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4(sideひな)
しおりを挟む手がさらにギュッと握りこまれて、あーくんは目をまん丸にしている。
「……ひな、もう俺と結婚してくれないの?そんなに嫌になっちゃった?」
「え?俺あーくんと結婚するの?」
「え……?ひなが、言ってくれたじゃん」
そう言ってあーくんはスマホを操作して、画面をこちらに見せてきた。
『あーくん!ひなね、おおきくなったらあーくんとけっこんしたいなぁ』
『ぼくも!ひなとずっといっしょにいたい!ひな、ぼくとけっこんしよっ』
『うんっ!やったぁ!あーくんだいすき!ちゅっ』
それは5歳ぐらいの俺とあーくんが結婚しようね、と言い合い最後にはほっぺにキスまでしている動画だった。
「これ……」
「うちのビデオカメラで撮ってたんだ、でも寮だと毎日見れないからその画面を動画で撮ってきた」
えぇ?
「ね、ひな。俺ひなが結婚しよって言ってくれたから、今まで勉強も運動も家事も何もかも頑張れた、うちの親だって了承してるし、ひなのパパとママにも、お姉さん達にもちゃんと挨拶してるんだよ?」
「パパとママにも?詩ちゃん達にも??」
詩ちゃんは俺のお姉ちゃんだ。俺は3人姉弟の末っ子でお姉ちゃんが2人いる。
「うん、結婚は無理だから、高校卒業したらパートナーシップ制度のある街で2人で住もうと思ってた」
「あーくん……」
「でも、そっか。そうだよね、こんな子どもの頃の約束信じてる方がおかしいよね……」
「ちがっ、あーくんっ!」
「ううん、俺が悪いよ、……ひな、ごめんね」
あーくんは無理やり笑おうとして、ぐしゃぐしゃの顔のまんま泣き続けていた。それを見たら、もう胸が苦しくてたまらなかった。俺の目からもボロボロ涙が零れる。
「ちがうっ、ちがうのあーくん!おれっ、おれあーくんがすきなのっ、でもあーくんの幸せのこと考えたら、離れなきゃって、おもっ、思って!ううん、俺、あーくんの隣に、俺以外の人がいるの見るの無理だって思って、やなの、あーくんは、おれのあーくんなのにっておもって、ひっ、だからっ、だからっ」
「……ひな、ひなっ!」
あーくんは立ち上がると、俺の方までまわりこんでギュッと抱き締めてくれた。あーくんの服が濡れるのもお構い無しに、あーくんの肩に顔を押し付ける。
「あーくっ、あーくん、だいすき、すきなの、あーくんっ」
「俺もひなが好きだよ、大好き。もう、離れなくていい?」
「うんっ、ほんとは離れたくないよぉ!」
「よかった……、ひな、愛してるよ、俺と結婚しよ?」
「ううう、するぅ、おれあーくんと結婚するっ」
あーくんの顔を見ると、今度は蕩けそうな笑顔で涙を流していた。
その涙を見ていたら、勿体ない様な気がしてちゅっちゅと口で拭っていく。
「んっ、あーくん、もう泣かないで。ごめんね」
「ううん、ちゃんと話せてよかった。卒業してからのこと、これから2人で話し合っていこうね、俺今幸せすぎて死んじゃいそう」
「うん、死んじゃやだ……あーくん」
「なぁに?」
「ちゅうしてほしい」
「うん」
おねだりすると、あーくんは顔中にちゅっちゅとちゅうしてくれた。
「んっ、んー!ちがう!」
「え?」
「お、俺たち結婚するんでしょ?だから、口にもちゅうしてほしい」
「……ひ、ひな!?」
「恋人は口にもちゅうしてるじゃん!俺とあーくんは恋人でしょ?」
「ひな……」
「あーくん、いつも口にはちゅうしてくれないから、だから恋人じゃないって思ってた。合コンにもいくし、抱かれたい人のとこに名前書かれるし」
「あぁ、合コン……」
「……彼女欲しいのかなって思ったの!なんも言ってくんないし」
「あれはホント騙されただけで、一瞬で帰ったよ。俺にはひながいるし、ひな以外に何も思わないし。だから何も言ってなかった。不安にさせちゃったんだね、ごめんね」
「もういい、口にちゅうしてくれたら許す」
「もちろん、俺もしたい」
ちゅっちゅと何度も角度を変え、唇が合わさる。
脳みそが溶けちゃったみたいにふわふわしてるけど、心臓がバクバクうるさかった。
あーくんは、俺を立たすといつものソファーまで連れて行ってくれて、何にも言わずにコアラしてくれる。
ふにゃふにゃの顔で俺を見つめるあーくんは、めっちゃ可愛くって幸せになっちゃう。
「ほんとはね、ご飯頑張ったからよしよしとコアラして欲しかったの」
「ふふふ、だと思った。でも言ってこないからどうしたのかなって思ってたんだよ?」
「あーくんから自立しなきゃって思ったらよしよしもコアラもダメなんだって思って……」
「そう……もうそんな我慢しなくていいよ」
「うん、これを辞めようと思ってたなんてどうかしてるよ。多分無理だもん」
「ひなー♡もうなんでそんなに可愛いの?俺をどうしたいの?」
「んー、ずぅっと一緒にいてくれるようにしたいなぁ」
「うぅ……当たり前すぎる。俺のひな♡俺の可愛いひな♡♡」
あーくんは、語尾にハートついてる?ってぐらいめろめろのとろとろになって、何回も何回も口にちゅうしてくれた。
この調子でいつまでも俺にめろめろでいてほしいな。
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