あーくんとひなた

えびまる

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5(sideあーくん)

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 俺には、ひなという、大切な幼なじみがいる。
 ひなは、黙っていればイケメンだし、ご両親譲りのスラッとした体型を活かしてモデルの仕事もたまにしている。本人は『親の七光り』だなんて言うけど、最近人気も出てきて、部屋に無造作に置かれるひなが載ってる雑誌も増えてきた。もちろんひなが適当に置いたやつは回収して大切に保管している。
 でも、普段はふわふわしてて、素直で可愛くて俺の前では凄く甘えんぼで可愛くて、可愛い。

 俺は、子どもの頃からずっとひなの事だけを考えて生きてきた。
 ひなと一生二人でいる為に、あの手この手を尽くしてきたし、外堀も固めたし、ひなを幸せに出来るように、ひなを誰にも取られないように考えまくった。その為には勉強もスポーツも家事も手を抜かなかった。
 ひなが離れていかないように、甘やかしまくって、囲い込んで。
 『コアラ』だってそう、今思えば棚ぼただったけど、小学生の頃、三歳年上のひなのお姉さんの美奈ちゃんに
「ひなは、ずーっとママに抱っこしてもらって恥ずかしいー!赤ちゃんじゃん!ひなは赤ちゃーん!」と、からかわれて影でこっそり泣いてたひなに
「俺がみんなに内緒で抱っことよしよししてあげる!内緒だから恥ずかしくないよ!」と言いくるめて習慣づけた。
 美奈ちゃんには感謝しかしていない。

 他にもひなのご実家にお邪魔してお義母様におふくろの味を教えてもらったり、いつも近くにいてひなの趣味嗜好交友関係あらゆるものは把握してるし、ちょーっと学校に多めに寄付してる父にお願いして寮の部屋をひなと同室にしてもらったりした。
 そんな感じでひなと結婚することを大前提に生きてきた俺は、結婚の前に恋人という期間があるというのをすっかり忘れていたのだった。

 好きだの愛してるだのは常日頃から伝えていて、ひなも「はいはい」という感じだったので何となく受け入れられていると思い込んでいたのもある。
 だからひなが、『あーくんも恋人作ってうんたらかんたら』言い出した時は頭が真っ白になって、思わず泣いて縋ってしまった。
 対ひなに関しては、プライドもへったくれも無いと思っているので捨てられなければ泣いて縋って何でもするつもりだったし、雨降って地固まる的な感じでひなの気持ちもハッキリと知れたからよかった。
 それと同時に気付いてしまったのだ。
 もしかしたら捨てられる未来も有り得るということに。
 ひなの気持ちを信じてないとか、そういう事じゃない。
 でももう、ひながいない人生なんて考えられない。ひなの幸せの為に身を引くだなんて出来ない。
 傲慢だろうがなんだろうが、ひなは俺の手で幸せにしたい。

 幸いな事に、一度開き直ったひなは、俺の事をきっちり恋人としてカテゴライズしてくれた様で、あれから更に甘えてくれるし、部屋に帰ると隙あらばひなの方からキスしてくれるようになった。
 というか、多分口の中がすっかり性感帯になってしまったのだと思う。
 恋人になる以前から甘えんぼのひなは、ソファーに充分なスペースがあっても俺の膝に座ってくる事が多かった。座椅子替わりに俺の膝の上でテレビを見たり、スマホを弄ったりしていた。
 それが、恋人になった途端、向かい合う様に座るようになり、俺の首筋の匂いを嗅いで、満足するとキスしてくる。
 自分から俺の舌を歯で甘噛みし、自分の口に迎え入れるようになったのだ。ひなの口内を丁寧に愛撫すると、一度口を離した時にはすっかりとろとろで、無意識なのか腰も俺の脚に擦り付けるように緩く動かしている。エロい。
 今までひなの事は天使だと思っていた。もちろん今も天使なのだけれど、こんなにエッチな事に積極的になってくれるだなんて思ってもみなかった。大歓迎だし、ますます離れられなくなる。
 あー、こんなにエロいのに普段は天使なんて尊い。

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