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101 ソース
朝起きたらやっぱりフェルの腕の中だった。ちょっと悔しい。たまには僕だってフェルのこと抱きしめて眠りたい。
腹いせで、フェルの体を抱きしめる。僕だってこれくらいやってもいいはずだとか思っていたが、フェルが目を覚ましたのがわかったので慌てて体の力を抜く。
暖かくて良い匂いのするフェルの誘惑を振り切って、今日も外に出て準備を始める。
フェルは少し機嫌が悪い。昨日のことをまだ引きずっているのかな。
お弁当にフェルが好きそうな物を入れてみたらいいだろうか?それとも炒飯以外のおにぎりを工夫してみるべきか。
そう思ったけど新しい工夫が思いつかない。手に入る食材で思いつくものはほとんど作ってしまった。
新作のおにぎりと言っても何を作ったらいいのか。
お魚が使えないからなー、最近料理のレパートリーに悩むんだよなー。
最近は市場に走るついでに、今日のおにぎりの具を考えている。魔力循環を続けることにも少し慣れて来た。
毎日お弁当の献立を考えることにちょっと追い込まれてる気もするけど、お昼ご飯を楽しそうに食べるフェルの顔を想像するとやりがいを感じて、つい毎日張り切ってしまっていた。
オーク肉をケチャップであえて、オムレツを横に添える。少し手抜きかもしれないけど、塩茹でした根野菜を詰め込んでマヨネーズを塗った。
ミニトマトとか、欲しいな。春になったら探してみよう。
デザートも詰め込んで、お弁当は完成。1個は炒飯のおにぎりだけど、もう1個は塩鮭をほぐして砕いたナッツとあえた変わり種のおにぎりにしてみた。
今度これを焼きおにぎりにしても美味しいかもな。
今日のおにぎりは少し大きめにして2個。本当は3種類作ってあげたいけどもうレパートリーが尽きてきている。
先にギルドに向かうというフェルを見送って、後片付けを済ませたら、店に向かう。
お昼時はさすがに満席になったけど、今日はそこまで忙しくない。来てくれた顔見知りの冒険者達と会話する余裕もあった。
今日の賄いもオークカツだ。
スパイシーな塩ダレベースの工夫はさらに続いた。すりおろしたニンジンを入れたらしい。
「甘味がもっと欲しいんだよ。そして少しほろ苦いというか、ほんの少しだけどね」
ふと思いついてカラメルソースを作る。
りんごをすりおろしてカラメルソースとりんごを混ぜてみた。
……甘い。甘すぎ。
「いや、分量が多いだけさ。もっと少なめに入れれば」
ホランドさんがほんの少しだけそれを入れれば、お?なんかそれっぽい感じになってきた。
でも何か、一味足りないな。
ホランドさんも同じことを考えているようだった。顔を歪めて考え込んでいる。
「ホランドさん。そろそろ開店の準備をしないと」
ソースの開発は一旦後回しにして、夜からの分の仕込みを始めた。
夜は残った唐揚げとスープで賄いを食べる。夜もそこまでお客さんは入らなかった。
「いつもは大体こんなものよ。ケイ君が来てから特別忙しかっただけだから」
マリナさんはそう言って微笑む。
営業が終わって、ホランドさんの唐揚げを炊いた白米でいただく。
普段は忙しくてホランドさんが仕事をしている様子をちゃんとを見ることができなかったから、お願いして隣で唐揚げを揚げているところを見せてもらう。
そうしていたらフェルが帰ってきた。
「おかえり」と笑顔で迎えて、2人で手分けして店の掃除を始める。機嫌は治ったみたいだ。今日の依頼はどうだったのかな?あとで話を聞こう。
フェルは今週はセシル姉さんのパーティ、赤い風と一緒に依頼を受けるらしい。
オークの討伐依頼がこのところ増えているそうだ。
フェルの髪を乾かしている時もとんかつのソースのことを考えていた。
ウスターソースって何が入っていたっけ。リンゴは入っていた気がするけど。
「どうした?ケイ?考え事か?」
今日の赤い風と一緒に受けた依頼のことをあれこれ話していたフェルが、考え事をしていた僕を見てそう尋ねた。今日も正面を向いているので顔が近い。
「ホランドさんの新しい料理に使うソースのことを考えているんだよ。良いところまで来てるんだけど、何か足りなくって」
「ならばけちゃっぷはどうだ?私はあの味が好きだぞ?」
「それ、いいかもね。そうか、トマトか。まだ市場に売ってるかな?」
次の日市場に行くと値段は高いがトマトは市場に少しだけ並んでいた。
1個銅貨5枚。うわ。けっこう高いな。
仕方がないので2個だけ買って、前に行ったことがある乾物屋に行ってみる。
店の人に聞いてみたら乾燥させたトマトがあった。1袋大体5個分のトマトが入って銅貨8枚。1袋買った。
お昼休みにホランドさんと試してみる。
タマネギ、にんじん、リンゴをすりおろして、カラメルソースを溶かした少量のお湯でしばらく煮込む。トマトは生のトマトとドライトマトで分けて2種類のソースを作ってみる。
特製塩ダレとお酢、醤油も少し入れた。
ある程度沸騰して、アクを取ったら火からおろして冷ます。
その間にとんかつを作った。
マリナさんも呼んで昼食兼、試食会をする。出来上がったとんかつにソースをかけて食べてみる。
食べた瞬間ホランドさんと目を合わせた。
これ、美味しい。
少しコクが足りない気もするけど、味はかなりウスターソースに近いものができた。
「たぶん何日か寝かせたらもっと良くなるかもしれないね」
ホランドさんはそう言ってとんかつを食べる。店で使っている塩ダレも1週間くらい寝かせた物を使ってるそうだ。
「ケイくんがよかったら今度店が休みの時にこのソースを作りに来ないか?うちの塩ダレの作り方も教えてあげるから」
「良いんですか?ぜひお願いします!」
何にでも使えるあの万能の塩ダレの作り方を教えてもらえるなんて。
依頼は土曜日で終わるけど次の週の月曜日にソースを作りにくる約束をした。
「ケイくんにはだいぶお世話になったから、せめて何か返したいと思ってね。いつかケイくんが店を開く時にも、この塩ダレを使って良いから」
ホランドさんのありがたい申し出に、僕はただただお礼を言うことしかできなかった。
それから3日間、懸命になって働いた。
マリナさんの足もすっかり良くなって、最後の2日間は厨房にも入れてもらった。
唐揚げの揚げ方、油の切り方など、ホランドさんは丁寧に教えてくれた。
「すっかりケイくんに頼り切りになっちゃったよ。来週からは大変だ」
ホランドさんが最終日、依頼票にサインを書いてくれる。
「しっかり評価もしておいたから、次の仕事も大丈夫だと思うよ」
「ありがとうございます。僕もいろいろ勉強になりました」
これで依頼票をギルドに持って行き、報酬を受け取れば依頼完了だ。
「そうだ。月曜日の夜は開けといてもらえるかい?雇ってもらえるかはまだわからないけど知り合いのお店を紹介するよ。そこで夕食を食べよう。フェルちゃんも一緒で構わないよ」
楽しみにしていますと伝えて、フェルと2人で店を出た。
2週間楽しかったな。良い仕事だった。
「ミナミの仕事が終わってさみしいのか?」
髪を乾かされているフェルが心配そうな顔で僕の顔を覗き込み、そう聞いてくる。
「うん。やっぱりちょっとさみしいよね。ホランドさんも、奥さんのマリナさんも良い人だったし。いろいろ教えてもらったし」
「また良い仕事が見つかると良いな。まあ少しのんびりしても良いのではないか?あと1週間もすれば新年だ。新しい仕事は年が明けてから考えれば良い」
「そうだね。せっかくだから王都を観光するって言うのも良いかもね。僕たち全然王都を知らないし」
「観光か。ならばお弁当を作ってくれるか?どこか眺めの良いところでそれを食べるのだ。どこが良いだろうな?」
王都を観光しようと言ってみたものの、実際どこに行ったら良いものやら。
ギルドで誰かに聞いてみようかな。
明日は炊き出しの日だ。昼休みにゴードンさんのところで野菜をもらった時に、明日行ってホーンラビットを狩ることは伝えてある。精米器もプレゼントしたかったし。
少し早いけど新年の贈り物ということで受け取ってもらおう。
フェルが素振りを終えて戻ってきた。
パジャマに着替えて布団の中に入ってくる。
フェルが一緒のテントで着替えをするのにももうすっかり慣れてきた。
というのは嘘です。毎回ドキドキしてます。すみません。
フェルの指先が冷たかったので握りしめて温めてあげる。
今日も仲良くくっついて眠った。
朝起きたらやっぱりフェルの腕の中だった。ちょっと悔しい。たまには僕だってフェルのこと抱きしめて眠りたい。
腹いせで、フェルの体を抱きしめる。僕だってこれくらいやってもいいはずだとか思っていたが、フェルが目を覚ましたのがわかったので慌てて体の力を抜く。
暖かくて良い匂いのするフェルの誘惑を振り切って、今日も外に出て準備を始める。
フェルは少し機嫌が悪い。昨日のことをまだ引きずっているのかな。
お弁当にフェルが好きそうな物を入れてみたらいいだろうか?それとも炒飯以外のおにぎりを工夫してみるべきか。
そう思ったけど新しい工夫が思いつかない。手に入る食材で思いつくものはほとんど作ってしまった。
新作のおにぎりと言っても何を作ったらいいのか。
お魚が使えないからなー、最近料理のレパートリーに悩むんだよなー。
最近は市場に走るついでに、今日のおにぎりの具を考えている。魔力循環を続けることにも少し慣れて来た。
毎日お弁当の献立を考えることにちょっと追い込まれてる気もするけど、お昼ご飯を楽しそうに食べるフェルの顔を想像するとやりがいを感じて、つい毎日張り切ってしまっていた。
オーク肉をケチャップであえて、オムレツを横に添える。少し手抜きかもしれないけど、塩茹でした根野菜を詰め込んでマヨネーズを塗った。
ミニトマトとか、欲しいな。春になったら探してみよう。
デザートも詰め込んで、お弁当は完成。1個は炒飯のおにぎりだけど、もう1個は塩鮭をほぐして砕いたナッツとあえた変わり種のおにぎりにしてみた。
今度これを焼きおにぎりにしても美味しいかもな。
今日のおにぎりは少し大きめにして2個。本当は3種類作ってあげたいけどもうレパートリーが尽きてきている。
先にギルドに向かうというフェルを見送って、後片付けを済ませたら、店に向かう。
お昼時はさすがに満席になったけど、今日はそこまで忙しくない。来てくれた顔見知りの冒険者達と会話する余裕もあった。
今日の賄いもオークカツだ。
スパイシーな塩ダレベースの工夫はさらに続いた。すりおろしたニンジンを入れたらしい。
「甘味がもっと欲しいんだよ。そして少しほろ苦いというか、ほんの少しだけどね」
ふと思いついてカラメルソースを作る。
りんごをすりおろしてカラメルソースとりんごを混ぜてみた。
……甘い。甘すぎ。
「いや、分量が多いだけさ。もっと少なめに入れれば」
ホランドさんがほんの少しだけそれを入れれば、お?なんかそれっぽい感じになってきた。
でも何か、一味足りないな。
ホランドさんも同じことを考えているようだった。顔を歪めて考え込んでいる。
「ホランドさん。そろそろ開店の準備をしないと」
ソースの開発は一旦後回しにして、夜からの分の仕込みを始めた。
夜は残った唐揚げとスープで賄いを食べる。夜もそこまでお客さんは入らなかった。
「いつもは大体こんなものよ。ケイ君が来てから特別忙しかっただけだから」
マリナさんはそう言って微笑む。
営業が終わって、ホランドさんの唐揚げを炊いた白米でいただく。
普段は忙しくてホランドさんが仕事をしている様子をちゃんとを見ることができなかったから、お願いして隣で唐揚げを揚げているところを見せてもらう。
そうしていたらフェルが帰ってきた。
「おかえり」と笑顔で迎えて、2人で手分けして店の掃除を始める。機嫌は治ったみたいだ。今日の依頼はどうだったのかな?あとで話を聞こう。
フェルは今週はセシル姉さんのパーティ、赤い風と一緒に依頼を受けるらしい。
オークの討伐依頼がこのところ増えているそうだ。
フェルの髪を乾かしている時もとんかつのソースのことを考えていた。
ウスターソースって何が入っていたっけ。リンゴは入っていた気がするけど。
「どうした?ケイ?考え事か?」
今日の赤い風と一緒に受けた依頼のことをあれこれ話していたフェルが、考え事をしていた僕を見てそう尋ねた。今日も正面を向いているので顔が近い。
「ホランドさんの新しい料理に使うソースのことを考えているんだよ。良いところまで来てるんだけど、何か足りなくって」
「ならばけちゃっぷはどうだ?私はあの味が好きだぞ?」
「それ、いいかもね。そうか、トマトか。まだ市場に売ってるかな?」
次の日市場に行くと値段は高いがトマトは市場に少しだけ並んでいた。
1個銅貨5枚。うわ。けっこう高いな。
仕方がないので2個だけ買って、前に行ったことがある乾物屋に行ってみる。
店の人に聞いてみたら乾燥させたトマトがあった。1袋大体5個分のトマトが入って銅貨8枚。1袋買った。
お昼休みにホランドさんと試してみる。
タマネギ、にんじん、リンゴをすりおろして、カラメルソースを溶かした少量のお湯でしばらく煮込む。トマトは生のトマトとドライトマトで分けて2種類のソースを作ってみる。
特製塩ダレとお酢、醤油も少し入れた。
ある程度沸騰して、アクを取ったら火からおろして冷ます。
その間にとんかつを作った。
マリナさんも呼んで昼食兼、試食会をする。出来上がったとんかつにソースをかけて食べてみる。
食べた瞬間ホランドさんと目を合わせた。
これ、美味しい。
少しコクが足りない気もするけど、味はかなりウスターソースに近いものができた。
「たぶん何日か寝かせたらもっと良くなるかもしれないね」
ホランドさんはそう言ってとんかつを食べる。店で使っている塩ダレも1週間くらい寝かせた物を使ってるそうだ。
「ケイくんがよかったら今度店が休みの時にこのソースを作りに来ないか?うちの塩ダレの作り方も教えてあげるから」
「良いんですか?ぜひお願いします!」
何にでも使えるあの万能の塩ダレの作り方を教えてもらえるなんて。
依頼は土曜日で終わるけど次の週の月曜日にソースを作りにくる約束をした。
「ケイくんにはだいぶお世話になったから、せめて何か返したいと思ってね。いつかケイくんが店を開く時にも、この塩ダレを使って良いから」
ホランドさんのありがたい申し出に、僕はただただお礼を言うことしかできなかった。
それから3日間、懸命になって働いた。
マリナさんの足もすっかり良くなって、最後の2日間は厨房にも入れてもらった。
唐揚げの揚げ方、油の切り方など、ホランドさんは丁寧に教えてくれた。
「すっかりケイくんに頼り切りになっちゃったよ。来週からは大変だ」
ホランドさんが最終日、依頼票にサインを書いてくれる。
「しっかり評価もしておいたから、次の仕事も大丈夫だと思うよ」
「ありがとうございます。僕もいろいろ勉強になりました」
これで依頼票をギルドに持って行き、報酬を受け取れば依頼完了だ。
「そうだ。月曜日の夜は開けといてもらえるかい?雇ってもらえるかはまだわからないけど知り合いのお店を紹介するよ。そこで夕食を食べよう。フェルちゃんも一緒で構わないよ」
楽しみにしていますと伝えて、フェルと2人で店を出た。
2週間楽しかったな。良い仕事だった。
「ミナミの仕事が終わってさみしいのか?」
髪を乾かされているフェルが心配そうな顔で僕の顔を覗き込み、そう聞いてくる。
「うん。やっぱりちょっとさみしいよね。ホランドさんも、奥さんのマリナさんも良い人だったし。いろいろ教えてもらったし」
「また良い仕事が見つかると良いな。まあ少しのんびりしても良いのではないか?あと1週間もすれば新年だ。新しい仕事は年が明けてから考えれば良い」
「そうだね。せっかくだから王都を観光するって言うのも良いかもね。僕たち全然王都を知らないし」
「観光か。ならばお弁当を作ってくれるか?どこか眺めの良いところでそれを食べるのだ。どこが良いだろうな?」
王都を観光しようと言ってみたものの、実際どこに行ったら良いものやら。
ギルドで誰かに聞いてみようかな。
明日は炊き出しの日だ。昼休みにゴードンさんのところで野菜をもらった時に、明日行ってホーンラビットを狩ることは伝えてある。精米器もプレゼントしたかったし。
少し早いけど新年の贈り物ということで受け取ってもらおう。
フェルが素振りを終えて戻ってきた。
パジャマに着替えて布団の中に入ってくる。
フェルが一緒のテントで着替えをするのにももうすっかり慣れてきた。
というのは嘘です。毎回ドキドキしてます。すみません。
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