召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

媚薬の迷宮10

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 ゴウシュは鏡から抜け出せた後も呆然としていた。
 相手は幻影で、抜け出せたとはいえ自分の奥底にあんな欲求が潜んでいたのだと見せつけられてしまったのだ。恐怖からか、それとも別の何かか。身体の小さな震えが止められない。

「……ゴウシュ」

 後ろから小さくシャンが声を掛けてきた。
 ゴウシュはその声にびくりと肩を震わせたが、振り向くことが出来ない。

「ゴウシュ」

 もう一度名前を呼ばれ、だらりと降ろしていた右手をそっと握られた。

「……俺なんかに近づかない方がいい」
「……どうして?」
「……」

 シャンからは俯くゴウシュの表情が見えない。
 だが、震えた手は振りほどかれなかった。

「……あのね、ゴウシュ。ぼくね、ゴウシュに謝らないとって思って」
「……」

 今のゴウシュは全ての事を悪い方へと考えてしまっているのだろうか、肩が再びビクリと震えていた。
 いつも前線で戦うゴウシュからは想像もつかない、ひどく頼りない背中だった。
 返事がないが耳を傾けているのであろう雰囲気を感じ、シャンは言葉を続けた。

「……ぼくね、鏡の中でゴウシュがぼくの上に乗ってえっちなことしてるのに、止めなかった」
「……え?」
「ゴウシュ可愛いな、美味しそうだなって思ったらもっともっと見てたくなっちゃって……ぼくがゴウシュのこと触ったら、ゴウシュはもっとえっちになってくれるのかな?って思って……触らなかったけど……」
「……シャン?」
「工房のみんながね、言ってたんだ『えっちなことは大人になったら好きな人とするものだ』って。ゴウシュのこと初めて会ったあの日からずっと大好きだけど、えっちなことをしたい大好きだって幻のゴウシュ見て気づいたんだ……だから、んと、えーっと、えっちな目でゴウシュのこと見ちゃってごめんね……?」

 バッ!と勢いよくシャンを振り返ったゴウシュの目は信じられない物を見るかのように見開かれていた。
 その顔は真っ赤になっていて、はくはくと開閉する口からは言葉らしい言葉は出てこない。

「おっ、おまえ……っ」
「ゴウシュは誰の幻を見たの?ぼくだったらいいのにな、……他の人だったらちょっとやだな」

 少し尖ったシャンの唇を見ながら、ゴウシュは現実逃避するかのように『こいつでも嫉妬とかするんだな……』とつい考えてしまった。

「……言わなくてもいいけど。ねぇゴウシュ」
「な、なんだ?」
「ぼく、多分もうゴウシュのこと、これからずーっとえっちな目で見ちゃう。……こんなぼくはやだ?気持ち悪い?」

 拗ねていたかと思えば今度はしゅん俯くシャンに、ゴウシュの心臓がきゅーっと握りつぶされた様な気がした。

「……気持ち悪くなんかねぇよ」
「……ほんと?ゴウシュ、優しいから言いにくい?」
「ちげぇ。……俺だってお前の幻見たんだし」
「っえ?!」

 ボソボソと小さく早口に告げられた内容にシャンの目が驚きで丸くなる。ゴウシュの真っ赤な顔を見た瞬間、シャンの頭の中で何かが弾けた。
 気が付いた時にはもう、シャンはゴウシュに抱きついていた。

「ゴウシュ!すき!だいすき!」
「……俺も」

 いつもは『はいはい』と流される言葉がきちんと受け止められた瞬間だった。

「これからえっちなこといっぱいしようね!!」
「……おいおいな」

 
 
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