召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

昇愛の階段2

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 段を上がると、再び目の前に文字が浮かび上がってきた。

 『見つめ合い、心を伝えよ』

「……またなんか恥ずかしいやつやん」
「確かに照れくさいな……」

 そう言いながらも、2人は手を繋いだままお互いに向かい合った。
 目と目が合った瞬間、じんわりと頬が熱を帯びた。
 ただ見つめ合っているだけなのに、胸がぎゅうっと締め付けられ、何かがせりあがってくるように呼吸が浅くなる。
 

「……さっきは勢いで言っちゃったんだけど」
「……うん」
「俺、本当にフィーネのことが好きだ。優しくて、真っ直ぐしなやかな心も、恥ずかしがり屋ですぐに赤くなる耳も。フィーネからしたら俺なんか赤ん坊みたいな年齢だとは思うけど、……それでも、もし叶うならこれからもずっとフィーネと、フィーネの隣で生きていきたい。好きだ」

 ハヤトの真剣な言葉が真っ直ぐにフィーネの胸に届く。フィーネは小さく頷きながら耳を赤く染め目を潤ませていた。
 暖かい気持ちでいっぱいになったフィーネの口からも、自然と言葉が溢れ落ちてきた。

「……最初勇者様が召喚されてきた時、全然関係ない世界に連れてこられて、こんなに若いのに全部背負わせることになってしまって申し訳ないなって思ってて。だから、なるべくしんどい事が少なくなったらいいなって思ってそばにおったんやけど……」

 フィーネはハヤトの黒い目をじっと見た。
 そこには初めてハヤトを見た時の、迷子の子どものような不安はもう見えない。

「でも、今は勇者様やからとかじゃなくて……、ハヤトやから、ハヤトがしんどいこととか、悲しいことが少しでもなかったらいいなって思う。し、もしそういう事があった時に、ぼくが隣にいれたらいいなって思う。嬉しい時も、楽しい時も、全部隣におりたい。……あと、ハヤトが前、ありのままのぼくでおっていいって言うてくれてめっちゃ嬉しかってん。そう言うてくれた時からもうハヤトが好きやったんかもしらん……」
「フィーネはそのままで全部かわいいよ」

 ハヤトは、嬉しそうに微笑んでいる。それを見てフィーネも嬉しくなった。
 2人の間にしんとした空気が流れる。

 フィーネの言葉を受け止めたハヤトは、フィーネの手を引き、そっと抱きしめた。
 2人の身体がぴったりとくっつき、お互いの心臓の音もドクンドクンと重なり合っているように感じる。
 フィーネもハヤトを抱きしめ返しながら、一緒に眠った時のことを思い出していた。
 あの時のような、切なく苦しい気持ちはもうない。
 これからは、こっそりではなく、堂々とこの胸に寄りかかってもいいのだと言う喜びが、足元から湧き上がってくる。

 顔を埋めるように抱き込まれ、ハヤトの息がフィーネの耳元にかかると、フィーネの身体がびくりと反応した。ハヤトの手は無意識にフィーネの背中を撫でている。

 胸がふわふわとして、どうしようもなく心地がいい。

 (なんか、寝てまいそう……)

 フィーネは完全に身体の力を抜き、ハヤトに甘えきっている。

「……フィーネ」
「んっ……♡」

 だが、耳元で名前を呼ばれるとお腹の奥がじん……と熱くなった。
 もっと触れたい、もっとハヤトを感じたい。

 フィーネは100年以上生きてきて、初めての感情に戸惑う。

 するとまた音が響き、2人の位置が高くなった。
 新しい段が出現したのだ。

「クリアだな」
「……うん」

 離れがたく思った2人は、もう一度ギュッと抱きしめ合うとそっと身を離し、再び照れくさそうに微笑みあった。

 
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