お狐様の言うことを聞くだけのお仕事!

相馬かなで

文字の大きさ
1 / 5
第1葉

1

しおりを挟む

__私は、良い意味で素直。
悪い意味では、馬鹿正直。

人はそれを“空気が読めない”と言うのだ。

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

「あ~あ、やっちゃった。これで、もう無職。この先、どうしようかな...」

私、羽咲澪(はさきみお)25歳。
新卒で入社した子会社で事務員、いわゆるOLをしていたわけだが..、たった今“無職”になった。

事の発端は数分前の飲み会の席。

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

「それでは、羽咲。今日は我らが社長の誕生日のお祝いを込めて、社長にお酌をしてきてくれないか?」

と、小声で上司に促された私は派手に首を振った。

「嫌ですよ!私、そういうのは苦手なんです」

「何言ってるんだ!羽咲!お前は事務員で下っ端なんだ。社長への恩を込めてのお酌なんて当たり前だろう!!」

「嫌なものは嫌なんです!!!!」

あまりに私と上司が声を張り上げるものだから、お店中に声が響き渡る。
そこにいるみんなが私と上司を驚いた様に見つめる中、ふつふつと怒りを帯びた目で見る社長がちらりと見えた気がしたのだ。

なのに、私はさらに言葉を続ける。
一度出した言葉はもう戻らない。

「私はお酌という行為が嫌なんです。そんなに薦めるのなら、部長が社長にすればいいじゃないですか!」

その言葉に周りは凍りつく。
この職場は昔堅きで、下の者が上の者に酌をするのが当たり前の風習なのだ。
でもそれは、私には受け取れない風習だった。
____ただ、それだけ。

「もう、いい。お前は下がれ。もう、帰っていいぞ」

「分かりました」

もともと、こんな飲み会には参加したくなかった私にとってその言葉は好都合だった。

「お疲れ様でした、お先に失礼します」

そう言葉を発した私に、追い討ちをかける様に社長の低い声が背中越しに発せられた。

「羽咲と言ったか。もう、明日から来なくていいよ。今までご苦労」

___あ、終わった。
クビになったんだ。

「今までありがとうございました」

そう、言葉を絞り出してその店を後にした。
思い残すことは特になかった。
仲のいい人がいるわけでもなく、職場に私物を置くわけでもなく、
いつでも辞める準備はしていたのだ。

♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

「あ~終わった終わった!これで、綺麗さっぱり!死んだ様な3年間とおさらばだ!!」

強いて言うなら安い給料で貯めた、貯金100万円に感謝をする程度。
しばらくは次の仕事を探しながら過ごせるだろう。

「帰って呑み直そう」

とぼとぼと、でもしっかりとした足取りで歩く。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【NL】ハイスペ幼馴染がいきなり一線を越えて欲しいと言ってきたんだけど?

彩華
恋愛
「頼む……! 天音にしか、頼めないことなんだ……!」 そう頭を下げた男────武。 私の幼馴染で、将来は社長が約束されている所謂お金持ちのお坊ちゃま。 私との関係は、ただ家が近所で幼馴染だったってだけ。 その時。随分と困った様子で武が言った。 「俺と、一線を越えて欲しい……!」 「は?」 (ちょっと何言ってるか、分からないんだけど?) ******

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...