの事好きや」

 2人の声は胸の奥から絞り出されたかのように掠れていたが、お互いの耳にハッキリと届いた。

 ぴたりと額と額を合わせ微笑み合うと、そっと唇が重なり合う。
 フィーネの身体がびくりと震えたが、逃げようとはしなかった。

 柔らかい感触、確かなぬくもり。
 本物のフィーネに触れてハヤトの胸が震える。
 何度か角度を変えてキスをすると、ハヤトの胸がそっと押された。
 

「……っ、これ以上したら我慢するんしんどくなるから……」
「……フィーネにもそんな欲求あるんだ?」
「あっ、あるよ……!そりゃ!」
「俺だけかと思ってたから嬉しい」
「う、あ……」

 耳の先まで赤くなったフィーネが愛おしくなってハヤトはそっと微笑んだ。

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