フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

文字の大きさ
86 / 318

唐揚げサンド

しおりを挟む
 86 唐揚げサンド

 昼の営業はかなり大変だった。何しろお客さんがひっきりなしに来るのだ。ホランドさんはそんなお客さんを待たせることなく次々と料理を出していく。

「ケイくん!サラダ3つ急いで!」

「おい、俺が頼んだのはスープとパンだぞ」

「若いの!その唐揚げはこっちだ」

 ときどき間違えながらも、その都度お客さんたちに支えられてなんとか昼の営業が終わった。

「大変だったろ、でもしっかりできてたじゃないか。これなら安心だ」

 椅子に座って汗を拭きながらホランドさんが僕に言う。

「いろいろ失敗もありましたけどね。でもお客さんがいい人で助かりました」

「うちのもたまに注文間違えたりしてるからな。お客さんもそれに慣れているんだ」

 そう言ってホランドさんは笑った。

 お茶を飲んでひと息ついたら、溜まってしまった洗い物を片付ける。お湯の出る魔道具があるのでそんなに大変ではない。
 みんな席に座る前に注文するからたまに混乱するんだよな。その人がどこに座ったか見てないとたまにわからなくなる。
 お客さんはほとんどが常連で、メニューも3つしかないから店に入って注文してから空いている席に座る人が多い。
 なんかいい方法ないかな。

 ノートを広げて店の中の簡単な見取り図を書く。
 定食屋ミナミでは4人がけのテーブルが2つ。窓際に2人がけのテーブルが2つ。カウンターは8人座れるようになっている。全部で20席。慣れてくれば覚えるのだろうけど、やっぱりピークの時は慌ただしくなってしまう。とにかく回転がいいのでけっこうやることは多い。

 割符のようなものがあるとわかりやすいのかな?
 あとはサラダだ。サラダは全部の定食に同じく付くわけだから、お客さんが席に着いたら水と一緒に持って行ってしまえばいい。
 水を出して、サラダも出して、だと2回往復することになる。
 夜はもっと効率よく動こう。

「普段は賄いを作って食べるんだが、今日は店のメニューにしたよ。味を覚えてくれ」

 ホランドさんが唐揚げ定食を作ってくれた。塩といくつかのスパイスで味付けされた唐揚げはパンによく合う味だった。
 サラダと一緒にパンに挟んで食べる。お客さんがやっているのを見たのだ。

「お?それは常連の食べ方だね。そうなんだよ。パンに挟むと美味しいだろ?」

 サラダのドレッシングがいいアクセントになって唐揚げサンドはとても美味しかった。でも、マヨネーズとか足したくなっちゃうな。唐揚げといえばマヨネーズだよね。

「マヨネーズとか付けたりしないんですか?」

 そうホランドさんに聞いてみたら、マヨネーズは知ってるんだけど手間がかかるからやってないそうだ。

「知り合いの鍛治師が最近卵を混ぜるのにいいものを作ったんですが興味あります?」

 泡立て器のことを話すとホランドさんは一度見てみたいという。今日は持ってきていないから、明日持ってきますと伝えた。
 マジックバッグは今日はフェルが持って行っているのだ。
 帰りにカバンでも買って、少し僕も荷物を持ってこようかな。自分の包丁のほうが使いやすいし。

 昼ごはんを食べたら、夜の部の仕込みをする。唐揚げは用意した分が半分以上なくなってしまったので、大きなボウルに2つ分作り足した。

 営業中の看板を出しに行くと、3人くらい開店を待つ人がいた。そのうち1人は冒険者で、僕のことを知ってた。

「お前、ウサギじゃねーか。ここで働いてんのか?」

「ギルドに依頼がきてたんだよ。2週間くらいここで働くんだ」

「初めてきたけどなんか唐揚げってのが美味いらしいな」

「うん。唐揚げ定食を頼む人は多いよ。僕もさっき食べたんだけど、パンにサラダと一緒に挟んで食べると美味しいよ」

「よし、じゃあその唐揚げ定食を頼むぜ」

「わかった。空いてる席に座って待っててよ」

 入ってきたお客さん3人とも唐揚げ定食だったのでホランドさんに注文を伝えてサラダを手早く作る。お盆に乗せてお水と一緒に配って回る。

「おー、なかなかうめぇじゃねーか。これで銅貨5枚?なかなかいいな。ウサギ、もう1個くれ」

「ありがとうございまーす。唐揚げ定食おかわりです」

 厨房に向けて叫ぶと、ホランドさんが返事を返す。

 そうこうしてる間にもうお店は満席だ。
 外に数人並んでいる。

「ウサギ、ご馳走さん。みんなにも勧めておくぜ。ウサギがやってる唐揚げ屋って」

「僕の店じゃないからね。でもありがとう。定食屋ミナミをよろしくお願いします」

 それから2時間途切れることなくお客さんが入って、ようやく落ち着いた頃フェルが来た。

「ケイ。どうだ仕事は?大変か?」

「フェル!いらっしゃい。注文はどうする?お腹が空いてたら大盛りが出来ないから2つ頼むといいよ。昼に来てた冒険者はそうしてたから」

 フェルは唐揚げ定食とスープとパンのセットを頼んだ。それでも銅貨10枚なのだから安い。
 ちなみにオーク肉の素揚げは銅貨7枚。美味しそうだけどあんまり出ない。この店のメインはやっぱり唐揚げだ。

 夜はしっかり食べる人が多いのだろうか。定食を2つ頼む人が多い。大盛りとか出来ればいいのにと思うけど、パンの数が決まっているのだ。
 パンは朝と夕方決まった分配達される。
 次の日の材料は昼の営業が終わった頃に届く。その時店にある在庫を見ながらホランドさんは次の日の分の発注をしている。

「フェル。あと少しで店が終わるから座って待ってて。あとでお茶持ってくるね」

 パンが無くなったところで本日の営業は終了した。

「その美人さんはケイくんの彼女かい?」

 ホランドさんが奥から出てきて僕に尋ねる。

「彼女ではないんですが、一緒に共同生活してるんです。このあと公衆浴場に2人で行って家に帰るんです」

 テーブルを拭いていたら、フェルが手伝ってくれた。それを任せて僕は厨房の片付けをする。

 ホランドさんが夕飯を作ってくれた。残ったスープとパン。それを手早くいただいて残りの片付けをする。

「なるほどねーフェルさんは冒険者をやってるのか。ねえ、今日みたいに店の片付けを手伝ってくれたら、うちで夕飯を出してあげるよ。どうせなら2人で一緒に食べたほうがいいだろ?」

「いいんですか?すごく助かっちゃいます。帰ってご飯を作るの大変だなって少し思ってたんですよ」

「普段はケイくんが食事を作ってるのかい?」

「はい。僕たちお金がないからいつも自炊してるんです」

「うちで働く日はうちで食べていくといいよ。そのうちケイくんにも賄いを作ってもらおうかな。今日見てたら結構料理できそうな感じがするし」

「やらせてもらえるなら嬉しいです。じゃあ明日の賄いは僕が作りますね」

 そんな話をしながら厨房を片付けて、フェルに出してもらった泡立て器を見せる。
 ボウルに水を入れて実際使ってもらうと、ホランドさんが納得した顔をする。

「その鍛治師にうちの分も作ってもらえるように頼んでみてくれないか?ただ、卵だよな。毎朝仕入れに行かなくちゃ行けないし」

「僕が明日は買ってきますよ。毎朝その卵屋さんに行ってるんです。そこで売ってる牛乳が美味しいんですよ。配達できるかも頼んでみますね」

「試しに明日からやってみようか。そのうち銅貨1枚でマヨネーズをつけるということにして」

「その泡立て器、試作品だからよかったら差し上げますよ。僕は新しいのもらえることになってるから」

「いいのかい?助かるよ。さて、今日はもうおしまいだね。お疲れ様、ケイくんが来てくれてよかった。明日もよろしく」







 


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...