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スラムの夜は
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99 スラムの夜は
店の前を掃除して、いつものように野菜の皮剥きから始めていると、2階から奥さんのマリナさんが降りてきた。
ホランドさんが会計用の小さな金庫があるところに椅子を置き、そこにマリナさんが座った。
今日から会計はマリナさんがやってくれるらしい。
割符と、ノートに印をつけて売れた数を記録する方法を伝えると、マリナさんはしきりに感心していた。
「なるほどねぇ。こうすればどれがどのくらい売れたか正確にわかるのね。しかも会計はこの札を持ってくるだけでいいなんて、ケイくんこれはいい思いつきだわ」
「売れる数がわかるから、売上の計算も楽になるはずです。僕は付けていませんでしたけど」
「ケイくんにそこまでやってもらうわけにはいかないわ。なるほどねぇ。あら、単価も書いておいてくれてるから、今のうちに先週の分をまとめておこうかしら」
そう言ってマリナさんは売り上げの計算を始めた。
今日のスープはオーク肉を使う。オーク肉は薄切りにした。朝からゴードンさんのところで買った白菜を適当に小さめに切り、炒めた玉ねぎと一緒に煮込む。お肉は最後の方に入れて丁寧にアクを取る。
ホランドさんのレシピによると隠し味に少し塩ダレを入れるのだそうだ。
塩と胡椒で味を整えて、スプーンで2杯塩ダレを入れた。
味見をしてもらって問題なかったので今日のスープはこれでいく。白菜の甘味がたっぷり出て美味しいスープが出来た。
本当は全部の定食にスープがつけられるといいんだけどね。
王都の昼食はスープとパンのセットが一般的だ。そこに追加で料理を頼んだりしてみんな食べている。定番だから外せないのかな?じいちゃんの食堂でもスープとパンは毎日作って昼食に出していた。
まあ夜も大体同じ感じだったけど。
でも全てのメニューにスープが付きます。ということにしてしまうと、今度はスープセットが出なくなる。
そうなるとメニューが少なすぎるからもう少し増やす必要があるだろう。いろいろな種類の料理を作るのはホランドさん1人では限界もある。
難しいな。お店を経営するって。
スープとパンだけと言う仕込みの手間だけで出せるメニューは貴重なのだ。
だから大体の食堂ではスープセットが主流なのだ。早く提供できて、ロスも少ない。
そういえば小熊亭はスープセットがなかったな。だからなのかすごく忙しそうだったし。
定番の唐揚げは必ずと言っていいほどマヨネーズをつける客ばかりだった。みんなどこで聞いてきたんだろう。
お昼はホランドさんが作ってくれた。メニューは塩とんかつだ。
ソースは塩ダレに大根おろしを混ぜた物と、胡椒を効かせたスパイシーな物の2種類あって、スパイシーな物が僕は好みだった。
この塩ダレに色々混ぜていけばソースが作れたりしないかな?
ホランドさんが考案したと言うこの塩ダレはとにかく万能だ。とにかくすごいと思う。
朝は慌ただしくて渡せなかったが、ホランドさんに精米器と泡立て器、ピーラーを渡す。代金として銀貨2枚と銅貨10枚受け取った。
使い方を教えて、ホランドさんは早速お米を炊き始めた。
今日もパンが先に売り切れてしまって、営業は19時前に終わった。
スープセットが結構出るようになって、唐揚げとスープセットを一緒に頼む人も増えてきたからだ。なのでどうしてもセットのパンが余分に出てしまう。
ホランドさんは来年からメニューを少し考え直すみたい。
とんかつや、この前僕が作ったコロッケなど、油で揚げる料理を中心にメニューを作り、スープセットをやめて全ての料理をスープ付きにするらしい。
コロッケは商業ギルドですでにレシピ登録されていて、こないだ権利を買って来たのだそうだ。コロッケのレシピ料は最低価格に設定されてたらしい。
お米の仕入れ先は僕がいつも買う店を教えておいた。
炊いたお米を無駄にしないように、炒飯にする。久しぶりに作ったけど上手く作れて良かった。ミナミの厨房は火力が強い業務用の魔道コンロを入れている。ふっくらした炒飯ができた。
ここにいる間に鶏がらスープの研究でもさせてもらおうかな。粉末のスープの素は骨じゃなくて肉の方を使うんだっけ?
でもちょっと営業しながらは難しいかな。
フェルは炒飯を炒める直前に店に来た。何か言いたそうな顔でいるけど、ごめんなさい。あとで聞かせて。
フェルと、マリナさんの2人で、店内の清掃はあっという間に終わった。あまった炒飯は持ち帰らせてもらった。
店を出て少し歩くと、フェルが顔を赤らめながら興奮して話し出す。
「なあ、ケイ!今日のおにぎりはすごかったぞ。あんなこともできるのだな。ちょうど昨日オムライスを食べたいと思っていたところなのだ。なぜわかったのだ?ゼランド氏などは屋敷の料理長に試食させていたぞ。エリママなどは毎日オムライスが食べたいと言い出してな。部屋が決まってないならうちの屋敷に住めばいいじゃないと騒いでとにかく大変で……」
「フェル、とにかく落ち着いて。気に入ってくれたんだったら、流石に毎日はできないけどたまに作ってあげるよ。あのおにぎりは1個だけ作ってもあんまり美味しく作れないんだ。少しまとまった数を作らないと、ちゃんと味がまとまらないんだよ」
一人前のオムライスからだいたい大きめのおにぎりで2つ作れる。味が変わらないくらいに、少しだけつなぎに小麦粉を入れるのがコツだ。時間が経つと崩れて来ちゃうから。
それを薄焼きタマゴで包むのだけど、あまった皮の部分は切り取って、スープや味噌汁などに入れる。いろいろ手間はかかるけど、今日のフェルの顔を見てるとまた近いうちに作ってあげたくなった。
「そうだ。ゼランド氏が明日仕事が終わったら商会に来て欲しいと言っていたぞ。部屋の話ではないそうだが、遅い時間でも構わないと言っていた。私は明日セシル達とオーク狩りに行く。もう少し集団戦に慣れておきたいのだ」
今日もフェルの正面から髪を乾かす。
最初にフェルにお辞儀させて、後ろ髪を乾かしたあと、2人で会話をしながら全体を乾かすのだ。フェルの顔が楽しそうで、今日はいつもより時間をかけてしまった。
「フェルー。明日のおにぎりは今日の夕飯の残りを使って炒飯のおにぎりになっちゃうのだけど、それでもいい?」
家に帰って何気なくフェルに聞いたら、すごく怒られた。
昨日の残りでもなんでも構わないし、僕が無理しないで簡単に作れる物で全く構わないが、とにかくお弁当の中身は秘密にしてくれと強く言われた。
「中身がわかっているお弁当など、楽しみが半分以下ではないか!ケイの作るものはなんでも美味しいから、別に昨晩の夕飯の残りだとしても私は構わない。ただ開けた時の驚きと、綺麗に並べられたおかず。その驚きを私はいつも楽しんでいるのだ。特におにぎりの具などは朝から色々想像して楽しんでいる。今日は何かとか、昨日がこれだっだから今日はこれかなとか、とにかく私は……」
怒って熱弁するフェルがあんまり可愛くて、僕は笑ってしまう。
「な、なんだ?真面目に聞くのだ。私は今怒ってるのだぞ!」
そうやってムキになって怒る姿さえ愛らしい。ああ、幸せだな。こんなふうにフェルとずっと暮らしていきたい。
時間を合わせて、今日は2人で眠る。
まだ少しすねているフェルに手を繋いでいいかと聞くと、すっと細くて柔らかいフェルの手が僕の手を握る。
スラムの夜は静かだ。犯罪の温床だと言われているが、実際ここに住む人たちはみんなひっそりと静かに暮らしている。
視線を感じてフェルの方を見るとフェルと目が合って、そのあとすぐに逸らされた。
明日もう一度謝ったら許してくれるかな?
店の前を掃除して、いつものように野菜の皮剥きから始めていると、2階から奥さんのマリナさんが降りてきた。
ホランドさんが会計用の小さな金庫があるところに椅子を置き、そこにマリナさんが座った。
今日から会計はマリナさんがやってくれるらしい。
割符と、ノートに印をつけて売れた数を記録する方法を伝えると、マリナさんはしきりに感心していた。
「なるほどねぇ。こうすればどれがどのくらい売れたか正確にわかるのね。しかも会計はこの札を持ってくるだけでいいなんて、ケイくんこれはいい思いつきだわ」
「売れる数がわかるから、売上の計算も楽になるはずです。僕は付けていませんでしたけど」
「ケイくんにそこまでやってもらうわけにはいかないわ。なるほどねぇ。あら、単価も書いておいてくれてるから、今のうちに先週の分をまとめておこうかしら」
そう言ってマリナさんは売り上げの計算を始めた。
今日のスープはオーク肉を使う。オーク肉は薄切りにした。朝からゴードンさんのところで買った白菜を適当に小さめに切り、炒めた玉ねぎと一緒に煮込む。お肉は最後の方に入れて丁寧にアクを取る。
ホランドさんのレシピによると隠し味に少し塩ダレを入れるのだそうだ。
塩と胡椒で味を整えて、スプーンで2杯塩ダレを入れた。
味見をしてもらって問題なかったので今日のスープはこれでいく。白菜の甘味がたっぷり出て美味しいスープが出来た。
本当は全部の定食にスープがつけられるといいんだけどね。
王都の昼食はスープとパンのセットが一般的だ。そこに追加で料理を頼んだりしてみんな食べている。定番だから外せないのかな?じいちゃんの食堂でもスープとパンは毎日作って昼食に出していた。
まあ夜も大体同じ感じだったけど。
でも全てのメニューにスープが付きます。ということにしてしまうと、今度はスープセットが出なくなる。
そうなるとメニューが少なすぎるからもう少し増やす必要があるだろう。いろいろな種類の料理を作るのはホランドさん1人では限界もある。
難しいな。お店を経営するって。
スープとパンだけと言う仕込みの手間だけで出せるメニューは貴重なのだ。
だから大体の食堂ではスープセットが主流なのだ。早く提供できて、ロスも少ない。
そういえば小熊亭はスープセットがなかったな。だからなのかすごく忙しそうだったし。
定番の唐揚げは必ずと言っていいほどマヨネーズをつける客ばかりだった。みんなどこで聞いてきたんだろう。
お昼はホランドさんが作ってくれた。メニューは塩とんかつだ。
ソースは塩ダレに大根おろしを混ぜた物と、胡椒を効かせたスパイシーな物の2種類あって、スパイシーな物が僕は好みだった。
この塩ダレに色々混ぜていけばソースが作れたりしないかな?
ホランドさんが考案したと言うこの塩ダレはとにかく万能だ。とにかくすごいと思う。
朝は慌ただしくて渡せなかったが、ホランドさんに精米器と泡立て器、ピーラーを渡す。代金として銀貨2枚と銅貨10枚受け取った。
使い方を教えて、ホランドさんは早速お米を炊き始めた。
今日もパンが先に売り切れてしまって、営業は19時前に終わった。
スープセットが結構出るようになって、唐揚げとスープセットを一緒に頼む人も増えてきたからだ。なのでどうしてもセットのパンが余分に出てしまう。
ホランドさんは来年からメニューを少し考え直すみたい。
とんかつや、この前僕が作ったコロッケなど、油で揚げる料理を中心にメニューを作り、スープセットをやめて全ての料理をスープ付きにするらしい。
コロッケは商業ギルドですでにレシピ登録されていて、こないだ権利を買って来たのだそうだ。コロッケのレシピ料は最低価格に設定されてたらしい。
お米の仕入れ先は僕がいつも買う店を教えておいた。
炊いたお米を無駄にしないように、炒飯にする。久しぶりに作ったけど上手く作れて良かった。ミナミの厨房は火力が強い業務用の魔道コンロを入れている。ふっくらした炒飯ができた。
ここにいる間に鶏がらスープの研究でもさせてもらおうかな。粉末のスープの素は骨じゃなくて肉の方を使うんだっけ?
でもちょっと営業しながらは難しいかな。
フェルは炒飯を炒める直前に店に来た。何か言いたそうな顔でいるけど、ごめんなさい。あとで聞かせて。
フェルと、マリナさんの2人で、店内の清掃はあっという間に終わった。あまった炒飯は持ち帰らせてもらった。
店を出て少し歩くと、フェルが顔を赤らめながら興奮して話し出す。
「なあ、ケイ!今日のおにぎりはすごかったぞ。あんなこともできるのだな。ちょうど昨日オムライスを食べたいと思っていたところなのだ。なぜわかったのだ?ゼランド氏などは屋敷の料理長に試食させていたぞ。エリママなどは毎日オムライスが食べたいと言い出してな。部屋が決まってないならうちの屋敷に住めばいいじゃないと騒いでとにかく大変で……」
「フェル、とにかく落ち着いて。気に入ってくれたんだったら、流石に毎日はできないけどたまに作ってあげるよ。あのおにぎりは1個だけ作ってもあんまり美味しく作れないんだ。少しまとまった数を作らないと、ちゃんと味がまとまらないんだよ」
一人前のオムライスからだいたい大きめのおにぎりで2つ作れる。味が変わらないくらいに、少しだけつなぎに小麦粉を入れるのがコツだ。時間が経つと崩れて来ちゃうから。
それを薄焼きタマゴで包むのだけど、あまった皮の部分は切り取って、スープや味噌汁などに入れる。いろいろ手間はかかるけど、今日のフェルの顔を見てるとまた近いうちに作ってあげたくなった。
「そうだ。ゼランド氏が明日仕事が終わったら商会に来て欲しいと言っていたぞ。部屋の話ではないそうだが、遅い時間でも構わないと言っていた。私は明日セシル達とオーク狩りに行く。もう少し集団戦に慣れておきたいのだ」
今日もフェルの正面から髪を乾かす。
最初にフェルにお辞儀させて、後ろ髪を乾かしたあと、2人で会話をしながら全体を乾かすのだ。フェルの顔が楽しそうで、今日はいつもより時間をかけてしまった。
「フェルー。明日のおにぎりは今日の夕飯の残りを使って炒飯のおにぎりになっちゃうのだけど、それでもいい?」
家に帰って何気なくフェルに聞いたら、すごく怒られた。
昨日の残りでもなんでも構わないし、僕が無理しないで簡単に作れる物で全く構わないが、とにかくお弁当の中身は秘密にしてくれと強く言われた。
「中身がわかっているお弁当など、楽しみが半分以下ではないか!ケイの作るものはなんでも美味しいから、別に昨晩の夕飯の残りだとしても私は構わない。ただ開けた時の驚きと、綺麗に並べられたおかず。その驚きを私はいつも楽しんでいるのだ。特におにぎりの具などは朝から色々想像して楽しんでいる。今日は何かとか、昨日がこれだっだから今日はこれかなとか、とにかく私は……」
怒って熱弁するフェルがあんまり可愛くて、僕は笑ってしまう。
「な、なんだ?真面目に聞くのだ。私は今怒ってるのだぞ!」
そうやってムキになって怒る姿さえ愛らしい。ああ、幸せだな。こんなふうにフェルとずっと暮らしていきたい。
時間を合わせて、今日は2人で眠る。
まだ少しすねているフェルに手を繋いでいいかと聞くと、すっと細くて柔らかいフェルの手が僕の手を握る。
スラムの夜は静かだ。犯罪の温床だと言われているが、実際ここに住む人たちはみんなひっそりと静かに暮らしている。
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