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プロローグ
はじまり。
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魔王を倒して暫くたった頃、私は見晴らしの良い高台に訪れていた。あの日以降も魔王の過去を探っているけどなかなか進展しない。
「本当に、平和になったんだなぁ」
魔王を倒せたことが未だに実感出来ないけど、現に魔物を殆ど見かけることがなくなった。前にここに来た時はゴブリンとかコボルトがこの辺りで狩りをしていた。
「でも…倒してよかったの……?」
1人で考える時間があると、魔王を倒さなくてもよかったかもしれないという考えが過ぎる事がよくある。魔王と和解して、手を取り合って生きていく世界があったかも、と思ったリして罪悪感に満ちる。
「…もしかして、私たちの考え方が良くないのかな…?」
魔物にも家族が居て、幸せに暮らしていたのに私たち人間がそれを潰す。人間が一方的に魔物は危険だ、と言い張っているだけであって魔物側からしたらそんな事はないかもしれない。
「…皆が相手を尊重して、争いなんてない世界に」
…無理だとはわかっているけど、それが実現したらいいな。
「…賢者様の所に行こうかな」
魔物を探しながら、私は向かうことにした。
―――
「すまないな、まだ何も掴めていない」
私が顔を見せた途端賢者様はそう言った。でも賢者様が苦戦するほどの情報があったとは思えなかった。
「だが、きな臭い国はある程度絞れた。まだ時間はかかるだろうが、わかり次第伝える。…ところで、お前、あれほど休めと言っただろう」
呆れながらそう言った。休息はしっかり取ったはずなのに。
「はぁ…まぁお前のことだから考え事でもしてたんだろう。ほら、言ってみろ」
…賢者様にはお見通しだ。自分でも気付かなかったのに。
「…いえ、大したことではないんです。ただ、魔王を倒した事が本当に良いことだったのか…」
「なら、実際に確かめてみたらいいじゃないか」
賢者様は言う。
「実際に各地を巡って、確認してそれから判断すればいい。別に急ぐ必要もないだろう」
いろんな国を巡って、感じとって、判断する。まさに賢者様らしい答えだ。
「ありがとうございます。折角なので巡ってみようと思います」
「ああ、お前の好きなようにすればいいさ。なんたって一度きりの人生だからな」
そうと決まれば早速準備をしないと。早くまとめて、明日にでも出発だ。
「賢者様!!行ってきます!!」
「行ってこい。帰ってきたら何を見てきたか教えろよ」
「はいッ!!」
これは私、クロノによる魔王がいなくなった世界を巡って本当に世界が平和に満ち溢れたのかを探る。
そんなちいさな物語である。
「本当に、平和になったんだなぁ」
魔王を倒せたことが未だに実感出来ないけど、現に魔物を殆ど見かけることがなくなった。前にここに来た時はゴブリンとかコボルトがこの辺りで狩りをしていた。
「でも…倒してよかったの……?」
1人で考える時間があると、魔王を倒さなくてもよかったかもしれないという考えが過ぎる事がよくある。魔王と和解して、手を取り合って生きていく世界があったかも、と思ったリして罪悪感に満ちる。
「…もしかして、私たちの考え方が良くないのかな…?」
魔物にも家族が居て、幸せに暮らしていたのに私たち人間がそれを潰す。人間が一方的に魔物は危険だ、と言い張っているだけであって魔物側からしたらそんな事はないかもしれない。
「…皆が相手を尊重して、争いなんてない世界に」
…無理だとはわかっているけど、それが実現したらいいな。
「…賢者様の所に行こうかな」
魔物を探しながら、私は向かうことにした。
―――
「すまないな、まだ何も掴めていない」
私が顔を見せた途端賢者様はそう言った。でも賢者様が苦戦するほどの情報があったとは思えなかった。
「だが、きな臭い国はある程度絞れた。まだ時間はかかるだろうが、わかり次第伝える。…ところで、お前、あれほど休めと言っただろう」
呆れながらそう言った。休息はしっかり取ったはずなのに。
「はぁ…まぁお前のことだから考え事でもしてたんだろう。ほら、言ってみろ」
…賢者様にはお見通しだ。自分でも気付かなかったのに。
「…いえ、大したことではないんです。ただ、魔王を倒した事が本当に良いことだったのか…」
「なら、実際に確かめてみたらいいじゃないか」
賢者様は言う。
「実際に各地を巡って、確認してそれから判断すればいい。別に急ぐ必要もないだろう」
いろんな国を巡って、感じとって、判断する。まさに賢者様らしい答えだ。
「ありがとうございます。折角なので巡ってみようと思います」
「ああ、お前の好きなようにすればいいさ。なんたって一度きりの人生だからな」
そうと決まれば早速準備をしないと。早くまとめて、明日にでも出発だ。
「賢者様!!行ってきます!!」
「行ってこい。帰ってきたら何を見てきたか教えろよ」
「はいッ!!」
これは私、クロノによる魔王がいなくなった世界を巡って本当に世界が平和に満ち溢れたのかを探る。
そんなちいさな物語である。
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