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第二十四話 「柳生但馬守心法は沢庵が弟子たる事」
しおりを挟む根岸鎮衛著「耳嚢」 巻之一
「柳生但馬守心法は沢庵が弟子たる事」より
将軍家の兵法指南役で「柳生新陰流」として天下に知られる、柳生但馬守の稽古所の門前に、托鉢僧が立ち止まり、稽古の音を聞いていた。
「腕前はそこそこには聞こえるが、将軍家兵法指南などとはおこがましいな・・・」
そう言って嘲り笑ったのを門番が聞きつけ咎めたが、一向に取り合わないので、主人の柳生但馬守に直接告げに行ったところ、
「その僧をお呼びしなさい」
・・・・との仰せだった。
その暴言を吐いた僧を座敷に通して但馬守が対面する。
「貴方はご出家でございますが、剣術の心得がおありのように拝見いたします、何流をお学びですか?」
僧が答える。
「おまえさんは天下の将軍家御師範とかいう事だが、剣術は下手クソですな・・・・流儀などというものは剣術の極意ではござらんよ、剣術を学ぶのに何故に「流儀」などというものが必要ですかな」
但馬守も確かにその通りだと思った。
「それでは、わたくしと一つ立ち会いをお願いいたします・・・」
「・・・・・よかろう」
二人は稽古場に場所を移す。
但馬守は木刀を持ち、対面する僧に聞く、
「ご僧は、何をお持ちになります?」
「いやぁ、拙僧は出家なので武器など持たんよ、早くどこからでも打ってきなされ」
これには、さすがの但馬守も少しムッとして、「いざ!」と言って打ちかかろうとしたが、目の前の僧は平然としている。
このまま打ち掛かれば、逆にあっというまにねじ伏せられそうな・・そんな予感がして、但馬守は体が硬直したように動けない・・・。
さすがに将軍家武術指南の但馬守、静かに木刀を置き、その場で僧に礼拝をする・・・。
「・・・まことに貴方様は智職道徳の人でございます・・・どうか私に心の修行の仕方を御指導ください・・・・」
そう心から願い出ると、その僧も、
「剣術については、お前さんに続くものはおらんようじゃな・・・・」
そう言って褒め、互いにその極意を伝授し合ったという。
その僧の事は、後日、但馬守よりお上に申し上げ、将軍家光公ともお会いした。
・・・・その僧とは、東海寺を開山した、沢庵和尚である。
・・・これは面白い話だと思いましたが、調べてみたらけっこう有名な逸話らしいです。
当然ながら、将軍家剣術指南、天下の柳生但馬守ですから、普通に試合をすれば沢庵和尚などすぐに打ち負かせるはずなのですが、武道は「心・技・体」というように、「心」の修行が肝要。
「技」で天下を極めた但馬守は、そのことをよく理解していて、沢庵和尚に自分に欠けている部分、すなわち「心の修行」を申し出た・・・ということですね。
沢庵和尚という人自身、「沢庵漬」等々、色んな逸話のある名僧ですが、単に「徳がある」というだけではなく、相当に反骨精神があるというかパンキッシュ(笑)な方のようですね。
・・・時代はまったく違いますが、あの「一休さん」のようなタイプの人だったのかもしれません。
それしてにも、剣道等でもそうですが、武道を「極めた」人には、強烈なオーラというか気迫が漲っていて、また隙が無さ過ぎて、対戦すると体も動かず手も出せない・・・・という「伝説」をよく聞きますが、この話などはまんまソレですね(笑)
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